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保健師面談の記録ってどう書くの?(後編)

皆さんこんにちは!
産業保健師のきりん🦒です。
保健師面談の記録について、前編ではその目的と気を付けるポイントについて記載させて頂きました。
後半では実践編という事で、読み終えた後に、
早速書いてみよう!という気持ちになって頂けましたら幸いです🦒
では早速…はじまり、はじまり

目的のおさらい

基本は前回の記事を読んで頂ければ、めんどくさい程に目的が見えてくるかと思います。
産業保健の教科書的には
①保健指導の評価 
➁他の産業保健職との情報の共有
③リスクマネジメント

⇒産業看護職自身がどんな支援を提供したか、またそれを選択するに至った判断基準が何だったかを明確にして、記録を残すことで、自身の活動の一連の過程を示し、活動の質を保証するものであったり、他職種との情報共有(第三者に理解してもらう)為の物でしたね。

今日はココを押さえつつ、実践的にはどのようにして上記をクリアにしていくのか?
また、法律上注意すべきポイントを記録の中でどのように扱っていくのかも一緒に考えて行きたいと思います

そもそも皆なんで記録迷子になるんだっけ?

これ、分かってないと、いつでも迷子になっちゃうので、調べてみました。

■保健師記録の課題
①記録の書き方
・保健師のアセスメントが表現されていない
・主語があいまいでわかりづらい
・誰のための記録か意識されていない
・書き方や基準が統一されていない
➁記録の活用
・実践活動の評価に役立てられていない
・保健師のスキルアップに活用されていない
・サービスの継続に役立てられていない

第75回日本公衆衛生学会 自由集会 保健師の記録について
大阪大学大学院医学系研究科 小西 かおる先生資料p10より引用

書いてて耳と目と手が痛いですね…。
看護教育と比較して卒前/卒後教育が少ない産業保健においては記録1つとっても自己流だったり、自分の為の備忘録のようになっていたり、そもそも記載する目的が曖昧で、とりあえず書いてみるみたいな事も多いのではないでしょうか?
(勿論私自身も気を付けて行かねばとハチマキをむずび直しております🦒)

上記の問題をクリアすべく1つ1つを追ってみましょう。

記録の書き方について その①

■フォーマットが統一されておらず、迷子になりやすい?-Plan,Do,Seeって知ってますか?-

病院では、電子カルテなどで各種記録について、ある程度フォーマットが決まっておりそこに入力すればOK!という場所も多いかもしれませんね。
もちろん、事業場によっては記録の統一化が図られている場所もあるかもしれませんが、産業保健の場で決まったフォーマットあれば恐らく皆さん迷子にはならないと思うので、大多数の事業場は特に決まりがないのかな.…と思います。
保健師記録で良くお勧めされているのが
『Plan,Do.See』だそう。
SOAPについては、皆さん良く知っているかと思うので、今日はこの書き方についてせっかくなのでまとめてみたいなと思います🦒

保健師の記録として重要なこと は、保健師活動の評価や実践の根拠を示すために、何を伝え、何を記すかということである。そ こで、保健師の思考過程を表す記録様式にPlan/Do/Seeという枠組みを使うことをおすすめしたい。
このPlan/Do/Seeで書く保健師記録は2つの基本コンセプトを含んでいる。
1つは保健 師の思考過程を示すこと、
2つめは連携・協働である。
これは記録のもつ本質的な目的であると同時に、保健師活動は1つの組織として他職種とともに活動しているからである。

保健師記録のガイドライン 令和5年 5月 茨城県看護協会 保健師職能委員会
4 保健師記録の実際より引用

このガイドラインに沿って、ちょっと産業保健版を勝手に妄想してみたので、”保健師記録のガイドライン”と”保健師の記録について”を参照しながら一緒に見て行きましょう。

