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思考ルーチンとレゴ®︎シリアスプレイ®︎メソッド(18)「なりきり」

 今回はこの本の中で紹介されている「なりきり」という思考ルーチンをとりあげる。
 この思考ルーチンの狙いは、以前の記事でも扱った「視点の輪」という思考ルーチンとかなり似ていて、物事を異なる視点から見る体験をさせることは共通している。異なるのは、「視点の輪」よりも、より深く相手の立場に没入させる体験を促そうとする点である。

 思考ルーチン「視点の輪」については以下から。

 この「なりきり」は、以下のような感じで進める。
(1)画像、映像、物語、問題などを与えて目を通すようにさせる。
(2)どのような登場人物がそこにいるかをピックアップさせる。登場人物は人間であるとは限らないてよい。動物や植物、川や山など人間以外のものもあげてよい。
(3)その人や物のうち、どれになりきらせるかを選択させる。
(4)その人や物について以下のことについて考え、記録させる。
  ・何を見ることができそうか
  ・何を見ようとしてそうか
  ・何に気づくことができそうか
  ・何を知っているか
  ・何を信じていそうか
  ・何を気にしていそうか
  ・何に疑念を抱きそうか
(5)全員で(4)考えたことを共有してみる。意見の相違などについてさらに意見を交わして理解を深めていく。

 上記のうち、(4)の項目が思考ルーチンの「視点の輪」よりも細かく、特徴的である。これを考えさせるときに「~するか?」ではなく「~しそうか?」とするのが一つのポイントであるとのことである。それによって、何か確固たる正解をみつけなければと縮こませずに想像の幅を広げる効果があるという。

レゴ®︎シリアスプレイ®︎メソッドにおける「なりきり」

 レゴ🄬シリアスプレイ🄬メソッドのワークにおいても、何かについて理解を深め解決の方向性を探るために「なりきり」は重要である。
 「なりきり」は深い他者理解の結果であるからだ。

 ただ、何かになりきるためには、それを考えるための情報と想像力のバランスが重要である。なりきる先のことについての情報がなければ想像が弱くなるし、情報があっても十分な想像力を働かせなければ、その人や物の「考え」や「信念」、「疑問」には至らない。

 レゴ🄬ブロックを使うことは「なりきり」を促進するための想像力を刺激するために非常に有効に働く。
 その情景を目の前にブロックで作って表現してみることで、頭の中で想像するエネルギーの一部が代替され、その情景のなかで動かす人や物に「なりきる」ことがやりやすくなる。

 そうなると、その「情景」の質を上げることが重要となる。このとき、写実的な表現も結構だが、レゴ🄬シリアスプレイ🄬メソッドで使われるブロックの色や形に「意味を与える」テクニックが非常に効果的である。
 それによって、事前に読ませたりインプットさせた、さまざまな情報を「メタファー」的な表現も手伝って、ブロックの作品に込めることができる。
 特に抽象的な「雰囲気」「関係」「想い」「価値観」などが目の前の作品に込めることで「なりきり」を促進できる。

 気を付けたいのは、そうした「情景」を描くのに十分な情報を与えることができているかということである。十分な情報がないためにレゴ🄬ブロックを使っても結局良いものが作られないことがある。よい「情景」をそこに出させるために、参加者に与えられる情報は十分かどうか、レゴ🄬シリアスプレイ🄬メソッドを使ったワークショップを設計・実施する側には慎重に検討することが求められる。

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