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THE GAZETTEを読む(5) 2013年4月号 ZIG ZAGは、より大きな創造性への道

 本記事は、ラスムセン・コンサルティングが発行しているメールマガジンTHE GAZETTEのバックナンバーを、日本語訳をしながら、コメントを加えながら読んでいくシリーズの一つである。レゴ®︎シリアスプレイ®︎のファシリテーター・トレーニング修了者向けに書いている。
 この記事の引用元原文はこちらのPDFから読むことができる。

今号の記事は創造性についてである。

創造性の専門家であるキース・ソーヤーによる『Group Genius: The Creative Process of Collaboration』(邦訳題『凡才の集団は孤高の天才に勝る―「グループ・ジーニアス」が生み出すものすごいアイデア』)は、LSPコミュニティで長年にわたり尊敬されてきた本です。ソーヤーが新著『Zig Zag - The Surprising Path to Greater Creativity』(邦訳題『ジグザグに考えよう ~創造性を高める8つのステップ』)を完成したことを知り、私たちはとても興奮しました。THE GAZETTEの独占インタビューで、キース・ソーヤーは、最新刊で紹介されている8つの創造性のステップのうち少なくとも2つは、特にLSPコミュニティに響くものであると述べています。

THE GAZETTE 2013年4月号をDeepLで翻訳・筆者が修正。

 キース・ソーヤー氏の『Group Genius』(邦訳題『凡才の集団は孤高の天才に勝る』)ではチームの創造性に焦点をあてて書かれている。特に「創造性を発揮するチームの7つの特徴」と、「チーム全体でフローに入っていくための10の条件」については、レゴ®︎シリアスプレイ®︎のファシリテーターも心に留めておくべきものである。前者はワークショップ全体の設計や提案に、後者はファシリテーション実践に関わってくる。

 今回のメインは、そのキース・ソーヤー氏の新刊『Zig Zag』(邦訳題『ジグザグに考えよう』)である。こちらはこの邦訳がこの記事執筆の3日後に販売となる(!)。

 そして、文章中には、ロバート・ラスムセン氏(GAZETTEの執筆者)が直接キース・ソーヤー氏にインタビューしたとあり、二人の間にかねてから親交があることが窺える。

 この2つのステップのうち、「PLAY(遊ぶ)」「MAKE(作る)」を強調したのは、自分のアイデアを早い段階で頻繁に具体化することが、創造的プロセスに大きく貢献するという、よく知られた研究結果に基づいているからです。
 「THINK(考える)」はキースが第3に強調したステップです。レゴブロックを使って模型や物語を作ることで、思考プロセスが活性化されることは、誰もが経験していることです。キースは、この探索的なプロセスを表す「thinkering」という新しい言葉を私たちに紹介してくれました。

THE GAZETTE 2013年4月号をDeepLで翻訳・筆者が修正。

 キースに言わせれば、私たちはレゴ®︎シリアスプレイ®︎において「PLAY」と「MAKE」と「THINK」を同時におこなっているというわけである。そしてこの3つが組み合わさったものを「thinkering」と呼んではどうかと提案している。この言葉は訳が難しいが、「手を動かして考える」という感じだろうか。
 Web検索で探し当てた以下のページによると「thinkering」は、Michael Ondaatjeの小説『The English Patient』(邦訳題『イギリス人の患者』)の中で登場した造語ということである。

クリエイティブの "筋肉 "を鍛える

 クリエイティビティに関する書籍は数多くあります。しかし、科学的な研究に基づいているものはほとんどありません。ZIG ZAGは、科学的研究に基づいた、楽しくて読みやすい、私たち全員のための創造性の源です。多くの専門家は、創造性を直線的な道として説明しています。キースは、心、そして創造的プロセスが、ジグザグに、そして8つのステップの間を飛び越えながら、実際にどのように機能しているかを明らかにします。
 ZAG ZAGには100以上のエクササイズが収録されており、一部は古典的なもの、多くは新しいもので、尊敬されている創造性研究から着想を得ており、私たちの創造的な「筋肉」を増強するのに役立ちます。心理学、教育学、神経科学における最新の研究が、各エクササイズグループの土台となり、枠を作っていますが、研究の要約をすることが、実践的なセクションに何もさせないようにしているわけではありません。各グループの演習は、創造的な筋肉の特定の側面を刺激するように設計されており、演習は、相互に依存する8つの非直線的なステップを中心に構成されています。
 キース・ソーヤーがこの本を書くきっかけとなったのは、創造性について書かれたものの多くが、ミューズや潜在意識に起因するロマンチックなものであったからです。