■記録の基本要素~思考過程を Plan / Do /See で書く

まずは、”保健師の記録について”から、手順を学んでみましょう
*********************************
①記録に記す概要を明らかにする
・記録の「目的」を明確にする
・記録したい「主張」を明確にする
ー「主張」とは、記録で他の保健師に伝えたいこと
※産業保健の場合は産業医も含むかな…と個人的には思います
ー面接の結果、保健師が判断した内容、今後の見通し
➁Plan:主張を根拠づける情報を客観的に記す
・面談の目的や、他の保健師に伝えたいことに沿った事実を整理する
・事実を内容ごとに分類する
産業保健では、「健康面」「就労面」「生活面」に分類すると良いって『職場のメンタルヘルス不調:困難事例への対応力がぐんぐん上がるSOAP記録術』に書いてあったぞ!(今回はSOAPじゃないけど…。)
・事実と意見を区別し、客観的に記す
・対象者の生活や考え方、価値観を表す事実を吟味し、選び出す
・保健師の助言、指導、今後の見通しを根拠づける「事実」が書かれているか見直す
③Do:保健師の実践を記す
・実践とは、情報提供、助言・指導、他機関連絡等である
・目的に対応した保健師の言動や行為を記す
・保健師の実施の意図を記す
・保健師の言動を要約、あるいは、必要に応じてそのまま記す
・現在不明な点や今後必要な情報の内容を記す
④See:保健師の実践に対する対象者の同意や反応を記す
・保健師の実践評価として、対象者の反応や同意を記す
・対象者の言動を要約、あるいは、必要に応じてそのまま記す
・今後の見通しや計画を記す
・今後の対象者との関わりの頻度、接触方法や期間などを記す
(次回面談日(※実際は訪問日と記載)のみを記載しない)
・現在不明な点や、今後必要な情報収集の内容を記す
⑤書き終えたら記録全体を評価する
• 記録の目的は明確か?
• 他の保健師に伝えたいことは明確か?
• 事実と意見は区別できているか?
• 客観的に記されているか?
• 実践の根拠となる事実は記されているか?
• 実践に対する対象者の反応は記されているか?
• 保健師の意図や今後の見通しは記されているか?
• Plan/Do/Seeのつながりはあるか?
**********************************
🦒いつも何となくやっているけど明文化されるとスッキリしません?✨
実は私自身、会話のやり取りの多い面談については、SOAPに上手くまとめることが出来なかったんです。
でも、『Plan,Do,See』はとってもまとめやすい!
これは個人差や慣れの問題かもしれないので一概には言えませんが、展開プロセスが複雑な保健師記録では、こちらを使うと書きやすい型もいらっしゃるかもしれませんね。
保健師記録のガイドラインでは下記のようにまとめられていました。

保健師記録のガイドライン 令和5年 5月 茨城県看護協会 保健師職能委員会4 保健師記録の実際より引用

■記録で書き表す項目(保健師記録のガイドラインより)

【基本事項】
年月日、曜日、時間、支援方法(面接、訪問、電話)、対象者名、担当保健師名
※産業保健の場合は訪問というより良く使う手段にメールが来るかもしれませんね!
【目的】
保健師自身が面接でどのようなことを明らかにしようと思ったのか、 どのようなことを観察するのか、情報を把握するのかを記載する
【主訴】
相談者が最も相談したい事
【収集した情報】
内容ごとにまとめ、見出しを付ける
【アセスメント】
保健師の判断
【支援内容】
実施した情報提供・助言・保健指導の内容
【相談者の反応】
助言した内容に対する当事者及び家族の態度、言動
※産業看護職の場合は、家族が面談に同席するケースは少ないので、上司や人事課の担当者等の第三者が同席した場合を想定しても良いかもしれませんね。
【支援計画】
今後の支援計画、次回の面接の課題

★参考:アセスメントについて
対象者の健康問題を明らかにするために、対象者や他の情報源から健康状態に関する主観的・ 客観的データを収集し、保健師の視点からその情報を分析・解釈することである。集めた情報を読み、考え、解釈、判断、推理・推論していくことがアセスメントである。

🦒⇒これって意外に出来ているようで出来ていないんですよね…
実際に面談の要になるのに
言語化が上手くいかない=きちんとしたアセスメントが出来ていない
ので、ここを自分の中でも実践を通じて強くしていかなければならないな…。と思う今日この頃の🦒です。

