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レゴシリアスプレイメソッドにおける創造性について考える(8)『ジグザグに考えよう』:選択する

 レゴシリアスプレイメソッドにおける創造性はどこにあるのか。

 ステップの7つめは「選択する」である。ここまでのステップは、いかにアイデアの数を増やすかということに焦点を当てたステップであったと言って良い。この7つめは多くのアイデアから良いものを選んでいくことが狙いとなる。

 ここで示される演習は4つある。

(1)自分が探しているものを知る
(2)アイデア・コンテストを開催する
(3)良い面にとらわれない(Look Past the Good)
(4)編集・修正・改善

自分が探しているものを知る

 良い「選択する」のためには、そのための良い基準が必要である。その基準は最終的にどのようなものを求めているかに依るだろうが、ここでは広く使うことのできる選抜のルールが紹介されている。

・リアル(現実的である)・ウィン(目的を達成できる)・ワース(価値がある)
・シンプル・エレガント(効率性の高さ)・耐久性
・マーケットはあるか・実現できるか・金はかせげるか

 共通しているのはシンプルなルールであり、それを見つけて「選択する」ときに自分のものにしておくことが重要である。

 レゴシリアスプレイメソッドを通じても、自分の判断基準や組織にふさわしいルールを考えることができる。その人の判断基準などが経験に基づいて無意識的に近い状態で作られている場合には、目に見えなく、時に言葉にしにくいときがある。そのような場合には、それを明らかにするためにレゴシリアスプレイメソッドを使ったワークは役に立つだろう。

 これに関しては『シンプル・ルールズ』という興味深い本がある。

 これとレゴシリアスプレイメソッド、およびリベレーティング・ストラクチャーに絡めて以下の記事に書いているので興味のある方はぜひ見てみてほしい。

アイデア・コンテストを開催する

 これはアイデア同士を比較してランキングをつけていくことである。もちろん、ここでも選択の基準をもつことの重要性は変わらない。コンテストでいう審査基準をつくり、総合点を出すことによってどのアイデアがどこに弱点があるのか、総合的に最も価値の高いアイデアはどれかについて検討するということだ。
 なお、アイデアの数が多い場合には、その前に幾つかのグループに分けておき、グループごとに審査していくことが勧められている。

 レゴシリアスプレイメソッドでは、アイデアのコンテストを行うことはほとんどないが、さまざまな基準からアイデアを試すことは、「出来事のプレイ」という応用技術に通じるものがある。「出来事のプレイ」では、レゴブロックで表現した組織やシステムに対して出来事を起こさせて、その組織やシステムがどのような反応を示すかを評価していくことにつながる。
 このように、「選択する」は個人や組織の価値観だけではなく、さまざまな出来事にどれだけ耐えられるか、という視点から評価する方法も、レゴシリアスプレイメソッドでは持っている。

良い面にとらわれない

 選択するときに、良い面だけではなく悪い面も見てバランスよく評価するというのがこの演習のポイントである。
 PMI(Pluses Minuses Interesting:長所・短所・興味深さ)という3つの観点から評価することなどがこれにあたる。また、自分のアイデアに対してはプラス評価をしがちなので、そのアイデアが生み出す最悪のシナリオをあえて考えてみるというワークも紹介されている。

 レゴシリアスプレイメソッドのワークショップでも、「最悪の〇〇」などの想像力を掻き立てる問いがしばしば投入される。レゴブロックでの作品作りは想像力を引き出しやすい。それは、あまり普段考えない領域まで参加者が思考を至らせることを支援する。これは他の手法にはなかなかない強みであることを改めて認識しておくべきであろう。

編集・修正・改善

 このステップで最後に紹介されている演習では、アイデアを弱点を意識した上で、もう一度考え直してみるということを強調する。普通に考えれば、弱点があることはアイデアを捨ててしまうことにつながるため、逆にそれを乗り越えられれば、他の人が到達できないアイデアに辿り着くことができるということである。
 例えば、商品の使用の用途やターゲットを変える、他のボツになったアイデアと組み合わせてみるなど、粘り強く考えるということである。

 レゴシリアスプレイメソッドは、プログラム設計やファシリテーションなどが思ったよりも難しい。問いの小さな表現を変えたり、問いを出す順番を変えたり、小さくルールを変更したりすることで、がらりとワークショップの雰囲気や個人の考え方が変わってくる。
 そのような意味で、プログラムを構想し、1回やってうまくいかなかったとしても、しつこく改良していくことで当初に描いていた以上に面白いプログラムになっていくことも少なくない。

 まさにここにあるようなジグザグなしつこさが、レゴシリアスプレイメソッドを使ったプログラム開発にも必要だと感じている。

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