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『拡張による学習』をレゴ®︎シリアスプレイ®︎メソッドの文脈で読む(1)日本語版へのまえがき

 この一連のNoteで扱おうとするのは、以下の書籍である。

 本書の中で扱われているのは「拡張的学習理論」と呼ばれる枠組みで、他の学習に関する理論とは異なるユニークな点をもつ理論である。

 そのユニークさのひとつは、学習を「拡張」として考えることである。そこで生み出されるのは新しい概念である。何かを習得して自分のものにするのではなく、新しい何かを生み出すという点に焦点を当てた学習理論になっている。

 また、拡張的学習により生み出される新しい概念は、必ずしも成功するわけではない。その中で、より良き状態にどうすれば進んでいけるのかを考えていこうとする。より良き状態に進化するための積極的な介入を実際に行いながら、学習の進化や、どのような介入が良いのかについて形成的研究を行う「チェンジラボラトリー」を軸とするというのもユニークである。

 さらに、この拡張の中では、ある活動が限界を迎えるとき、そこには矛盾が生じることになり、その矛盾の解消が発展の契機になることを理論の軸としていることもユニークである。

 個人の行為に焦点があてられるが、より大きな活動へと発展していく中で、道具やシンボルなどの「人工物」を理論の中に積極的に取り入れていることもユニークである。多くの学習理論は人間の脳内に焦点を当てており、人間が創り出す環境要素を取り入れていることは少ない。

 この最後の「人工物」を理論に取り込んでいるという点が、ブロックで作品を作り、その作品を使ってコミュニケーションをとるレゴ🄬シリアスプレイ🄬メソッドと深く関係してくると感じている。

 レゴ🄬シリアスプレイ🄬メソッドと拡張的学習理論の関係とはどのようなものか、そこからワークショップの効果を引き上げる知見は得られるのか、これから一連のNoteで探っていきたい。

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