Inspiring Stories 7: 「幸福な食卓」
私はとても恵まれていると思う。
本に詳しい友達がいて、一冊読み終えると、また次のおすすめを薦めてくれる。
「これはほのぼの系で、ささくれた心にピッタリ」「読みやすい文体」等と推しポイントを端的に教えてくれる。それでいて私に選択の余地を残してくれる。
「じゃあトライしてみる!」と、すんなり薦められた一冊を手に取り、読み始ることになる。
一時期、東野圭吾さんの作品にハマっていて、シリーズものから短編まで、全ての作品を制覇すると意気込んでいたのに、ちょっとした出来事で落ち込んでいた私に、瀬尾まいこさんの「幸福な食卓」を薦めてくれた。
本って本当に不思議で、「人生を豊かにしてくれる」というのはまさに名言だと思う。もっと早くに素敵な本に出会うべきだったなぁ。
「幸福な食卓」は、「普通でない」家族のつながりを優しいタッチで描いている(抜粋はリンクで確認してください)。
「心に刺さる言葉・表現」が散りばめられいて、
登場人物の言葉や心情が、何気ないタッチで描かれているからこそ余計に、心に突き刺さる。
私の心に刺さったのは、2つ・・・
「翌日もまた朝はやってきた。本当に不思議だ。どんなにショッキングなことがあっても、日常はきちんと進んでいく・・・朝は普通にやってきた。」
朝は必ずやってくる、何事もなかったかのように普通に。
確かにその通りだと思う。とりわけ若い時のショッキングな経験は痛烈で、乗り越えるのに時間がかかる。
かなり前のことだが、身近な人を亡くし、火葬場へ向かう車の中で考えた。私と家族・親類以外の人にとって、今日という日は特別ではないんだ。この日が、どれだけ私たちにショックをもたらしていたとしても。
帰りの車の中でも、道行く人や車をボーっと見ながら、非常に大きな喪失感と虚無感を感じていた。葬儀後の様々な儀式を終え、疲れ果てた私は眠りについた。
朝はまたやって来た。心から拭い去ることができない悲しみなど知る由もなく、誰にでも平等に、夜は時を刻み、太陽を受け入れる。
その後何千もの朝を迎え、喪失感や虚無感とうまく付き合う術を学んできたが、「幸福な食卓」を読み、またあの強い感情が蘇り、涙を止めることができなかった。
もう一つは・・・
「すごいだろ?気が付かないところで中原(主人公佐和子)って色々守られているってこと」
誰かが自分のことを守ってくれていること、「種明かし」をされないと結構気がつかない。心から大切に思ってくれる人からの優しさ・愛情は、あまりに自然で、unconditional (見返りを求めない)なので、やり過ごしてしまっていることが多い。本当にこれでいいのだろうか?
最後に・・・
「英語オタク」の私は、冒頭部分を英訳してみた。
"Bittersweet Breakfasts"
"I am thinking… I will quit being your father as of today,"
my father said at the breakfast table, on the last day of my spring vacation.
I swallowed the tomato pushed into my mouth and said,
"Whaaat?"
Nao-chan, in a calm tone as usual, just said "Oh …"
この家族にとって重要な位置づけにある朝食・・・
酸いも甘いも様々な思いが告白される朝食は、「ほろ苦く」それでいて「愛情に溢れた」時間に違いない。家族揃ってとる朝食は、単なる"A Happy Dining Table" (直訳「幸福な食卓」)というより、Bittersweet な思いが積み重なる、お馴染みの Breakfasts であろう。
Thank you for reading this through…. Please have a great weekend.
See you in a bit.
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