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『実践アクションリサーチ』をレゴ🄬シリアスプレイ🄬メソッドの文脈で読む(2)第1章 アクションリサーチ入門 p.2~

 このNoteで扱う『実践アクションリサーチ』の第1章では、アクションリサーチの全体像が紹介されている。全体像を描くために主に次の4つのことが扱われている。これからの概観を見てから、レゴ🄬シリアスプレイ🄬メソッドのとの関連について考えてみたい。
・アクションリサーチの特徴
・「〇人称研究」という切り口
・アクションリサーチ・サイクル
・アクションリサーチにおけるメタ学習

アクションリサーチの特徴

アクションリサーチの特徴として以下のものがある。これはアクションリサーチの定義と同じものとしてみなしてよい。

・アクションについての(about)研究ではなく、アクションの中での(in)研究である。
・協働的で民主的なパートナーシップのもとで進む研究である。
・一連のステップからなる出来事であり、問題解決を目指しながら行われる研究である。

 アクションを外から見るのではなく、当事者の一人として関わることで「中での」研究になる。「関わり方」としては、研究者が他の人を従わせるのではなく、何をどうするか協働的で民主的な関係のもと意見を聞きながら進める。そして問題解決を目指しながら繰り返し計画してアクションし、そこから知識を得たり学ぶということである。

「〇人称研究」という切り口

 アクションリサーチは良い研究を目指す中で生まれてきたものである。それを考えるための切り口として「一人称研究」、「二人称研究」、「三人称研究」という概念が紹介されている。

一人称研究:個人が自力で行い探究する形式である。研究者は自分の掲げるテーマの価値や意義を考えたり、自分自身の行為に注意を向ける。

二人称研究:他の人との対話、協働を通じてお互いに関心のあることを引き出し探究する。他者と取り組む能力に焦点が当たる。

三人称研究:探究の共同体を創造し、二人称を超えて巻き込みながら探究する形式である。報告や出版などをする。

 アクションリサーチは、二人称研究を中心としながら、3つの統合的な立場に立つものである。この3つの立場を意識しながら、データを集めたり分析をしていかねばならない。

アクションリサーチ・サイクル

 アクションリサーチは1つの準備ステップと、その後は4つのメインステップを繰り返すサイクルになっている。

<準備ステップ>
(0)コンテクストと目的
 そもそも、この活動はどのような理由で立ち上がり、どのようなことが期待されているのか、既存の組織の中で活動が行われるならば組織の内外から活動がどのような影響を受けそうか、活動が目指す望ましい未来はどのようなものか、などを明らかにしておく。特に望ましい未来の状態を定義することは重要である。また、活動に参加する人々の間に協力的で民主的な関係性を構築しておくこともこのステップで重要となる。

<メインステップ>
(1)課題構築
 何が課題であるのかを定める。研究者が一方的に決めるのではなく協働的な対話の中で決めていく。

(2)アクション計画
 課題に合わせてどのような活動を行うのかを決める。準備ステップでのコンテクストや目的との食い違いが生じないようにする。

(3)アクション実行
 計画に沿って協力して活動を行う。

(4)アクション評価
 ステップの(1)~(3)について適切だったか、その結果から次の(1)~(3)に向けてどのような示唆があるのかを考える。

より大きく複雑な活動になると、このアクションリサーチ・サイクルは、複数かつ同時に回っていくことになる。1周回るのに1年近く回るものもあれば、数時間で1周回るものもある。それらの相互の影響も視野にいれつつサイクルを回していくことが望ましい。

アクションリサーチにおけるメタ学習

 それぞれの活動における課題構築から計画、アクション、そしてその見直しというステップからなるサイクルを回すことを学ぶことの他に、それらに対するメタ学習というレベルが存在する。
 つまり、個別の事例に基づきながらも、他の活動を行うときに役立ちそうな知識を探究するというレベルである。特に、課題の内容からの知識プロセスの進め方についての知識思考行動の前提についての気づきと知識を探究するのが有効である。

レゴ🄬シリアスプレイ🄬メソッドとの関連

アクションリサーチにおけるレゴ🄬シリアスプレイ🄬メソッドを使ったワークの使いどころ

 メソッドを使ったワークの導入という点に関しては、アクションリサーチの「準備ステップ」に特に貢献できそうだ。
 なぜなら、活動によって何を目指していくのか、望ましい未来はどういうものかという問いに関しては、イメージが重要で、そのイメージは同じ言葉であっても人によってバラバラであるからだ。そのため、そのイメージのすり合わせにレゴ🄬シリアスプレイ🄬メソッドのブロックを使った表現は向いている。
 また同じような理由でメインステップの「課題構築」にも向いている。

 一報、レゴ🄬シリアスプレイ🄬メソッドのモデルでの表現は、抽象的なイメージを伝えるのに強みがあるけれども、具体的な計画や行動の表現はそれほど得意ではない(モデルで作ることはできるが、その場合には気持ちを込めて高ぶらせる効果が強そうだ)。そのため、「アクション計画」についてはあまり向いていない。

問いを出すのは誰でどうすべきか

 考えさせられた点のは、アクションリサーチをレゴ🄬シリアスプレイ🄬メソッドで行うことを考えた場合のファシリテーターのかかわり方である。

 本書に沿えば、扱うべき問いについては、活動の一員である研究者は他の参加者と協働的かつ民主的に決めていくべきであるということになる。ワークショップも活動の一部であるので、そのテーマや探究する問いもファシリテーターや一部の人が決めるのではなく、できるだけ全員で決めていくべきということになる。

 これに答えるとすれば、ファシリテーターも参加者としてモデルを作って参加すべきだということ、また「準備ステップ」では「何を私たちは課題とすべきか」というできるだけ漠然とした問いからはじめ、そこから出てきた意見(モデル)をもとに、その後のワークの問いを出すという流れを作るということだろう。

人びとの協力関係の発展を記録するという課題

 アクションリサーチが「二人称研究」を中心としているという話を考えたとき、アクションリサーチを行う活動にレゴ🄬シリアスプレイ🄬メソッドを入れていく場合には、人々がどう協力関係やその構築能力を高めたかという視点でのデータとその検証が重要になってくる。
 レゴ🄬シリアスプレイ🄬メソッドが、モデルとストーリーへの相互の共感を通じて、人々の関係性を良くしていくことはおおよそわかっていることではあるが、より質的な部分での改善を把握するための工夫が今後も必要であるといえよう。

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