オリジナル怪談5選

「しょ〜こ」

昔、田舎のじいちゃんが
よく、しょ〜こには気をつけろ!と言っていた。
まだ子供だった僕は
近所の怖いおばちゃんかな?なんて思っていた。

そう、あの体験をするまでは…


じいちゃんが亡くなって数年が経ち
僕は高校生になった。

じいちゃんの居た田舎の方には
今でも時々お墓参りに行く。

少し山奥にあるのでいつもは家族と行くんだけど
もう高校生だし、自分だけで行ってみよう。
ということで一人で行くことにした。

バスを乗り継ぎ、
なんとか無事に到着。

お墓参りをして
田舎のばあちゃんに顔を見せに行った。
「よく来たね〜!」なんて言われながら
楽しいひとときを過ごした。

日が暮れてきたので
「そろそろ帰るよ!」と言い
ばあちゃんの家を出た。

途中まで送ってもらったけど、
残りのバス停までの山道は
ばあちゃんも帰りが危ないからと思って
「ここからは一人で行くよ、ありがとう!また来るね」
とばあちゃんと分かれた。


時間も時間なので
だんだん日も落ちてきて
思ったより暗くなってきて
怖くなってきた。

そんなことを思いながら歩いていると
急に遠くの方から女性と思われる
笑い声が聞こえてきた。

一瞬ビクッとしたけど
人がいるのかな?という
変な安心感も入り混じり、
不思議な感覚になった。

その方向を確認しても、
誰もいないし、灯りもない。


その不気味さに耐えられず
小走りでバス停に向かうんだけど
なんかおかしい。

さっきから走っても走っても
音は遠くならないし
バス停にも着かない。

すると突然、ピタッと音が止み
その瞬間に耳元で女性の声が聞こえた。

「〜」

雪が降ってきた。
まだ11月だし、この辺りは
そんなに雪の降る地域でもない。

雪はどんどん激しくなり
それと同時に地面に
叩きつけられるような勢いで
バタンッと倒れた。

体が動かない…
金縛りかな…寒い…

うぅ…苦しい…

意識が朦朧として
今にも気を失いそうな
僕の目に飛び込んできたのは
真っ白な女の人だ。

「ソノココロヲヨコセ」

ものすごい力で
心臓の辺りに手を押し付けてくる。
まるで心臓を取り出そうとしてるような感じで
グリグリと指で引っ掻いて来る。

痛い…痛い…!
声にならない声を必死に出そうとするが
どんどん苦しくなり
そのまま気を失ってしまった。


気がついた時には
ばあちゃんの家にいた。

胸が張り裂けそうに痛い。
見ると、引っ掻き傷だらけ。

ばあちゃんは
「こりゃしょ〜この仕業だな。しばらく大人しくしてた方がいい。」
と言った。


「しょ〜こって?」

「しょ〜こはこの地に古くから居る雪女だよ。心臓を取られなくて本当によかった。」


僕が出会った
しょ〜こというのは
男の人の心臓、つまり心を奪う妖怪のような存在らしい。

昔から、神隠し事件がよく起こる地域で
その原因ではないか。とも言われているそうだ。


そういえば、亡くなったじいちゃんも
胸の辺りに大きな傷跡があったことを思い出した。

それ以来、夜の山道は怖くて歩いていない。

僕の胸にも
じいちゃんと同じような傷跡が今でも残っている。

 「じいじのお守り」

これは僕が小学生だった頃の話です。
僕はおじいちゃん子で
毎週日曜は必ず公園に遊びに行ったり
2人で近所の銭湯に行ったりしていました。

そんなおじいちゃんが亡くなったのは
僕が中学に上がるほんの数ヶ月前。

僕の中学の制服姿を
誰よりも楽しみにしていたので
本当に残念で、辛くて悲しかったです。

ショックで何日か学校を休んでしまいましたが
なんとか気持ちを切り替えて卒業まで通いました。


4月になり、
中学校での入学式を無事に終え、
家に帰ると
おばあちゃんが
「じいじがお守りを作ってくれたんだよ。中学生になったら渡してくれって頼まれてたんだ。おめでとう。」
と言い、小さなお守りを渡してくれました。