■アセスメントの視点
【医療的側面】

身体的、精神・知的機能、発達障害特性、既往歴、現病歴(疾患の現状 や予後)、遺伝的素因、画像、検査結果、受診・内服状況、症状
【心理的側面】
病気や障害の受け止め、思い、思考の特徴やコーピング、 自我機能・精神機能の発達
【社会的側面】
≪生活支援の視点≫
生活歴、家族状況、居住環境、文化的背景、 キーパーソンの有無、地域住民との関係
≪活用できる資源の視点≫
経済的側面、制度利用等の社会資源
【本人・家族の希望】
本人や家族の思いや希望
参考文献:日本看護協会「複雑かつ多重課題解決に向けた事例検討会の手引き」(令和2年3月)

🦒⇒産業保健に置き換えた時は”働くこと”(労働環境や仕事内容、役職、職場の人間関係、勤務形態や労働時間)についても項目にはMUSTで入ってきそうですね!
細かい産業看護職のアセスメントはこちらのツールを使ってみるのも良いかもしれません。

記録の書き方について その➁

■わかりやすい記録のポイント

■観察したこと、自分の意見・判断は区別して書く。
■客観的に書く=再現性がある
読み手が同じ状況・物事をイメージできる。※1

■否定的な表現を書くときは、その根拠を明確にする
:対象にレッテルを貼らない。
■保健師が見たこと聞いたことを区別して書く

■文章は簡潔・明快・明確に書く
主語、述語を明快にしできるだけ短文で書く。
1つの文に2つのことを含まない。→「1文につき1つの事を書く」
逆説や要約でメリハリをつける
■順序よく、まとまりを付けて書く

■対象者の反応や合意事項と今後の計画を記載する

こう書けばわかる!保健師記録: 保健師必携p34-40、保健師記録のガイドラインより引用

■「不適切な表現」を客観的に書く
客観的に書くということを難しくする原因の1つに、自分の価値観や先入観を入れてしまい、否定的な表現を使ってしまう事があります。
否定的な表現が出てきたときは、自身の考え方やものの見方を当てはめ、対象者にレッテルを貼っていないかを振り返る事も大切であると、”保健師記録”には記載されていました。
どんな記録においても客観的なデータに主観を入れないというのは鉄則かとは思いますが、意外とごちゃまぜになってしまっている場合も多いかと思います。(自戒を込めて)
不適切な表現を客観帝に書く方法があったので、下記に例を書いてみました。

例1)表情が乏しい
◇具体的な書き方の例
・話をしていても、顔面の筋肉の動きがない。
・笑わない。
・仮面様顔貌をしている。
・目がうつろである。
・声に抑揚がなく、口調が単調で変化がない。
・喜怒哀楽がない。
◇ポイント
・表情が乏しいことの原 因が何かを書く(機能 がないのか、感情を感 じないのか)
・心中の感情にふれる。
・身振り顔つきを書く。
例2)文句が多い
◇具体的な書き方の例
・同じ事を何度も訴える:その内容を記載する。
ex)
・サービスに対する不平不満ばかりをいう
・職員の対応についての不満がある
・時間どおりにヘルパーが来ない
・通知が来ない、遅れた
・電話をかけてもいつもいない
◇ポイント
・具体的に何について、 誰に対して、どのよう な不満かを明記する。
・訴えの頻度、方法、程 度(強さ・感清)を明記する。

保健師記録のガイドラインより引用

🦒⇒後程書きますが、産業保健でも書いた記録が誰のものなのか、開示する際に相手との信頼関係を含めて熟考しながら記録を残します。
客観的データに、自分の価値観や先入観を入れるのを防ぐのは産業保健でも大切になりますので、トレーニングしていきたいですね。

■わかりやすい記録の構成

論理的な文章を書くための構成
1.主張を明確にする。
2.主張の根拠を示す。
3.文章の論理的なつながりがあること。
4.文と文の関係がわかるように接続詞を使うこと。
5.主張を明確に示すために、内容の吟味をし、必要なことだけを書く。

