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ソウルの旅が全然楽しくなかった


2023年8月にソウルへ行った。
旅行というより乗り継ぎを利用したトランジットステイだ。

筆者は映画ファンの端くれとして、韓国映画のみならず韓国ドラマにも随分楽しませてもらっている。
むしろ良すぎて、我が国のエンターテイメントの将来を憂うほどだ。

それら映像作品の中でソウルの風景や地名は溢れているし、マレーシア国内でも韓国料理は人気なので、いつしかソウルは親しみやすく好感度の高い同級生的存在になっていた。
また筆者の周りの韓国フリークから、異口同音に賛辞を聞いていたのもある。

そのため、30数年ぶりに訪れるソウルへの期待値はMaxだったのだ。

空港から市内へ行く途中に漢江を見た時は、グエムルを思い出した。
ソウルの街中で見かけた長い坂道階段は、パラサイトを想起させホンジュノ監督は今ソウルにいるのだろうかと思ったし、ソウルタワーはもちろん梨泰院クラスの歩道橋シーンがよみがえった。
それだけでなく、世界的なK POPのスーパースターたちがここにいる。
そう思うと、画面越しの遠い存在だったものが、ほんの少し身近に感じられた。気分が上がった。

問題はそれからだった。

ハイティーンの娘と一緒だったのもあり、まる1日の滞在時間は流行りの韓国安カワショッピング&おしゃれカフェに狙いを定めた。
暑すぎたので、名所旧跡への訪問はやめた。

南大門市場、東大門市場、仁寺洞、弘大、明洞、ロッテ百貨店など主要戦場はコンプリート。
どこも、化粧品と雑貨の繰り返しでラインナップも似ている。

安いとの触れ込みだが、割安感はない。
カフェは、インスタとの違いに店頭で立ちすくんだ。
お茶碗サイズのかき氷が、1200円なのはさすがに高杉でしょ。

友人に勧められたタッカンマリは、乱暴にいうと鶏肉を水で煮ただけ。
タレの味だけしか感じられないのは、筆者の味覚のせいなのか。

何かおかしい…。こんな筈じゃないはず。
ここで、ある疑念がよぎる。

筆者の周りの韓国礼賛派は全てKpopのスターに夢中だ。
ソウルでは、彼らのイベント参加に聖地巡礼がメイン。

もしかして….

推しがないとソウルは楽しめないのでは?、という仮定が浮かんだ。

光を観ると書いて、観光。
スターが放つ光の反射で輝くのが、ソウルという街なのではないだろうか。
スターたちの足跡や息遣いを感じられて、同じ二次元にいることで彼らと身体的な近さを感じることのできるのが彼らの祖国、韓国。

韓国ファンは、彼らの推しが、その角に、あの店に、さっきの通りにいるイメージと共にソウルを観光しているのではないだろうか。
だからこそ、世界中でソウルは唯一無二の都市であり、ソウルで見るもの食べるものが特別に輝くのではないだろうか。

一方、韓国スターの光を感じることができない筆者のようなタイプは、この国で光を観ることはできないのかも知れない。

その日の夜、明洞の焼肉店でサムギョプサルを食べた。
KLの韓国焼肉店の方が断然美味しいと思った時、私の疑念は確信に変わった。

推しがないと楽しめないのがソウルだ、と。

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