一晩置く料理を初めてした日

 私は料理をしない人間だ。少なくとも、最近まではそうだった。しかし、ある時自分の手を見た時骨ばっていることに気づいた。というのも私は仕事柄人の手を見ることが多く、人の手を見れば職業、年齢、心理状態、栄養状態くらいなら分かるのだ。爪と手の甲に栄養状態は出る。それはもう酷いものだった。縦筋がくっきりはっきりでており、手の甲は骨の形が浮き出ていた。
 20を超え、代謝は悪くなっているはずだ。しかし、胃下垂で太りはしない。筋肉だけが糞尿に流れ残るのは痩せ衰えた身体。
 さてまぁ骨と皮になった私は肉体維持のために料理を始めたわけだ。タンパク質と野菜だけ摂っていれば死なないだろうという考えでそれまではいたがこれでは栄養失調になることが分かり、野菜炒めやハンバーグ、麻婆豆腐などを作るようになった。料理というのは焼く、煮る、揚げるでだいたい何とかなるもので切って焼いて指定の調味料をぶち込むだけでゲームしながらでもできるものが多い、特に煮る料理や汁物は途中で寝ていてもタイマーをセットしてタイマーの音で目覚めたら出来ているからありがたい。
 レシピはクックパッドを見ると良いと聞いてずっとクックパッドにしがみついている。クックパッドのレシピは具材を足す分にはあまり問題ないが醤油の分量などを間違えると火傷する。まだまだ料理初心者であるため我流の料理をやろうとするのも火傷の元だ。我流でラーメンを作ろうとしたら泥みたいなとても食えたものでない物ができたから初心者の内は冒険はすべきじゃない。これは色々に言えることでプログラミングやスポーツでも初心者の内は師に従うのが良い。
 さて、そうして料理を色々作っているが一日でできないような料理はした事がなかった。焼く→終わり、煮る→終わりという簡単な料理ばっかり作っていたから家庭でたまに出てくる豚の角煮という料理が恐ろしく面倒な料理だと知らなかった。煮る→汁捨てる→具材入れて煮る→一晩置く→油取る→味付けし煮る→終わりという何度でも煮てやるよという執念深さが生み出した闇のレシピだった。
 1つ勉強にはなった、私には豚角煮はまだ早かったのだと。完璧にできたが豚角煮を作るのに休日一日が消し飛んだ。料理1つに使うエネルギー量じゃない。料理始めたての時に煮物を完成まで見張っていた自分を思い出すエネルギーの無駄遣いだった。

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