こう書けばわかる!保健師記録: 保健師必携 p42表6より転載

【保健師が訪問面接で観察したこと、聞いた事からその対象へのかかわりの方針を出すという訪問面接記録での主張は、まず書き手(面談者)が意識しなければならないということです。
それは、書く前に意識化しなければなりません。
記録を書きながら最後に明確にするのではなく、記録を書く前に「保健師として面接した結果、どう考えたのか」をはじめに示すことが大切であるということです。
そして、その伝えたいことを根拠づけるのが「観察したこと」「聞いたこと」であり、それらの事実を客観的に記して、つなぎ合わせるのです。
その事実関係を明確にするために、接続詞を使い、どの順序で並べたら最もよく分かるのかを考えます。
簡潔に、明快に、明確に主張を伝えるために必要な情報を根拠として位置づけ、順序だてることが論理的な文章となるというわけです】
と『こう書けばわかる!保健師記録』P42に記載がありました。
同じページに下記の図があります。
下記の図は、上記に記載で書かれていた、「主張」を明言し、その「根拠」を明確に示していくというのを図式化した物です🦒
(図になると分かりやすいですよね!)

広島県保健師マニュアルp12より転載

「主張」を明言し、その「根拠」を明確に示していくという形、是非やってみて下さい!
とっても論理的にまとまると思います🦒

■書く前に考える、効果的で明快な文章のコツ

■この記録を読む同僚・上司(保健師*)・管理者・他職種の立場になってみる。
①読み手を想定して書く。
②保健師は一番何を知りたいと思うだろう。
③自分は記録から、何を知りたいと思うだろう。
④管理者は何を知りたいだろう。
⑤事業を展開している他職種は何を知りたいだろう。
*記録の種類によって、読み手は異なりますが、保健師同士で読みあうことをまずは 考えてみましょう。
記述の順序と戦略を練る。
①大切なこと、この記録で知らせたいことをはじめに考え、下書きを書く(下書きは 省略可)。
②全体の構成を考え、目次を立てる。
③大まかな概要(結論まで)を書いたあとで、項目を立てて細かい点について述べる。

こう書けばわかる!保健師記録p43表7より転載

書き手は読み手に、効果的に、明確に伝えるにはどうしたら良いのかの戦略を練って記録を書くというのもポイントになります。
書く前に主張を明確にし、構成や結論を意識してして書くと良いとも解説には記載がありました。
皆さんが日々の産業保健活動にて記録を用いて、誰に何を伝えたいのか?目的に沿って考えながら伝わる文章が書けるとチームでの対応もスムーズになり、チーム力が上がりそうですね🦒(ワクワク♪)

記録の書き方について その③

では、ちょっと産業保健の方で今まで書いてきたことをどのようにしたら応用できるかを実際の面談シーンにあわせて考えてみましょう!

■目的の明確化をしてみる(産業保健の現場から)

記録を書く前、健診事後面談等あらかじめ面談が予定されおり準備段階の時に目的を自身の中でも明確にしておけるものは準備をしておくのが良いかと思います。
会社としてその面談がどのように位置づけられており、その中で保健師としてのミッションはどんな事か?
そのミッションを計画に落とし込んで、先に知っておいた方がよさそうな情報を拾っておきます。

また、上司からの紹介でメンタル不調が疑われる部下の面談をする場合には、事前情報から上司がどういった事を心配しているのか?をある程度確認した上で、そこも含めて受診が必要な状態か?産業医に入って貰う事が必要か?などを判断する、面談として行うなど自分なりに目的を明確化しています。
当日飛び込みの案件では、まず相談者が何を希望して面談に来て下さったのかを面談の中で確認してそこに沿って本人に対して保健師が出来る事を明確にした上で面談のゴールや目的をその場で立てていくような感じになるかと思います。
ですので、事前準備ができない直来の健康相談やご自身が心配に思っていない中で上司が心配に思い相談のあった部下の不調相談等が
私自身一番難しいな(面談の進め方も記録の取り方も)と思います。
さて、ではこの辺をまとめながら進めて行きましょう!

