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04文通_たわいもない話を。

編集長と、高校2年生になった道前さんのやり取りは「優しさ」を巡る話へ。(1つ前の更新はこちら

答えが出ないことをぐるぐると話せることが楽しい。

道前さん

こんにちは、工藤です。
日に日に、予定が延期になったり中止になることが増えて、ちょっぴり疲弊気味です。誰が悪いでもないのに、延期や中止になることに対して謝られたり、謝ったり。少し、だけど着実に心がすり減るコミュニケーションだなぁと感じています。

そんななか、東北に住んでいる10個下の友達から「お母さんに贈る花束が綺麗だから見て!」とラインが来ました。僕がもらうわけでもないのに、スマホで花束を見ていたら、心が回復しました。

もけもけした小さな花の群れみたいなのが可愛いと言ったら、「スノーボール」というんだと名前も教えてもらいました。なんてことない会話が尊いですよね。

道前さんのお返事にあった「優しい人になりたいんだと思う」という一節、グッと来ました。僕にとって「優しい人」ってどんな存在かなぁと考えてみたんですけど、至った結論としては多分、人ひとりの複雑性を許容できる人です。

例えば、昨日と今日で相手の言っていることが変わっても許容できたり、理解のハードルを超える行動を相手が取っても許容できる。そんな人を僕は優しいなぁと思います。

理解したり共感しなくても良くて、「まあ、こういう人もいるかな」って思ってくれるくらいでいいんです。そういう人は優しいし、一緒にいて楽だなと感じます。

それだけじゃなくて、人って環境とか、あるいは話す相手によってキャラが変わりますよね。学校では真面目でも、恋人の前だと柔らかい雰囲気になったり。環境が変わるタイミングで、より自分らしくいようと思って「高校デビュー」「大学デビュー」する人のことを茶化す感じもすごく嫌です。

だって、人は常に更新されていくんですからキャラに固定したり、複雑性を排除するのってしんどいと思うんです。環境や話す相手で目まぐるしく変わる人間のことを、絵の具一色でベタ塗りされているんじゃなく、複雑な色で塗られているんだと思える人が優しいなぁと。

多様性って言葉も流行っていますけど、なんでしょう。多様ってよりも、もっと絡み合って説明がつかないような<複雑>がしっくりきます。僕、多様性とか共感って言葉が苦手なんです(笑)。

ひねくれてるだけなんですけど、「多様であれ」ってことを強要されている感じがすでに多様じゃないなって思ったり。共感しないと相手を好きになっちゃいけないのかなって思ったり。全然共感しないけど、めっちゃ良いと思う!ってことだってありますよね、きっと。

ちょっと抽象的な話になってしまいました。
道前さんにとって「優しい人」ってどんなイメージですか?聞いてみたいです。

工藤大貴(4月20日、芝浦より)

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工藤さん

こんにちは!
私の通っている高校は、5月いっぱいまでWeb授業になりました。普段の授業より楽なはずなのに、私も何だか最近疲れ気味です。単に慣れないことをやっているからなのか、いろんな行事や部活動ができないことへのストレスなのか…。
日常が奪われていることを実感することが増え、少しつらいです。

最近、いつもより家でぼーっとする時間が増えたことで、昔のことをいろいろ思い出します。あの時のこれまだ謝ってなかったなとか、あの時の自分結構ひどいことしちゃってたなとか、昔の自分を見つめ直す機会が増えました。

今度会えたら謝ろうとか今は思っても、多分日常が戻ってきたら忘れちゃって、覚えてても何だかタイミングが掴めなくて言えないんだろうな、と思います。私の悪いところです。

「多様性」という言葉についてそんな風に感じたことはなかったので、ハッとさせられました。確かに、人はみんな多様なものなんだ!といわれると違和感を感じる人もいるだろうな、と思います。

話は少し変わりますが、「多様性」という言葉ってよく人権の話とセットで使われますよね。去年、あるマイノリティに属する方の講演を聞くことがありました。

その方の当事者としての意見は、もちろん勉強になることばかりだったのですが、講演の中で、ある人が聞いたら傷つくだろうなと思うことを話されていたんですよね。

それを聞いたときに、ある分野で多様性を認めてほしいと主張する人も、別に人権のプロじゃないんだなって気づきました。

人権と一言でいったって、その種類はたぶん無限にあって、それらに対する正しい関わり方を網羅することはおそらく無理だと思います。でも、それら全ての根っこにある部分は同じだと思っていて、それが「優しさ」だと私は思います。

もし完璧な優しさを持った人がいたなら、その人は人権のプロなんでしょうが、きっとそんな人はいないと思います。ですが、少しでも完璧な優しさに近づけるよう、自分の優しさを磨いていきたいなあと思うんです。

じゃあ結局のところ優しさってなんやねん!と言われてしまうと、まだよくわからないんですが、工藤さんの考え方はすごくいいなあと思いました。いつか自分なりに答えが出せたら、またお話しさせてください。

道前結(4月25日、西宮より)

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