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【展覧会】語りの複数性


各作品には何らかの空白があり、受け取る人が想像せざるを得ない部分がある。
どのように想うことができるのか、複数の語りが共存する場として企画されている。

語りは、語り手の身体と記憶や経験が結びついて生み出され、受け取る人がその存在や意味を捉えてはじめて現れる。

訪れた人が、強い自分、弱い自分、たまに顔を出す自分など、複数の自己の声に耳を澄ませ、自分とは違う感覚や経験を持つ他者と、その複雑な内面世界を共有しようとする試みを紹介する。

(参考:企画担当者テキスト)


以下、少し紹介する。

大森克己 《心眼 柳家権太楼》
落語家の体のみに焦点が当てられた一連の写真を見ることによって、見る人の想像力に委ねる落語。


川内倫子《無題》(シリーズ「はじまりのひ」より)
写真絵本としてまとめたものを、視覚に障害のある人も触って感じられる触図を加え再構成している。


小島美羽 《遺品の多い部屋》
遺品の整理や特殊清掃の仕事につく小島美羽は、孤独死は誰にでも起こりうるということを伝える必要性を感じ、ある時ミニチュアで伝える方法を思い立った。


小林紗織 《私の中の音の眺め》
スコアードローイングという手法で、音を聴いた時に浮かぶ情景、色彩や形を五線譜の上に記録している。




今やネットを使わない日はない。
便利なものは使う。そこにはワクワクもあるし、それで助かることもある。
考えることもあるし、創造するものもある。
ただ、スパンが早く次々に移り行き、気が抜けない。いわば上層部に位置している。

深層部に位置する創造性は、ゆっくりと時間が流れ、上層部に身を置いている時間が長いと潜り込む事が難しくなる。
が、立ち止まって耳を澄ますことができれば、揺るぎない立ち位置が見えてくる。

語りの複数性は、深層部に身を置ける展覧会だった。
展示スペースはさほど広くないが、時間はたっぷり掛かる。


東京都渋谷公園通りギャラリーで、

2021年10月9日〜12月26日まで開催中。

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