①面談事後措置編

まずは一番分かりやすい事後措置面談について、考えてみましょう!
では早速…
1)そもそもの面談目的を明確にする
⇒事後措置は、職場で計画を立てて実施している場合が多いかと思います。
🦒の事業場では、会社の方針に基づき、安全衛生委員会を通じて、集団の健康課題の共有を行った上で重点課題に挙がってくる項目について保健指導を実施し、次年度の健診で評価をしていくという事を伝えて実施しております。
保健師面談の目的は上記のように既に委員会を通じて明文化されているので、それに沿って保健師面談を実施します。
2)実際の準備(面談前に🦒がしている事)
・健康診断データやその他の健康情報(問診票やストレスチェックの結果など)
・仕事の状況(働き方や、残業時間など産業保健職が見れる状況)
・個別のライフスタイル(睡眠・食事・運動・喫煙状況等)
これは先に”事前情報”として、面談記録に書いておくことが多いです。

対象者の健診結果データにて、どの部分が会社が設けた面談基準に引っかかっているのか?それをこの面談にてどうしていくのが目的なのか?
病院受診が必要な状態なのか?
就業上配慮が必要になる事項がないか?
働き方や問診票上から得られる情報をまとめておくと、なんとなくその人の全体像が見えてきますよね。
(ちなみに、身長や体重、BMIなどから身体の大きさなども想像してみるなんて事もやってます…)
事後措置に関しては、恐らく上記のように保健指導が必要な項目や会社としてどのような方向付けをしていくか等は
面談前にある程度情報を収集することが出来るので、事前準備である程度アセスメントをして置き、本人の結果の受け止めや事前情報になかったご本人からの情報を合わせて、アセスメントをし、どのような助言をするのが望ましいか、次回にはどんな評価をするのが望ましかを考え記載して行くような形になるのかなと想像します。

イメージとしては、下記のような記録用紙やそれがなければご自身でテンプレなどを作っておくと良いかもです。

労働安全衛生法に基づく保健指導実施者の手引きp25より転載

私個人では、下記の内容を記載するようにしています。
弊社の場合は特にフォーマットはないので、主に『Plan,Do,See』で下記内容をまとめています。

■事前情報
・今回の結果で面談が必要な項目
・これまでの過去3年分程度の検査結果の推移
・問診票からの生活習慣や通院状況など
・働く環境、役職、時間外勤務データ、scの結果
■面談の基準になっている項目とそれが引き起こす疾患リスク
■ご本人の結果の受け止め(S情報、O情報)
■上記の情報からのアセスメント
■自分が実施/提供した内容
■上記に対する本人の反応や受け止め
■次回の予定や今後の予定(次回面談の予定の有無/二次検査結果依頼等)
■産業医への報告の有無
 (予定の場合は、●●先生に報告予定→〇月〇日報告済みと記載)

🦒実践中の健診事後措置面談記録

➁その他の健康相談など

1)面談目的を明確にするにあたって気を付けている事
ここは結構難しいかもしれませんが話を伺いながら考えて行く事もあるのではないかと思います。
直来の場合は、健康管理室に来室した理由から尋ねて行く場合もあります。
この際私が保健師としていつも頭に置いているのが、
・受診が必要な状況か?(メンタルでもフィジカルでも)
→受診の際は、産業医からの紹介状が必要な状況か?
→受診の付き添い人が必要か?
→受診にあたっての交通手段はどうするか?
・産業医にすぐに報告するべき内容か?
・上司や人事を巻き込む必要がある案件か?
・一旦話を聴いて、本日はお帰り頂いて大丈夫な状況か?
等をスクリーニングできるように質問や状況を読みます。
その場合、基本はメモを取る程度にして、
対象者の様子を5感で捉えながら、じっくり話に耳を傾けます。
メンタル相談の場合は特に、その場での記録は最小限に留め
相手に”私はあなたの話を聴く姿勢があります。十分に準備ができていまうよ”というのを所作でも伝えます。
また、心理的安全性の保てるよう、守秘義務があること、言いたくない事は言わなくて大丈夫なことを伝え安心して話して頂けるような空間作りに努めます。

記録を書く際は、前項にもあったよう『主張』を明確に、現状本人が何に困っていて誰にどうして欲しいのか?等を記載します。

2)健康相談の記録の実際
※ここで一番大切にしているのは、本人への開示に関する所です。
『産業保健における記録は、事業者の健康確保義務・安全配慮義務の履行のための記録であって記録者にとっての個人情報という面と、本人の個人情報でもあるという両面を持つため、一部非開示とすることが正当化されるとも考えられる、もとよりそのことを意識して記録を作成すべきだろう』
上記は、産業保健と法~産業保健を支援する法律論~ Occupational Health and the Law: Legal Theory Contributing to Occupational Health 3 健康情報等の取扱いと法 Handling Health Information and the Law p.136に記載されている内容ですが、その他産業保健職が保有する記録の開示に関する注意点では様々な場所で見かける方も多いのではないでしょうか?

