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夜は魔物が住んでるから

「夜は魔物が住んでるから早く寝るんだよ、夜更かししてると魔物に食われるからって昔教えてくれた友人。今なら意味がすごくわかる。」

この言葉は僕が見ていたSNSでたまたま見かけた投稿である。ほんとにただ平凡な投稿だった。
ただ、なにか小説の一節のようなそんな感じがして思わずスクリーンショットをして保存をしておいた。
ほんとによく出来た文章である。

現にそんな僕も夜の魔物に襲われる時がある。
過去の過ちがフラッシュバックし、どうしようもない後悔と何も出来ない自分にやるせなくなる。
「あの時ああしてればよかった。」「もっと人の意見を素直に聞いておけばよかった。」「焦る必要なんてなかった。」と、そう思っても過去は変わらないのに、そんな事ばかり浮かんできてしまう。
そういってうずくまり、夜から逃げるようにiPadで睡眠用動画を流し、それに縋るように音に集中し、目を瞑り、眠りにつく。

そして朝になる。

夜の魔物は朝には襲ってこない。ただ、何故か僕はあの夜の時間が好きなのだ。
人間の性か、朝は始まりを意味し、夜は終わりを意味する。
夜が始まりと言う人は大抵夜勤や生活リズムが逆転した人である。
そして人は終わりを好きになる傾向がある。
卒業式でも映画のエンドロールでも、楽しかった友人との別れ際でも。
終わりというのは時に寂しさと、安心感を与えてくれる。別れを惜しむというのはこの2つの感情がごちゃ混ぜになった状態のことを言うと思う。
寂しさとは今までの記憶を同じように味わえないという喪失感。安心感とは今まで積み重ねてきた思い出や自己の成長である。
あの時は良かった、と思えることが別れの醍醐味であり、惜しむということである。
どうにも人はこの感覚がたまらなく好きらしい。

そして、夜にはこの性質を持っているように思える。
その上それが永遠に続くような感覚さえ感じる。終わりが永遠に続くのが夜なのだ。
終わりを迎えるとどうしても1人で思いにふけたり、過去を見返してしまう。
夜とはそういう時間であり、僕が夜を好きな理由でもある。
それが良くも悪くも自分の心にゆっくりと馴染んでいく。蝕んでいく。


そうやって、魔物に食われていく。



「後悔しても意味が無いから、前を向いていこう」と誰かが言った。
本当にそうなのか。今の自分は後悔というより、昔の自分をどう許すかにシフトチェンジしている。でもそれが出来ないから何回も思い出してしまうのだ。

自分を許せるような日が来るのか。未来なんて誰にも分からないから、今の自分が好きな方を選ぶ。
未来がどうなるかは分からないけど、どれが正解の未来かは分かる気がする。


その時にはきっと、夜の魔物は消える気がする。



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