Dance with me / キングサリ

Dance with meはキングサリの中で観客に一番人気の曲の一つです。作詞作曲を手掛けた西羅和貴の独特なスタイルは、一度聴けば彼の音楽を覚えてしまうほどです。彼の曲は他の作曲家に比べて、同じモチーフの反復を強調しており、類似したメロディーの繰り返しによって強烈な意念を伝えています。歌詞について言えば、Dance with meの歌詞は実際に理解し難い部分があります。

この曲の歌詞には内在的なテンションがあり、歌詞全体が「一緒に踊ろう」と強調しているにもかかわらず、不安や恐怖が暗示されています。歌詞の中で「終わらないモノなんてないの」とは、すべてのことがいずれ終わることを示しており、「君」と最終的には別れることを暗示しています。また、「明日を忘れてしまうくらい」という歌詞は、このダンスが明日には終わることを知っている自分の心情を表しています。

この曲は「踊り」について語っているようで、実際にはアイドルとファンの関係を比喩しています。この関係は「一緒に踊る」ことのようで、いずれ終わる運命にあります。西羅和貴は数年前にWill-O’のために書いたLast Danceでもこの関係を明確に描いており、Dance with meはLast Danceへの「オマージュ」とも言える作品です。メロディーや歌詞の両方がLast Danceを引き継いでいます。Last Danceの歌詞では、踊る理由が「君を忘れないために」と書かれており、「Last Dance」というタイトルが示すように、どんなに頑張っても最後には別れる運命にあることを表しています。最終的には踊った思い出しか残らないのです。

「Dance」がアイドルを表しているなら、「Last Dance」はアイドルの卒業を意味し、「Dance with me」はアイドルとファンの関係の日常を描いています。作者にとって、「アイドルはいずれ卒業する」という宿命は心に刻まれたテーマであり、「Dance with me」はその宿命に対する思いを伝えようとしています。歌詞の中での不安は、「いずれアイドルが卒業し、すべてが無に帰すなら、今アイドルでいる意味は何か」という疑問を呈しています。歌詞の中で

夢を見ているような気分
だけど確かに本物なんだ
終わらないモノなんてないの
だから大事に噛みしめるの

と述べているように、すべてが夢のように消えるとしても、「今」の感覚、「今」大事だと感じるものは本物であるため、未来を考える必要はなく、「今」踊ろうというメッセージを伝えています。

一人じゃ何もできない弱虫だけど
一人じゃないよ君がいればどこまでだって行ける

という部分は、関係が終わることへの恐怖を描写しています。この前の歌詞は単に不安を示唆しているだけでしたが、この部分で全ての感情が噴出します:卒業の日が来ることへの恐れ、ファンとの関係が終わることへの恐れ、一人きりになることへの恐れ。これらすべての根底にあるのは「死」への恐れです。人はいつか死ぬ、アイドルもいつかは卒業し、もしかしたら明日にはアイドルとファンの関係が無に帰すかもしれません。しかし、それでも私たちは「今」を生きています。歌詞は「Don't look backありのままの私で」から「Don't look backありのままの私たちで」へと変化し、今「私たち」が一緒に生きていることを表しています。

サビでは、一見すると些細なことが書かれています。「君」は自分の踊りがうまくないことを恐れて踊りたがらないため、「先生は才能なんて気にしちゃいけないって言わなかったの?」と勧めています。しかし、作者はこの小さな恐れを通じて、自分が生きる中で感じるさまざまな恐れを引き出しています。恐怖に縛られると人は自分らしくいられなくなり、「踊る」ことができなくなります。歌詞の最後には

Can you feel it? 絶対に後悔はしたくない
無我夢中で前を見て笑う
Don't look backありのままの私たちで

と書かれています。彼は聴衆に、「縛られたくない」って感じているかどうかを問いかけ、すべての恐れ、不安、心配を脇に置き、「君」と一緒に「生きたい」という気持ちを伝えています。「無我夢中で」は二重の意味を持ち、私たちが一緒に踊る感覚に没頭し自分を忘れることを表し、同時にこれは夢であっても心の「本物」であることを意味しています。最後の「Don't look back」は、自分の心の奥深くにある恐れを捨て去り、Dance with me、キングサリと共に「生きる」ことを象徴しています。

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