ですので、実際の健康相談では、
本人の話してくださったこと、面談者(私)が話したことやその意図、客観的事実などは切り分けて記載をしています。
また、上司や人事が同席した場合はそれぞれの発言を別々に記載しますし、
先に上司から相談を受けていた場合は別にその相談記事を記録して、上司の個人情報として扱うよう記事の作り方にも気を付けています。

そのような中でどんな風にまとめているかの具体例を書きに記載しました。
これも主に『Plan,Do,See』で下記内容をまとめています。

■来室までの経緯
■ご本人の困りごと:主訴(優先順位があれば本人と相談して付ける)
困りごとは「仕事(業務量)(人間関係)」か「プライベート」なのか?
■上記の困りごとについて、ご本人にとってはどのような状態になったら良いのか?(本人の要望)
■健康状態(現在の体調)
うつうつとした気分?睡眠障害あり?等
■現病歴、過去の休業歴や既往歴
■職場の環境(所属部署、上長、仕事の内容や見通し感)
■ストレスチェックの結果や時間外勤務の状況など
■上記の情報からのアセスメント
■自分が実施/提供した内容
→現状、すぐに医療機関に行った方が良いか?それとも、一旦様子を見るか?(その判断根拠)
■上記に対する本人の反応や受け止め
■次回の予定や今後の予定
■産業医への報告の有無
(予定の場合は、●●先生に報告予定→〇月〇日報告済みと記載)
■(必要時)上司・人事への情報共有についての承諾を得た旨記載
→誰にも言いたくないというような場合でも、保健師だけでは解決することができないことを伝え、必要時は上司を巻き込むが、その際には説明を行い、本人の了承を得た事を記載し、情報を共有する。
★希死念慮がある等、生死に関わる場合でも、原則説明と同意のもとで他者には情報共有を行い、全て時系列で記録を残しておく。

🦒実践中の健康相談(主にメンタル)面談記録

記録を残す際に一番大切にしているのが、自分の判断とその根拠を明確に記載しておくこと、基本は一人で抱えないようにする為、産業医や同僚保健師に口頭でも共有し、記録にて再度確認してもらい、チームで対応できるようにしている事です。
これは、前編で沢山書かせて頂いた他職種との連携のためや、自分の行った面談がその場で対応できる最適解を選択した支援である事の裏付けにもなると思っています。
健診事後措置に比べて、その辺含めかなり気を使って記録を書いているような気もします。
前編でもあったよう、リスクマネジメントの観点からも自身行った行為について、慎重に記載しておくことは大切だなと改めて感じた🦒なのでした。

まとめ

今回は、何と2部制にしちゃったりして、とてつもないボリュームのnoteになってしまいました。
最後までお付き合い頂いた方、ガチ産業保健職まちがいなし!
(って🦒に言われるまでもないですね…。)

記録を書くということは
・自分自身の活動を振り返る(思考過程を通じて一貫した対応が出来ているかを明確にする)こと
・産業保健活動の質を保証すること
・チームで産業保健活動に取り組むための「要」になる
ものであり、ただ何となく書いてるのはもったいない!というだけでなく、自分や会社や従業員を守るための大切な業務の1つであることが、書いていて再認識できました🦒

決まった型やフォーマットもなく、根拠法令もなく、目的を見出すのもなんだがふわふわしがち…。
でも書いたモノには責任が伴う
そんな難しい存在。
だけど私達の活動を文字という形で紡いで残してくれる大切な存在。
「産業保健の記録」
明日からの記録が少しでも自信を持って書くことが出来るようになっていると🦒はとっても嬉しいです。

今日もお付き合い頂きましてありがとうございました。

*その他の参考文献*

文中に出てこなかったけど、このnoteを書く上でお世話になった書籍を2冊紹介します🦒…是非、読んでみてください!
ココには書ききれなかった記録作成のポイントにきっと出会えます~。
①職場のメンタルヘルス不調:困難事例への対応力がぐんぐん上がるSOAP記録術

➁相談援助職の記録の書き方 ―短時間で適切な内容を表現するテクニック






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