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smashing! おれののぞみのよろこびよ・後


「設楽言ってた。伊達さんと…って。付き合うとかじゃないけど、とも」

伊達は黙ったまま、佐久間を見上げた。

「伊達さんはハルさんと…その…」
「…そうハルちゃん!俺はハルちゃんとエンゲージ交換したのうううう!聞く?聞く?佐久間ぁ!ハルちゃんてホントにさ…」
「…なのに、なんで設楽と」

いつもは不器用で、言いたい言葉も飲み込む佐久間の真摯なその目に浮かぶのは、怒りではない、蔑みでもない。ただそれは「何故」と伊達に問う。伊達は少し真面目に、それでも優しげな顔で、上に乗っかる佐久間を抱えたままゆっくりと起き上がった。

「おいしょっ、と……あんね、俺、設楽のこと大好きなんよ?もちろんお前らのことも」
「でも…」
「佐久間さ、俺がどっちも出来る側なんは知ってるね?」
「…うん」
「俺はね、気持ちいの大好き。俺のこと抱いて気持ち良くなってもらうのが。でもね、抱きたいな思うのは…」
「それがハルさん、なんだ?」

そ、物わかり良い子大好き。伊達は間近にある佐久間の頤を、少し尖らせたその唇を、啄むキスで辿っていく。触れ合わせるだけのそれが、段々と熱く深くなり、伊達の手が佐久間と重なり合う部分を緩く握り込めば、佐久間は無意識に伊達に縋り付く。離れかけた感触を追う唇に軽く触れ、伊達は佐久間を柔らかく抱き締めた。

「俺はちゃんと考えて、お前らにこうしてんの」
「…ほんでもやっぱり伊達さんの頭ん中、わからんわ」
「んなんでぇ?」
「俺は気がまわらんもんで、千弦一人でいっぱいいっぱいや」
「…そういうとこがお前は可愛いんよ」

…うーんやっぱ酒入ってると勃たんね。伊達は微かに揺らしていた腰を止めた。すると佐久間は伊達の身体を力任せに押し倒し、再び上に乗り上げる。んなんでえええ!伊達を押さえ込みながら一升瓶を手元に抱え込む。

「わからんけど、そんなあんたは、俺も嫌いじゃない」

佐久間の苦笑いと共に呟かれたそれは、いつもの設楽の声と重なって、伊達の心の深く柔らかな所に、淡く溶けては沈んでいった。

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残った花火を堪能し、後片付けを終えた4人が家の中に戻ってみると、佐久間が伊達に乗っかったまま手酌で酒をあおっている。なんだろ鬼丸すごい楽しそうなんだけど。

「あ、卓と優羽お疲れー!ハルさんドッキリ成功した?」
「すっごい花火綺麗だったよ!って鬼丸…どしたのそれ…」
「伊達さんと色々話してたらさ途中でこんな…」

喜多村が恐る恐る伊達の様子を伺う。雅宗先輩?…うわ目開いてるし。のそのそと佐久間の下から這い出た伊達は目の前に立つ喜多村の足首を掴み、あることないことあいつにタレ込むの勘弁して…。それだけ呟くと軽く落ちた。振り。何があったかは定かでないが、きっと日頃の行いの集大成の逆転ビッグウェーブでも食らったんじゃないかな。ヘドバンで頷く面々。

「お腹すいた…あ、鬼丸それ俺らも呑む!」
「卓くん今から僕が美味しいの作りますから、一緒にどうですか?」
「あ、ハルさん手伝いますよ。いこ卓!」

キャッキャウフフと楽しそうに台所に向かっていった3人。一方、幸せそうに一升瓶を転がす佐久間と、屍状態を決め込む伊達。なんとなく察してはいるけれど佐久間の奇行から目を離せないでいる喜多村。

千弦遅かったじゃん俺もう2本目開くんだけど。ウソだろ俺のヒョロヒョロ丸は2升開けてなんで全然変わんないの?バカなの?ねえ雅宗先輩どう思う?焦る喜多村。少し浮かれて見える佐久間。喜多村と目を合わせようとしない伊達。また鬼丸になんかしただろこのかぶき者。
なんか居たたまれずテレビなんか付けたりして。うっわそんな時に限ってなんでNTR系ドラマの特番やってたりすんだおい。不穏怖いやめて。

「出来たよーー!!」
「お待たせしました…あ、伊達さんよかった復活しましたね!」

追加の肴を運んできたのはちっちゃいものクラブ2人とエプロン姿の雲母。誰の趣味か的な白割烹着。いつのまにか起き上がっていた伊達は、雲母の割烹着に鼻の下を伸ばしている。このエプロン、デザインもシンプルで素晴らしく機能的なんですよ。似合ってるけどハルちゃんこの辺の人みたいになってるな。頭身はありえないけど。

「今度は中華ぽく…皆さんのお口に合うといいんですが」

大皿にきっっっっっちりと並べられた、大っ量の春巻。春巻すげえ美味しそう。でもなんでそんな企んでる感が…?

「ンフフ…この中には卓くん達の手伝ってくれた激辛や激甘味が混ざっています。つまりはロシアンルーレット春巻」
「俺らすごい神調合したよ、ね、優羽♡」
「中身が見えないように頑張りました。ささ、どうぞ熱いうちに」
「……………ぐぅ(も寝ちゃえ…)」
「…ンフ、伊達さんも、ですよ?♡」
「…ハ…ヒィ…」

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結果、激辛激甘のアタリをほぼ全て伊達が引くという。引き強いな。こういうのなんか全部俺んとこくるんよね…。辛い甘いもうわけわかんね。伊達は雲母の膝の上で安らかに(?)横たわっていた。追加される日本酒は既に3升目を越え、ザル結城は大人しく相槌を打つ佐久間の隣で絡み始めていた。喜多村と小越は逆に静かに、流れていたドラマ特番を真剣に見入っていた。どうやらこの二人、感情移入するタイプな。

「…ハルちゃん、佐久間たちのパジャマさ、あれにしてやろうぜ?」
「え、それは楽しそうですけど…鬼丸くんが無事では…」
「ウヒ…ちょっとはリベンジしてやんないとねー」

カオス化が見られる宴の最中、こっそり各部屋に全員の布団やなんかを支度する雲母。佐久間と喜多村にと用意した客用布団の上には、伊達お気に入りのあのスッッッッケスケの、白いステテコ2組がそっと置かれたのだった。




前編コチラ♡↓

https://note.com/kikiru/n/n9219133233c3


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