『学習する組織』をレゴ®︎シリアスプレイ®︎メソッドの文脈で読む(19)第Ⅳ部 第14章「戦略」の導入部分 p407~

 取り組みの実践例をもとに書かれる第Ⅳ部の本章では、「学習する組織」を導入する「戦略」について言及されている。

 センゲは、ここで「戦略」を「戦略の構造」と「深い学習サイクル」の2つに大別する。

「戦略の構造」と「深い学習サイクル」

 まず、「戦略の構造」は、学習する文化を創り上げるためにどこに集中すべきかを示している。3つの要素からなる三角形をイメージしている。

 ここでいう3つの要素とは
 ・基本理念:組織の存在意義、価値観、ビジョンなど
 ・理論・ツール・技法:システム図やシミュレーションモデルなど
 ・組織インフラのイノベーション:公式的な役割やマネジメントの仕組み
 
である。

 この3つの要素を、学習する文化が実現するように創り上げていくのだが、それを構築していくために必要な活動が「深い学習サイクル」とされている。このサイクルは5つの要素から構成されている。

 5つの要素は
 ・信念と前提
 ・慣行
 ・スキルと能力
 ・関係のネットワーク
 ・気づきと感性

 である。これらは基本的に、上の要素が下の要素をある程度、規定するように影響を及ぼしている。そして、最後の「気づきと感性」は「信念と前提」に影響を与えていく。
 これらは相互につながっているので、どこかを変えることでゆっくりとであっても間違いなく変化する。

 この相当、気を付けないと見えてこない「深い学習サイクル」へと影響を与えるのが、最初に示した「戦略の構造」である。
 したがって、「戦略の構造」に集中して変わるように働きかけることこそが「深い学習サイクル」を生み出し、結果として学習する文化を生み出すのである。

 もちろん、「戦略の構造」に手を入れたからといって、必ずしもうまく行くわけではない。
 「戦略の構造」への手入れが「深い学習サイクル」にどのような影響を及ぼしているのか、組織的な行動を起こした後に結果を評価しながら手の入れ方の修正や次の取り組みを考えながら進めることが必要となる。

レゴ🄬シリアスプレイ🄬メソッドがしていること

 学習する文化をつくるための「戦略」の議論に沿って、レゴ🄬シリアスプレイ🄬メソッドを組織に導入するということの意味を考えてみる。

 まずは、「基本理念」をつくるための支援として、このメソッドを使うことができる。組織の「ビジョン」や「存在意義」を定めるためのワークショップを行う。
 そのワークショップで参加者同士で交わされる会話はゆっくりと「深い学習サイクル」を回すことになるだろう。

 このとき、ファシリテーターとしては参加者の「信念や前提」がどれほどむき出しになり、それが入れ替えられ、「慣行」の変化が起きそうなのか見極めなければならない。
 ワークショップで振り返りの時間をとり、この点についてスポットライトを当てることも一つの手段である。それが難しければ、終了後のアンケートなどでフォローすることも良いだろう。

 もう一つの考え方は「技法」の一つとして、レゴ🄬シリアスプレイ🄬メソッドを入れるということである。

 レゴ🄬シリアスプレイ🄬メソッドには、「100-100」の考え方や、知識のコンストラクショニズム、フロー理論などが入っている。応用技術の中には「共通ではなく共有である」という考え方や、不確実性に対する「シンプルな行動原則」の考え方、そして「システム」として考えや世界を見るという要素も入っている。

 これらの思考をワークを通じて教えるとともに、普段からブロックで自分の知識を整理したり、他者と共有するという行為ができるように就業環境を作っていくという方向である。

 全員がファシリテーターであるレゴ🄬シリアスプレイ🄬のコミュニティや勉強会では、レゴ🄬シリアスプレイ🄬メソッドの考え方や実践が行われており、かなり強力な「学習する文化」ができていると感じる。

 これを企業などに組み込むことを考えることは非常に面白いが、実際に戦略的にこの「技法」を入れ込むには、それを導入するファシリテーターが、このレゴ🄬シリアスプレイ🄬メソッドについて深く理解していなければならない。

 そのために「レゴ🄬シリアスプレイ🄬メソッドを使って考えることについて考える」ことが必須になると言えるだろう。

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