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火の鳥ジャパンW杯ロシア戦、韓国戦を振り返る

今回は全日本女子のW杯2戦目と3戦目のロシア戦と韓国戦を振り返ります

1速さに拘り高さが出せない

中田久美監督が日本代表の監督に就任した時「速いバレーを追求していく」との旨の発言をされました
事実日本女子のバレーはどんどん高速化してきたと思われます

一方で速い攻撃が必ずしも良い攻撃かと言われたら答えはノーです
理由をいくつかあげましょう
①トスの精度の問題
②助走に入るタイミングが早くなるため、レシーブに参加したスパイカーの攻撃参加が困難になる
③空中でのスパイカーの余裕がないためコースの打ち分けが困難

一つ一つ解説していきます
まず①ですが速いトスというのはセッターはネットと平行に近い低く速い軌道で提供されることが多くスパイカーの打点が殺されがちです
まあ、速いトスはトスの再現性を保つのが困難で伸び切らず短くなったりしてスパイカーのコース選択の選択肢を奪ってしまいます

また、研究の結果としてトスの速さはブロックの枚数には殆ど影響がない事も分かってます
ブロック枚数は同じテンポの攻撃参加が何枚どのスロットで行われるかによって決まります

そのため、低く速いトスというのはブロックに捕まりやすいトスなのです

事実ロシア戦の1セット目などは顕著にスパイカーが打って返せずプッシュやフェイントにしたりブロックに捕まったりした場面が多かったです

②ですが速いトスと言うのは

打つタイミングが早いので当然スパイカーは通常より助走を始めるタイミングを早めないといけません

そうなるとサーブレシーブを返したスパイカーが助走に入って打つと言うことが困難になり攻撃枚数を減らす羽目になります

そのため、通常よりブロックが付きやすくなるのです

③は一流のスパイカーはブロックを見てコース選択をし、ブロックを避ける、ブロックに当ててアウトにするなどをします
特にブロックの高いチームが相手になるとこのコース選択は命取りになります
石川選手がロシア戦で活躍できた大きな要因の一つになると思われます

しかし、速いトスはそうしたら空中での余裕をスパイカーに与えません

そのため、ブロックに捕まる回数が増えます

日本のスパイカー陣は非常に優秀で石川のようにブロックを見て冷静に決めれる強さを持っています

彼らの持ち味を最大限に活かせば世界と十分に戦えると思いますし世界で戦うためにはそうするべきかと思われます

漫画の話ですが速く強い攻撃として挙げられるのがハイキューの烏野高校の変人速攻ですが変人速攻はあくまでも影山の神業の精度のトスが日向の打点を最大限に活かしつつコース選択に幅をしっかり与えてるから強力なのです

影山のような物凄い精度のトスをあげられるセッターがいれば話は多少変わってきますが現実にはいませんからね笑笑

2二段トスが雑過ぎる

二段トスとはレシーブが乱れた状態からあげられるトスでセッター以外の選手があげることも多いです(大抵はリベロがあげる)

今回の日本代表はこの二段トスの精度がかなり低かったです
特にネットに近いトスが多くまともに打って返せないことも多々ありました

例外的に石川選手への二段トスはそれなりに良かったです
多分石川選手が要望を伝えてる

二段トスが雑になった理由としてまず上げられるのがアンダーで上げている点です

アンダーはオーバーに比べてボールの位置のコントロールが難しく精度がとても重要なトスには基本的に不向きです

またアンダーはレシーブ面を上げる方向にすぐに向けるのでオーバーと違ってどこに上げるかがすぐに分かります
(オーバーはギリギリまで分からない)

ブロック枚数は攻撃枚数によって決まりますからアンダーで一択に絞られるのとオーバーで引きつけられるのではブロックの枚数が変わってきます

事実韓国戦では韓国のオーバーでの二段トスにブロックが2枚しっかり揃えない場面がありました

そのため、日本代表は今後オーバーで丁寧に二段トスを上げることが大切だと思われます

3新星石川真佑

ネガティブなことばかり書いたのでお口直しとばかりにポジティブな話です
この二戦やはり一番目だったのは石川選手でしょう
石川選手は男子日本代表のエース石川祐希選手の妹です
身長は172とアタッカーとしては小柄ながら高いジャンプ力とコース選択と打ち分けの技術の高さが武器の選手です

石川選手のようなジャンプ力のある選手は

通常のタイミングでブロックに飛ぶとブロックが落ち始める時にスパイクを打たれるためブロックが弾かれやすいです

また、打つまでにブロックを見れる時間も長くコース選択に余裕があります

コースの打ち分けの技術も流石でした

特にブロックの二枚のインナーを突くスパイクは秀逸でこれで決める場面が多かったように思われます

ストレート方向へのスパイクの精度が上がってそっちにも打てるようになるともっと厄介なスパイカーになると思います

またディグも非常に良く石川選手のディグからの切り返しでブレイクした場面も多かったです

サーブに関してはミスが多かったですがしっかりコートの奥を狙い韓国戦の土壇場の場面ではそれまでずっと奥を狙っていたのに前に落とすなどのクレバーさも見せました

ただまだまだ伸び代は大きく今後は強くヒットし尚且つもう少し入る確率を高められれば日本の大きな連続得点源になるでしょう

また、忘れがちですが石川選手を活かすための周りの配慮も良く石川選手への二段トスは他の選手と比べてネットから遠く高くそのため、石川選手は余裕を持って持ち味を発揮出来たと思います(他の選手へのトスもこんな感じにしてくれれば良いんですけどね)

