デザインとは何か?(1)

ここ数か月、ふとした折々に「デザインとは何か?」ということを考えていたところ、同様のテーマの記事に立て続けに接触して、割と整理ができてきた。
自分の中で腑に落ちた考え方も持てたので、このあたりでnoteにまとめてみようと思う。


デザインとスタイリング

デザインに関してよくある誤解として「スタイリングのことをデザインだと思っている」というものがある。

これについて、建築家 / デザイナー / コピーライターの各務太郎さんは次のように語っている。

「デザイン」という言葉を国語事典で調べると、三つの意味が書いています。一番目が「意匠」、二番目が「図案を考案すること」、三番目が「設計」です。実はここが留学中に一番驚いたことなのですが、欧米では一番目と二番目のことをデザインとは言わず、明確に「スタイリング」と言います。三番目の「設計」をするのがデザイナーで、「あとはおしゃれに仕上げておいてね」の領域を担当するのがスタイリストです。
両者の違いははっきりしていて、スタイリングをする人は美大をでる必要がありますが、デザイナーにはその必要はありません。なぜなら問題の指摘さえできればいいからです。


また、デザインエンジニアの山中俊治さんは、こう語る。

例えば、皆さんがデザインと聞いて最初にイメージするのは、「形や模様」ではないでしょうか。日常生活の中でよく、「そのジーンズのデザイン、格好良いね」などの会話をしているはずです。
この一文を「デザイン」という言葉を使わずに表現すると、「そのジーンズの“形”、格好良いね」と置き換えられますよね。
日本ではこうしたスタイリングを表す意味で、「デザイン」という言葉が日常的に使われています。
しかし、デザインの本質は、「形」ではなく「設計」です。


デザインと混同されがちな「意匠(見た目)を作ること」はスタイリングであり、デザインとは「設計すること」なのだ。


では、何を設計するのか。
上記の記事で、山中さんは次のように続けている。

単なるスタイリングではなく、その背景にある機能や技術を理解した上で、見た目を調整することが、本当の意味でのデザインなのです。

ん?
デザインとは、結局「見た目」を設計することなのだろうか?


デザインの対象から考える「デザインの定義」

世の中には「◯◯デザイン」という言葉がたくさんある。

それらの中には「フラットデザイン」や「マテリアルデザイン」のようにデザインの手法を表すものもあるが、大抵はデザインの対象となるジャンルを表している。

「グラフィックデザイン」は2次元的なビジュアルをデザインすることであり、「プロダクトデザイン」は家電製品や自動車といった3次元的なプロダクトをデザインすることである。
これらには見た目が伴う。

見た目を伴わないデザインはないものか、と考えると、割とすぐ見つかる。
たとえば「サウンドデザイン」。映像や舞台において、BGMや効果音などの音響を設計することだ。これは視覚的なデザインではなく、聴覚的なデザインである。

視覚や聴覚のデザインがあるなら、嗅覚や味覚や触覚のデザインもあってしかるべきだろう。
実際、アロマセラピストは嗅覚的デザインを、料理人は味覚的デザインをしていると言える。またプロダクトデザイナーは、プロダクトの表面の素材を決める際、触覚的デザインをおこなっている。

このように考えると、人間が認知可能なものであれば、デザインの対象となることがわかる。

一般的に有名なデザイナーにはグラフィックデザイナーやプロダクトデザイナーが多いから、「デザイン=見た目を作ること」という誤解が生まれやすいのかもしれない。

「見る」「聞く」「読む」「触れる」「味わう」といった体験や、それらが複合された「使う」「暮らす」といった体験を総称して認知的体験と呼ぶとすると、デザインとは「認知的体験を設計すること」と定義できるのではないだろうか。

最後まで読んでいただきありがとうございます。 この記事が何かのお役に立てば幸いです。