THE GAZETTE 2013年4月号をDeepLで翻訳・筆者が修正。

 「100以上のエクササイズ」と「創造性発揮のための8つのステップ」との対応関係をしっかりと理解すれば、レゴ®︎シリアスプレイ®︎メソッドを活用したワークショップにおいて、より創造性を刺激するような仕掛けやワークを展開できるようにつながるに違いない。ファシリテーターとして、この関係性はぜひ押さえておきたいところである。
 また、最後の一文にでてくる「ミューズ」は「女神」という意味だが、女神に愛されているすなわち「天賦の才能がある」という意味合いだろう。そのようなある意味でのブラックボックス化をキース・ソーヤー氏が嫌っていることは前著の『Group Genius』(邦訳題『凡才の集団は孤高の天才に勝る』)でも明確に表れている。
 同様のメッセージは、この記事の横のコラムに彼のZIG ZAGの本とともに、次のメッセージが添えられていることからも窺える。

「集中し、練習することで、自分ではクリエイティブだと思っていない多くの人が、クリエイティブな洞察力を身につけ始めることができるのです。」

THE GAZETTE 2013年4月号をDeepLで翻訳・筆者が修正。

キースの8つのZIG ZAG

最後に「創造性発揮のための8つのステップ」が紹介されている。

ASK (問う)- 適切な質問をすること、またはそのフレーミングがプロセスの中心である。
LEARN(学ぶ) - 興味のある分野の知識を身につける。
LOOK(見る) - 今を大切に、マインドフルに。創造性はマインドフルネスで高まる。
PLAY(遊ぶ) - アイデアを孵化させるという苦行から解放された時間を取る。
THINK(考える) - 新しいアイデアを生み出すための時間を常に確保する。十分なアイデアがあれば、成功するものもあるだろう。
FUSE(合わせる) - 離れている、または発散しているアイデアを新しい方法で結合する。
CHOOSE(絞る) - すべてのアイデアを追求することは不可能であり、編集、修正、改良に集中する。
MAKE (作る)- 研究は、早い段階で頻繁にアイデアを外部化することが、ジグザグの道に貢献することを証明する。

THE GAZETTE 2013年4月号をDeepLで翻訳・筆者が修正。

 これらのいずれかをステップとして繰り返しながら、新しいものを生み出すことになる。このリストを見ると、キース・ソーヤー氏が指摘するように、「PLAY」、「MAKE」、「THINK」がレゴ®︎シリアスプレイ®︎と深く関わっていると指摘するのも頷ける。ただその部分は、モデルを作るという部分のみにフォーカスが当たった指摘である。「問いを得る」「作る」「共有する」「内省する」というコア・プロセス全体に目を向ければ、「ASK」もレゴ®︎シリアスプレイ®︎メソッドに関わることにはトレーニングを修了したファシリテーターはすぐに気づくだろう。また「FUSE」や「CHOOSE」も応用テクニック(AT)などを使えば、流れのなかに取り込むことができる。

 そして、残るのが「LEARN」と「LOOK」である。「LOOK」はワークの中で作られたモデルやそこからへの語りにマインドフルになる(ファシリテーターも参加者も)という文脈で理解することもできるが、より大切なこととしては、現場に出て行って感じたり、顧客の話をバイアスなく聞くというということであろう。そう考えると「LEARN」と「LOOK」を通じてわれわれが理解しておかねばならないのは、インプットの質が創造性に大きな影響を与えるということである。

 このインプットに関する事項は、レゴ®︎シリアスプレイ®︎のコアプロセスにも、LSPのエチケットにもあまり重きをおかれていないように思われる。だからこそ、逆に注目しなければならない。つまり、レゴ®︎シリアスプレイ®︎メソッドを使って創造的を最大限に引き出すワークショップを設計しようとするならば、参加者に適切なインプットをどこでどうさせるかについて慎重に検討しておかねばならない、ということである。

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