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【児童文学】リコとルイーザ

 二年一組に、ブラジルから てんこう生が やってきました。
 長い 黒かみに カチューシャをして、目が ぱっちりした 女の子です。名前は、ルイーザと いいました。
 クラスの みんなは、ルイーザのことを チラチラ 見たり、友だちと ひそひそ 話したりしています。外国から 来た てんこう生は はじめてだったし、ルイーザは ことばも よく わからなかったので、だれも どうしたらいいか わからないのです。
 となりの せきになった リコも、ルイーザに 話しかけることが できませんでした。
(先生が なかよくして くださいねって、いってたのに……)
 そう思いながら よこを むくと、ルイーザが とつぜん 早口で 話しかけてきました。
「〇▼※△☆◎▲」
 リコは びっくりしました。なにを いっているのか わかりません。
「えっと……えっと……」
「※◎★▽※●〇」
 あせるばかりの リコに、ルイーザが なにか いっしょうけんめい いっています。
 リコが こまっていると、ひょうきん者の シンが やって来て、ルイーザに 話しかけました。
「ペラペラ ペラペーラ」
 ルイーザが くびを かしげて、りょうほうの 手のひらを 上にむけました。
 シンも ルイーザと おなじポーズを しています。
「シン、『ペラペラ』って いっても、わかるわけ ないでしょ」
 リコは、おかしくて 思わず わらってしまいました。
「だって、ルイーザが なにか いってるじゃないか。知らん顔 できないだろ」
「うん、そうだね。ありがとう、シン」
 リコが ルイーザを 見て ニコッとすると、ルイーザも ニッコリ わらってくれました。
「☆◎▲〇▼※△」
 ルイーザは、なにか いいながら、教室の外を ゆびさしました。それを 見た シンが、大きく 手を ひろげたり、歩くまねを しています。
(ふたりは、話が つうじて いるのかな?)
 リコは、シンって すごいなって 思いました。
 とつぜん シンが、リコの つくえに バンッと 手を つきました。
「おい、リコ。ルイーザは、どこかに 行きたい みたいだぞ」
「シン、わかるの?」
「そんな気がする」
「なんだ」
 だけど、シンの いうことは、あたっているような 気がします。
「ルイーザ、どこかに 行きたいの?」
 リコは ゆっくり 話しながら、ルイーザの 目を 見て、二本の ゆびを 歩くように うごかしました。
「ハイ、イク」
「ほら、やっぱりそうだ」
 シンが、とくいそうに いいました。
「きゅうしょく室かな?」
 シンは、ぎゅうにゅうを のむ まねを しています。
「それとも、しょくいん室?」
 こんどは、先生が めがねを くいッと あげるまねです。
 ルイーザが、目を まるくして シンを 見ています。
「シン、そんなんじゃ わからないよ」
「そうかなあ」
 シンは、もういちど、先生が めがねを あげる まねを しました。
「そうだ!」
 リコは、つくえの 上に ノートを ひろげ、えんぴつで めがねを かけた 先生の顔を かきました。
「にてる にてる。リコって 絵が じょうずだな」
 シンは ほめてくれたけど、ルイーザは 顔を よこに ふりました。
「そっか、先生の ところじゃ ないのね」
「やっぱり きゅうしょく室 じゃないか?」
 シンが、ごはんを たべる まねを しましたが、やっぱり ルイーザは、顔を よこに ふりました。
「うーん、どこかなあ」
 リコは、あれこれ 考えました。ルイーザは とても いそいで いるようです。
「あ、もしかして」
 リコは、ノートに トイレの マークを かきました。ルイーザは、なんの絵か よくわからない みたいです。
 リコが あきらめずに、ササッと べんきの 絵を かくと、ルイーザの 顔が、パッと 明るく なりました。
「ハイ!」
「なんだ、トイレかあ」
 シンは、あてられなかったのが ざんねんそうです。
「リコ、アリガト」
 ルイーザが、そういって リコに ハグを しました。
「リコって、おぼえて くれたんだね」
 リコは、うれしくなって そのまま ピョンピョン とびはねました。
「早く いかないと もれちゃうぞ」
 シンが、早く早くと 手まねきを しています。
「シン、アリガト」
 ルイーザが、シンに ウインクを すると、シンは、うれしそうに あたまを ポリポリ かきました。
 それから リコは、ルイーザと 手を つないで、トイレまで いそぎました。
 リコは、じぶんの 国の ことばを 教えあって、ルイーザと たくさん 話がしたいな と思いました。

(原稿用紙換算7枚)

小学生低学年のキャリア教育向けに書いたものです。

キャリア教育のテーマ
「友だちと仲良くし助け合う」
「自分で考えて行動する」

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