手にした瞬間
嬉しくて、温かくて
今まで堪えていた涙が一気に溢れて出ました。

「じいじ…ありがとう…」


それからは毎日、そのお守りを肌身離さず
持ち歩いていました。

すると、そのおかげなのかなと思う
出来事が頻繁に起きるようになりました。

入学当初、
ヤンチャな子たちに目をつけられて
いじめの標的になりそうになったことが
ありました。

因縁をつけられて
トイレに連れ込まれ
追い詰められたと思ったその瞬間、
窓からハチが飛んできて
いじめっ子たちを一斉に襲い始めたのです。

これだけだと単なる偶然に思えますが、
道を歩いてるとき、
腕を強く引っ張られる感覚がしたと思ったら
目の前で車が事故を起こしたり

夏に、住んでいる地域に
台風が直撃した時には
周りの家は
屋根が剥がれたり、窓が割れたりで
大騒ぎだったのに、
何故か僕の家だけが無傷だったり

誰かが守ってくれたとしか思えない
出来事が本当によく起こります。


もしかしたら全部が
偶然なのかもしれません。
けれども
このお守りが僕の支えに
なっていることは確かで、
今でも僕は
おじいちゃんが守ってくれていると
信じています。


もうすぐ僕は社会人になりますが
おじいちゃんのお守りは今でも肌身離さず
持ち歩いています。

冥婚

これは私が勤めている老人ホームで
あるお爺さんから聞いた戦後間もない頃の話です。
日本にはその昔、死者と結婚をする冥婚という風習があり
そのお爺さんの住んでいた地域では公にはされていないものの、陰では頻繁に行われていたそうです。

通常は、愛し合っていた2人が死別した際に行われていたのですが
ごく稀に、生涯独り身だった故人を思うが故に
その家族が赤の他人と無理やり結びつけたり
故人に片思いをしていた人が
故人の家族に無断で婚姻の手続きをしたりする
強制冥婚 というものがあったようで
当然、そのような行為はご法度とされていました。

その理由は倫理的な観点はもちろんのこと、それを行うとその数日以内に不可解な事件が多発するのだと言います。
ある時は町の子どもが神隠しに遭ったり
ある時は何頭もの家畜が原因不明の死を遂げたりするのだそうです。

そんなこともあってか、いつしか冥婚という風習自体が消えつつありました。
しかし、その矢先に恐ろしい事件が起こったのです。

その事件は冥婚という言葉を知らない若者がぽつぽつと現れ始めた、ある冬の出来事。

お爺さんは毎晩、決まった時間に散歩に出かけていたのですがその日はたまたま用事で遅くなり
夜中の12時も近かったと言います。
戦後間もないため、街灯なんかもあまりなく辺りは真っ暗なのですが、少し先の木々が生い茂ったところに弱い光が見えたのです。
なんだ?と思い、近づいてみると
ひとりの女性が巾着袋のようなものを抱きしめ
声を殺して泣いていました。

真っ暗闇でのその異様な光景に一瞬びっくりしましたが、女性がこんなところにいては危険だと思い、声をかけようとしたら
突然、とんでもない声で泣きわめき、走ってこちらへ向かって走って来たのです。

もうなにがなんだか訳がわからなくなり、急いで逃げて帰ったそうです。

翌日、その女性は遺体で見つかりました。
地元の警察によると
女性の薬指には指輪がしてあり、その手には巾着袋に入った骨壺が握られていて、
骨壺の中にはその女性とおぼしき顔写真、
そして女性がつけているものと同じ指輪が入れられていたそうです。

お爺さんは昨晩見たことを話すと
警察は一瞬顔を強張らせて言いました。

「鑑定の結果、亡くなってから少なくとも3日は経っているんです。」


後から聞いた話によると
例の骨壺は最近亡くなった近くの男性の物で
盗み出して、指輪を入れていたのだそうです。
ただ、生前に交際をしていたわけではなく面識はあったものの、親しい関係ではなかったようで
このことから町では
強制冥婚の呪いではないか
と噂になり、今でも時折語られる有名なお話となっているそうです。


