虚構新聞完全考察

 まず、虚構新聞とはUK氏が2004年に楠木坂コーヒーハウスという自身の個人サイトに嘘ニュースを書き込んだことに始まるサイトである。始めは楠木坂コーヒーハウスのサブページだったが2008年に別サイトとして独立している。
 虚構新聞といえば海外メディアが虚構記事と気づかずに引用したという伝説がある。これは事実でアメリカのウォール・ストリート・ジャーナルが「『セシウムさん』に苦情20万件 『出来レース』の声も」という記事を誤引用している。

 怪しいお米セシウムさん事件は実際に起きていて、東日本大震災により原発事故が起こり放射能汚染が様々なものに広がっていて周辺地域の食べ物の安全性が疑問視されていた頃だ。テレビ番組での懸賞でお米のプレゼントをしており、当選者の名前が怪しいお米セシウムさんとなっていたため被災地の農家に失礼に当たるとして問題となった事件である。
 虚構新聞の記事ではセシウムさん名前のという人物に全ての商品が当たる出来レースが行われたというニュースになっており、それに憤慨する架空の視聴者の声が掲載されている。
 怪しいお米セシウムさん事件への皮肉の効いた風刺が裏取りせずに風刺だと気づかれず真実として有名誌に載ったことは今では虚構新聞を語る上で欠かせないビッグニュースである。
 さて、虚構新聞は時代を経て有名になり、虚構新聞の内容を載せた書籍も何冊か出ている。最近は創刊20周年の記念展覧会も開かれていてその有名ぶりが分かる。

 虚構新聞はその有名さから本当っぽい嘘情報を一年中発信し続けるという虚構メディアの祖とされYouTubeの存在しない生物を発信するチャンネルや存在しない事件を発信するチャンネルも虚構新聞を参考にしているのではないだろうかと考えている。
 
 さて、そんなビッグメディア虚構新聞の記事を考察しようというのが本記事の内容である。順にあげていくとする。

 まず、基本的に情報元は実在しない団体や人物である。下手に名前を使うと怒られる(賠償や警告)可能性があるためそうしているのだろうと考えられる。偽の情報元の中には虚構新聞の情報元として何度も登場する情報元もある。例えば日本放送連合会(実在するのは日本放送連盟)や千葉電波大学などなどである。ちなみにファンというか有志というのか、によって大学ホームページが作成されていてとても精巧な出来とは言えないネタページではあるものの今日も虚構新聞のファンが集うあたたかいページであることは間違いない。

 二つ目、初めの数行で目を引けるように各記事への工夫。記事というのは基本的に起承転結だが、起の時点で記事の大体の内容が、どういった記事であるかがはっきり分かるように書かれている。これはTikTokのコツとして影井ひなさんという方が語っておられた開始5秒の重要性に似たものを感じる。影井ひなさんが語っておられたのは開始5秒で大体の内容が把握できるように動画を作るという話で虚構新聞の記事の書き方はこれの記事版なわけである。まぁこれは様々なメディア共通で行われていることで見出しの言葉と最初の数行には各社特に力を入れているだろう。

 三つ目、現実と繋げること。最近起きている問題を笑い飛ばすような内容のものが多く、現実問題と繋げることで関心を持ってもらい集客と問題提起の両面を持っているといえるだろう。杉の季節にはスギ花粉で絵文字が花粉症になるというニュースを出しているし大谷翔平選手のホームランが話題になればホームランを予測して速報として出すというニュースを出している。話題についていくのは大変だろうし、きっと話題を調べる中で得られる知見もあって面白かろうと思う。

 四つ目、裏付けや根拠となる証言などを入れること。信仰心による信用というのがあって科学信仰により科学的裏付けがあれば人は信じるという特性を利用して記事感を出してある。例えば「10倍成人式、出席者ゼロ 主催者『誠に残念』滋賀・西近江村」という記事では村の広報課が式を開くにあたるまでの経緯を話しておりこれは証言であるといえるだろう。もちろん西近江村というのは存在しないのだが私は滋賀県民であるから大体 旧滋賀町(現大津市)の辺りなのかなという考察ができたりするのも面白い。「『10桁で終了』 円周率ついに割り切れる」という記事はくだんの千葉電波大学のスーパーコンピュータによる計算の結果10桁で割り切れたという内容でスーパーコンピュータという科学っぽいものを根拠として割り切れるという根拠にしている。


 五つ目、嘘だと分かりやすく書くこと。虚構新聞だからといってリアリティーを出しすぎて信じられたら困るわけである。前述のウォール・ストリート・ジャーナル誤引用事件みたいなことが起こるといけない。ゆえに読めば嘘だとはっきりわかるような明らかにおかしな部分がある「『マーク塗れれば合格』の汚名に反撃 衛府嵐大学、全員不合格に」という記事では衛府嵐大学という毎年定員割れをしているという架空の大学がマークシートさえ塗ればあの大学に合格出来るという世間の声に対して、クソデカマークシートを塗るだけの問題を出して!?全員塗りきれず見事に全員不合格にしたというニュースで対応の仕方の癖が強すぎて明らかに嘘である。他もこういった嘘だとわかる要素が多分に含まれている記事だらけなのだがたまに本当になるという奇妙な出来事が起きている。「日本の『謙虚』、海外アピールに200億計上」という日本の精神性を海外にアピールするために200億!?かけるという記事は政府が類似の政策を行うという話が出て実際に210億円がクールジャパン機構に出資されている。

 価値観も技術も変わっていく中で虚構新聞は明らかに嘘だとわかる記事でさえも本当(虚構新聞的には誤報)になってしまうという世の中で今日も一人で虚構新聞を書かれていらっしゃることには嘘の専門家として敬意を表したい。
 さて、本記事はここで以上とさせてもらう。この記事は敬愛するUK氏のトークイベントや虚構新聞展に行けなかったという怨念からトークイベントで話してそうなことを考察しつつ書かせていただいた。少しでもトークイベントで語られたことに合致すれば良いなと思う。

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