#003 日本人にだけ読めないタトゥー ( Dominic Fike / Dancing In The Courthouse )
やっほ。キイテミです。
「これ、聴いてみ?」のノリでおすすめの音楽を紹介します。
きょう紹介するのは、日本人にだけ読めないタトゥーをもつアーティスト、ドミニク・ファイクの『ダンシング・イン・ザ・コートハウス』です。
日本人にだけ読めないタトゥーとは
ドミニク・ファイク。
あるときはシンガーソングライター、またあるときは俳優として、マルチな才能を発揮しているアメリカ・フロリダ出身のアーティストです。
音楽的な才能はもちろんのこと、彼が身にまとっている退廃的な雰囲気と端正な顔立ちは世界中のファンを魅了しています。
そして、ドミニクといえば顔面のタトゥー。
右目の下に「アップル社のロゴ」を。そして、ひたいに「LBE」というアルファベット3文字を入れています。
日本人にだけ読めないのはこの「LBE」のほう。
「Lame Boys Entertainment」というドミニクが以前所属していたラッパーグループの名前らしいのですが、これがどうみても「レ乃モ」なんです。
エレクトロハーモニクスという日本語をアレンジしたアルファベット用フォントで、海外では人気みたいですね。たしかにデザインとして見たらオシャレなんですが、どうにも気になってしまいます。
と、それは置いておくとして、きょう紹介したい『ダンシング・イン・ザ・コートハウス』の意味を理解するには、彼の生い立ちを少しだけ知る必要があります。
少しだけお付き合いください。
ドミニクの生い立ち
ドミニクはフロリダで生まれ、シングルマザーの母親に育てられました。母親は何度も逮捕されていて、そのたびにドミニクは兄弟と支えあって生活をしなければなりませんでした。
ドミニクは10歳のときにギターを始め、そこから楽曲の制作をするようになります。
そして22歳のころ、ドミニクは刑事事件を起こして自宅軟禁を命じられます。そのときに自宅で録音した楽曲をインターネット上にアップロードしたところ、あっというまに注目を集め、複数のレコードレーベルから声をかけられることになりました。最終的に400万ドル(日本円に換算すると4〜5億円)でコロンビア・レコードと契約をします。
このときの契約金は、その頃また薬物疑惑で逮捕されていた母親の裁判費用に使ったとドミニクは語っています。
今回の曲
そんな何度も逮捕された母親をもち、自身も刑事事件を起こしたことがあるドミニクがつくったのが『ダンシング・イン・ザ・コートハウス』です。
直訳すると、裁判所で踊る。
ダンシング・イン・ザ・コートハウス
やっとここまできました。
さて、ここからが本題です。
そんなスラングないよね
最初にこの曲を聴いたとき、「あれ? 裁判所で踊るってなにかのスラングだっけ?」と思いました。
でも調べてもそれらしいものはないんですよね。
おそらくそのままの意味でいいんだと思います。
アメリカのファンの間でもリリックの解釈は悩ましいところがあったようで、アメリカの掲示板サイト「Reddit(レディット)」には、「ダンシング・イン・ザ・コートハウスには別の意味があるのか教えてほしい」というスレッドが立っていました。
その中で「もしかしたらドミニクの母親や自分自身の裁判所での経験を踏まえて、裁判で人生のすべてが決められてしまう恐怖やもどかしさを歌っているのではないか」というアンサーがありました。
それと、さきほど紹介した彼の生い立ちを合わせて考えると、なんとなく世界観や伝えたいことがわかるような気がします。
コントロールできなさ、もどかしさ
とりわけ、自分自身の人生をだれかに決められてしまうことへの恐怖がわかるリリックがあります。
自分の努力では変えられない「得体の知れない何か」に、自分の人生を狂わされてしまう怖さ。それをひとことであらわしています。
ドミニクにとってのそれは、幼少期に逮捕される母親のことなのか、インターネット上で人気になる現象のことか、それとも有名人になった現在の生活のことか。それは本人だけが知るところです。
ここ、すごく好きです。
自分の墓場は自分で決める。
そしてサビでこう言います。
すごくユーモラスなリリックなんですが、ドミニクの歌い方も相まって、ものすごく切ない、若者のもろさみたいなものを表現しています。
ここもいいよね。
本当に地主になりたいわけじゃなくて、すべてのことをコントロールしたいんだということを伝えています。
そのほかにも、他の曲ではめったに出てこない「 judge(裁判官)」や「jury
(陪審員)」、「sentence(判決文)」などの言葉がたくさん出てくるので、興味のある人はそこにも注目してみてください。
まとめ
日本人としてはどうにもひたいのタトゥーに目がいってしまうのですが、彼の生い立ちを追っていくと、彼のもつ退廃的な雰囲気の理由がわかったような気がしました。
ミュージックビデオも青春群像劇のようなせつなさを表現していてとてもいいので、ぜひご覧ください。
よかったら。これキイテミ。
それじゃ、また。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?