「おしり」

中学の頃、学校内に「おしり」と言う
お化けがいるらしい
と、一部で噂になっていたことがあった。

友達はみんな
学校の怪談だ!七不思議だ!って
楽しんでいたけど

僕は中学1年のとき、
その「おしり」に
実際に遭遇していたかもしれないのです。

入学して間もない頃の話。

元々、僕はよくお腹を下す体質で
よく授業中にトイレに行ってました。

その日もいつものように
授業の後半に差し掛かったぐらいで
お腹が痛くなり、
先生に許可を得てトイレに向かいました。

トイレに到着して個室に入ろうとすると
珍しく全部閉まっていました。
「こんなときに…」と思いながらも
仕方なく待ちました。

しかし10分、15分と待っても
一向に誰も出てきません。
これだけ待ってるんだから
ひとつぐらい開いてもいいはずです。

すると、突然
カチャン…ギーッと
鍵が開きドアが開きました。

「え…?」
びっくりして腰が抜けそうでした。

なぜか、
だれも出てこないのです。

その時点で、とてつもなく怖かったのですが
変な刺激を与えたせいか、
腹痛は余計に酷くなり
どうにもこのまま教室に帰れそうにありません。

どうしようもないので
恐る恐る個室に向かいます。

中を確認すると
誰もおらず、
特に変わったところはありませんでした。

ちょっと安心はしましたが、
さっきのがなんだったのか気になって
気が気ではない状態です。

とりあえず、限界だったので
用を足して
個室から出ようとすると

…開きません。

鍵は間違いなく
開けてます。

しかし、
どれだけガチャガチャしても押しても
全く動かないのです。

とうとう恐怖と不安に耐えきれず
泣いてしまいました。

すると、突然
「顔をよこせ」と
低い声が耳元に聞こえてきました。

僕は腰が抜けてしまいました。

そのまま倒れ込み、ふと上を見ると、
天井から顔面が真っ二つに割れた男が
覗き込んでいました。

「顔をよこせ」
.


.
そこで意識が飛んだようで、
次に気がついたときには
個室は開けられ、先生たちが心配そうに僕を見ていました。

「起きろ!起きろ!大丈夫か!」

先生たちは
僕があまりに遅いので見に来てくれたのだそうです。

僕は個室のドアを開けたまま、
中で倒れていたようで、
念のため、病院に行くことになりました。

後日、昔からいる
おじいちゃんの先生に
その日あったことを話すと
「それはひょっとしたら“おしり”かもしれない。正体は先生にも分からないが人の顔を傷つけることに執着していて、今までに何人も生徒が顔に傷をつけられているのを見たよ。君は無傷なようで本当によかった。運が良かったよ。」


“おしり”というのは
顔が真っ二つに割れていて
トイレに現れるという所から来ている
あだ名のようなもので、
学校の怪談的に広まったそうだけど
実際に遭遇した僕からすれば
そんなに可愛いものじゃない。

今でも、同級生は
“おしり”をネタにはしゃいでいるけど
僕はあの顔を思い出すだけで
震えてしまう。


「顔をよこせ」

「犬が鳴く時間」


僕の家の庭には飼って10年になる犬がいる。
その犬が最近、妙に夜中に吠える。
最初は気にならなかったのだけれど
本当によく吠えるものだから
ついこの間、怒鳴りつけてしまった。

それからしばらくは静かになった。

でもまた数日経つと
夜中に吠えるようになった。
ただ、少し前とは違うような感じで
吠えるというより威嚇をして
たまに噛みつくような威圧的な声を上げていた。

さすがにおかしいと思い、
一晩、起きて様子を見ることにした。
するといつものように吠え出した。
こっそり覗くと、
見知らぬが人影が見えた。
僕は思わず
「誰だ!」と叫び、
庭に飛び出した。
しかし、その人影はどこにも
居なかった。

犬も吠えるのをやめた。

間違いなくうちの犬は
アイツに吠えている。

咄嗟に叫んだことで
一気に疲れた僕は、
その日は寝ることにした。
時間は夜中の2時過ぎだった。

次の日、早めに寝る準備をし、
少し仮眠を取って
夜中に現れる妙な人影を待つ。

1時50分頃、
犬が吠え始めた。

が、今度はなにかおかしい

キャインキャインと
弱っているような声を上げている。
急いで庭に出て、犬のもとへ向かうと
そこには信じられない光景があった。

庭に、巨大なクレーターのような
穴があき、犬がそこに倒れていた。
幸い、意識はあったのだけれど
かなり弱った声を上げていた。

これはただ事ではないと思い、
家族を叩き起こして
みんなで動物病院に連れてった。

病院の先生によると
足を怪我していただけで
命に別状はないとのことだった。

本当によかったと胸を撫で下ろした。

しかし、こう大ごとになられては
家族に本当のことを話すしかない。

「実は夜中に、人影を見て…」と
あったことをそのまま話した。

最初は信じてもらえなかったが
僕の焦り具合を見てようやく信じてもらえた。

次の日、犬は家の中に入れて
家族総出で庭を見張る。

いつもの時間
1時50分頃になった

…なにも起きない。

10分、20分と待つも、なにも現れることはなかった。

疲れ切った家族が寝ようとしたそのとき

それは現れた。

ガサゴソと庭を歩く音が聞こえ、
見ると、人影が4.5人分はあった。

顔を見ようにも、
それはまさしく影のような存在で
全てが真っ黒だった。

しばらく見て、
出て行くタイミングを待っていると
突然、何かの作業を終えたように
あちらへこちらへと
散らばって消えて行った。


翌朝、庭には、
前述のような
大きな穴が出来ていた。

夜中にその人影を見ていたとき、
そんな大きな穴をあけるような
衝撃は感じられなかった。


それ以来、犬は家の中で飼うことになり
吠えることもなくなった。

庭に大きな穴が出来たのも
その2回だけで
人影らしきものを見ることもなくなった。

結局、あれがなんだったのかは
わからないままです。


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