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問いと対話からお互いを知る。全国から集まった高校生80人が哲学対話に触れた記録。

※全国の高校生が森や海、川に暮らす名人に取材をする「聞き書き甲子園・夏の研修会」で行われたワークショップレポートです。(書き手:永田健一朗)

取材の方法を学ぶため、全国から集まった80人の高校生。まだ初めて顔を合わせてから3日目の夜。一気に打ち解けて仲良くなった子もいれば、まだ顔と名前が一致しない人もいる。そんな雰囲気の中、ワークショップは行われました。

その名も、「哲学対話

聞きなれない響きですが、「毎日のくらしの中にある正解のない疑問や不思議のタネについて、あーだこーだと考えを交換し、お互いが時間をかけて考えを深めることができる」というもの。

全国で大人から子どもまで、様々なプログラムを手がけているNPO法人こども哲学・おとな哲学 アーダコーダから代表理事の角田さんと理事の幡野さんという2名の講師をお招きして行いました。

高校生と学生スタッフは10人一組で輪っかをつくって座ります。まずは、日常の中で感じたり考えたりしたワクワク、もやもやを思い出しながら、みんなで考えたい、みんなで話したい問いを書きだします。

全員が書き終えると、その問いを一人ずつ発表していきます。少し照れくさそうに、でも楽しそうに話す高校生たち。共有したあとは、多数決や話し合いを通じて、グループ全員で話す問いを一つ選んでいきます。

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「自立とは何か?」「男女の友情は成立するのか?」「なんで勉強しないといけないのか?」「なぜ地球は地球というのか?」「幸せってなに?」「死とは?」「なぜパーマをかけてはいけないのか?」「空気を読むとはなにか?」「アニメ好きな人をどうしてヲタクと呼ぶのか?」「大人ってなんだ?」・・・と、床にはカラフルな問いが並んでいました。

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いざ対話を始めようといっても、なかなか自分の意見をすぐに言えない人もいたり、場や問いへの反応も人それぞれ。それでも、時間が経つにつれ、だんだんと高校生の表情も和らぎ、議論が活発になっていきました。

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(特に盛り上がっていたのは、「男女の友情は成立するか?」かなぁ笑)

意見のやり取りが続き、お互いの理解が得られないまま終わった班もあれば、「うんうんわかる!」と共感の声が上がっていた班もありました。

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哲学対話にゴールはありません。

でも不思議と、終わった後の高校生の顔はすっきり。いつもはこっぱずかしくてできない話を、堂々とできて楽しかったと言ってくれた人もいました。

「自分の考えていることや感じ方は相手のそれとはまるで違う」

それって当たり前のことだけど、普段の生活で、面と向かって、実感できるタイミングって意外と多くないように感じます。(SNSでは顔や名前も知らない人の色んな意見はよく目にするけれど。)

僕自身、普段は趣味嗜好の似通った人たちと一緒にいることが多いし、何かのトピックについて話す時も、否定的な意見よりも「それ分かる!」と共感や同調することを選びがちです。(だってその方が楽なんだもん)

しかし、「自分の中」も「相手の中」も実際見えるものではなくて、僕たちが思っている以上によくわからなくて、混沌としている。その混沌が完璧に重なりつながることなんてないのに、心のどこかでそれを期待してしまう自分がいる。

でも、お互いいくら違っても、たとえ分かり合えなかったとしても、相手の考えや意見、態度を「知る」ことはできる。そんな姿勢を持っていることで、生活がちょっとでも楽になるかもしれない。

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アーダコーダさん、かけがえのない体験をありがとうございました!

ありがとうございます。 列島ききがきノートの取材エリアは北海道から沖縄まで。聞きたい、伝えたい、残したいコトバはたくさんあります。各地での取材にかかる交通費、宿泊費などに使わせて頂きます。そして、またその足跡をnoteで書いていければ。