レゴ🄬シリアスプレイ🄬メソッドを活用して戦略策定の知恵を人生設計に活かす

　DIAMONDハーバード・ビジネスレビューの2024年7月号は「戦略的思考のキャリア論」という特集が中心に組まれている。

DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー 2024年 7月号 ［雑誌］ 特集「戦略的思考のキャリア論」 ＤＩＡＭＯＮＤハーバード・ビジネス・レビュー

　その特集の中に「戦略策定の知恵を人生設計に活かす法」というタイトルの論文がある。

人生設計のための7つのステップ

　この論文の中心にあるのは、企業の戦略策定と個人の人生設計は、非常に似通っているという指摘である。そしてその観点から、個人の人生設計をするための７つのステップ（問い）が示されている。

1. 私は素晴らしい人生をどう定義するか

2. 私の人生のパーパスとは何か

3. 私の人生のビジョンとは何か

4. 人生のポートフォリオをどのように評価するか

5. ベンチマークから何を学べるか

6. どのようなポートフォリオを選択することができるか

7. 人生の変革を成功に導き持続させるにはどうすればよいか

　このうち、1~3は非常に抽象度が高く、イメージや感情、直観を多分に含んだ回答になる。このような問いの表現には、レゴ🄬シリアスプレイ🄬メソッドが非常に効果的である。

　それぞれ1～3の問いに合わせてモデルを作ってもいいし、問いの３つめのビジョンを作って（ビジョンは視覚的なイメージが強いので一番レゴ🄬シリアスプレイ🄬メソッドでモデルを作るときに効果が高い）、その中にパーパス（自分の存在意義）や素晴らしい人生を定義づける要素を見出していくこともできる。抽象度が高い分、様々なアプローチが可能だと言える。

人生の主な領域のポートフォリオ

　問いの4つ目の「ポートフォリオ」を考えるには「人生の主な領域」を押さえていく必要がある。この領域は６つあり、それぞれの領域はさらに細分化される（括弧内に表記している）。

1. 人間関係（①大切な人　②家族　③友情）

2. 心身とスピリチュアリティ（①身体的健康と運動　②メンタルヘルスとマインドフルネス　③スピリチュアリティと信仰）

3. コミュニティと社会（①コミュニティと市民の義務　②社会への関与）

4. 仕事、学び、家計（①仕事とキャリア　②教育と学び　③家計）

5. 関心事と娯楽（①趣味と関心事　②オンラインの娯楽　③オフラインの娯楽）

6. パーソナルケア（①食事や睡眠などの生理的欲求　②通勤や家事などの日常生活に伴う活動）

　論文では、ある人が、上記の領域のどの部分を、どのくらい重要視しているか、また、どのくらい現状で満足しているかの2軸でポジショニングすることが「ポートフォリオ」を考えることであるとされる。

　レゴ🄬シリアスプレイ🄬メソッドでこの領域についての考察を深める場合、直接的に個別領域の重要度や満足度を、数値で評価し、表現する方法はそぐわない。レゴ🄬シリアスプレイ🄬メソッドが向いているのは、相互の関係性の考察と表現である。

　レゴ🄬シリアスプレイ🄬メソッドを使った場合には、まずは「ポートフォリオ」の項目ぞれぞれに自分の考えを表現したモデルを作るというのがスタンダードなアプローチとなる。
　さらに、それらのモデルの関係性を大きなテーブルの上に配置することで相互の関係性を考え、表現することが考えられる。

　さらに、それぞれの考えを表現したモデル同士の関係性も含めて、以下の写真ように表現することができる。これは自分の人生の「ポートフォリオ・システム」と呼ぶべきものである。
　※実際には、レゴ🄬シリアスプレイ🄬メソッドのトレーニングを受けたファシリテーターのもとでないと作ることは難しい。

モデルを作り、それらの関係性を線やチューブでのつながりで表現する。

　このように、「ポートフォリオ」のつながりについてもレゴ🄬ブロックで表現をすることで、ある項目に変化が生じたら、他の項目にどのような影響が出るかを考えやすい環境を作ることができる。

　なお、この4つ目の問いについて、すなわちポートフォリオとそれを構成する要素の評価についてレゴ🄬シリアスプレイ🄬メソッドでは直接扱うことができない。
　ここで要素を評価するのは、どのように要素を付き合えばよいのかについての決定ができるようにするためである。それぞれの要素について点数を与えなくとも、要素間の影響力の関係性を考察することで、決定のための材料にできるという点がポイントとなる。

ベンチマークから学ぶことについて

　つぎに、「人生設計のための7つのステップ」の５つめの問いである「ベンチマークから何を学べるか」について、考えてみる。
　ここでいうベンチマークとは、要素の評価結果が標準から見てどのくらい外れているかという情報を得るための工夫である。レゴ🄬シリアスプレイ🄬メソッドでは要素の評価をしないので、標準的なベンチマーク活用法は採用することができない。

　その代わりに、ロールモデルになる人から、4つ目で扱ったポートフォリオを構成する個別の要素に関して、それを充実させる方法を聞くという方法は考えることができる。

　また、レゴ🄬シリアスプレイ🄬メソッドを活用したワークでは、一人ではなく複数の参加者によってワークを進めることが多い。それは、非常に個人的なテーマであったとしても、他の人の考えに触れることが自分のテーマに関する考えを深める効果を期待するからである。ここでも、複数名でグループを組んでワークを進めることが良いと思われる。

　６つめの問いである「どのようなポートフォリオを選択することができるか」については、自分についての「ポートフォリオ・システム」のモデルをつくり、その全体的な性格の理解をもとにしながら他者の意見を参考にして、自分についての「ポートフォリオ・システム」のさらなる進化型を考えるということになるであろう。

　最後の７つめの問いは、これまでの問いに対するまとめともいえる。「ポートフォリオ・システム」を作り手がシステム思考の観点で理解することができていれば、その繁栄と維持のために取るべき次のステップは自然と明らかになっていくといえよう。

リアルなワークショップの実施は可能である

　この論文のフレームワークとレゴ🄬シリアスプレイ🄬メソッドを活用して、基本的に自分の人生設計を作るというワークショップ・プログラムの可能性を考えてきたが、どうやら実現できそうである。
　もちろん、その実施のためには、会場や資材の準備、参加者の確保などのハードルがあるが、それをクリアーできるのであればぜひトライしてみたいと感じた。