4ブロックがミドルに引っかかりすぎ

現代バレーではトスを見てからブロックに飛ぶリードブロックが主流であり現代バレーの多彩かつ強力な攻撃への対策としては最も有効なブロック戦術です

ロシアなどはここら辺の徹底度が凄く殆どブロッグか振られませんでした

一方で日本はと言うとミドルにブロッカーが釣られてサイドを一枚にしたりとまだまだ徹底できてませんでした

特に韓国戦は韓国がミドルがとても少ないチームで試合でもミドルの攻撃は殆どなかったのに関わらずミドルに引っかかりまくるなど中々酷かったです

良い点を挙げるとすると

ミドルに引っかかった後2度飛びするときに芥川選手の手の出し方が良かったことぐらいでしょうか

掌だけ出していたのでスパイカーが空いてると思い打ちおろすコースに急に手のひらが現れるのでシャットしたりワンタッチが取りやすかったです

5サーブレシーブが低い

日本とロシア、韓国との差で大きかったのがサーブレシーブです
ロシア、韓国は出来るだけアンダーで取り高く返球することでセッターが球に入り込む余裕とスパイカーが助走に入る余裕を確保していました

一方日本はサーブレシーブが低くそうした余裕がなかったです
そのためバタバタした攻撃が多かったです

6Aパスに拘るな!!

終盤の競り合いで2試合とも多かったのがサーブレシーブがネットを超えてダイレクトで叩かれる場面です

Aパスとはセッターのほぼ定位置付近に返るパスのことです
ですがセッターは基本的にネット付近に位置取るためAパスを狙うとネットを超えてしまうリスクがあります

終盤は特にAパスへの意識が高くなりがちなため先ほど述べたようなプレーが多かったです

対策としてはBパスでもミドルが使えるようにしてアタックライン付近に高い返球をするようにすることでしょう

ちなみにこれは世界標準です

7単調な攻撃

この2試合はレフトの打数が非常に多い試合でした

特に乱れた時は顕著で石井、石川に頼りぱなしでした

逆にライト方向からの攻撃は少なく終盤石井、石川にマークが集中していった大きな要因でした

乱れた時に後衛のライトからのバックアタックを使っていけるようになるかは一つの課題になるでしょう
この点は怪我で代表を外れた長岡選手が戻ってくることで多少改善しそうですけど

またそもそも攻撃参加すらしない時も多々ありました

しっかり攻撃参加してトスを散らすと言うのが今後の課題でしょう

今回は石井、石川が良かったため試合になりましたが今後彼女らがマークがきつくなったりして思うように決まらなくなった時何も出来なくなります

8ブロックフォローの陣形

これはとても酷かったです

スパイカーのすぐ周囲に全員が固まっていました

そのため、リバウンドで少し大きく弾いたボールが拾えずシャットになったりリバウンドを取った後の切り返しの攻撃参加が出来ずレフトの選手が延々と打ち続けるみたいな場面が多々ありました

ここに関しては簡単に見直せるので早急に見直すべきでしょう
長いラリーが中々取れなかった大きな要因でもあると思います

9 S1ローテーション

S1ローテーションとはセッターが一番ポジション(後衛ライト)にいる時です

この局面では

①セッターの動く距離が長いためレシーブが困難

②スパイカーが打つ位置がレフトの選手がライトからライトの選手がレフトから打つようになる

といった風に非常に難しい場面でここをどう乗り切るかは各チームにとって大きな課題です

今回の日本代表はライトの新鍋選手が元々はレフトの選手なのでそこまで問題視してなかったですが意外と決めきれずこのローテーションで連続得点を取られた場面が多かったです

ここをどう切るかはとても今後重要でしょう

韓国なんからポジショナルフォルトを取られること覚悟でサーバーが打つより早めに動き出してレフトとライトがスイッチし普段通りで打つようにしていました

最近はこういったチームも多いように思われます

10最後に

接戦に持ち込んだと言えば聞こえはいいですが両チーム共本来なら勝てる相手ですし韓国なんてアンダーカテゴリーでも勝てたチームです
そのチームに対して負けたのは勝てる試合を落としたと言う表現が正しかったように思えます

今の日本代表は身長だけ見てると分からないでしょうけど個人の力量はとても高く優勝も狙えるレベルの力があります

彼らの力を最大限に活かすためにもしっかりとした、コンセプトを形成することが大切になります

#バレーボール #バレー #火の鳥日本 #日本代表
#石川真佑





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