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「文法」の授業の難儀

中学校の国語科の授業の中で、
教科書に取り上げられている扱い(その分量)以上に、その学習に多くの時間を費やしてしまいがちなのが、「言葉のきまり」、いわゆる「文法」に関する学習です。

学習指導要領に示されたこのことに係る指導事項は、次のとおり。

各学年における言葉の特徴やきまりに関する事項
単語、文及び文章に関する事項
  第1学年
・単語の類別について理解し,指示語や接続詞及びこれらと同じような働きをもつ語句などに注意すること。
  第2学年
・文の中の文の成分の順序や照応,文の構成などについて考えること。
・単語の活用について理解し,助詞や助動詞などの働きに注意すること。
・相手や目的に応じて,話や文章の形態や展開に違いがあることを理解すること。

これを受けて、多くの教科書には、次のような内容でその巻末にまとめて掲載されています。

第1学年
言葉の単位、文の組み立て、単語の分類
第2学年 
自立語、用言の活用、付属語

「文法」に関する学習に多くの時間を費やしてしまいがちなのには、次のような理由があります。
指導者にとっては、なかなかの難儀さです。

「文法」の学習は、
・きちんとした「体系をもつものであること
・よって、ていねいな理解が進めば、体系としての確かな理解ができるものの、部分的であやふやな理解では、体系としての理解が進まず、さらに混乱を来すことになること
・よって、ひとつひとつをていねいに理解させることが必要であり、
理解の定着を図るための練習問題による演習にも時間を要すること
・子らが途中で学習を投げ出してしまわないよう、子らにとっての「学ぶ必要性」を高めるための工夫・配慮が必要であること
・「体系」の中に学習したことが位置づくよう、間をおかず、適切な授業計画・進行が求められること
・中学校での学習が高等学校における「古語」文法の学習へとつながることから、いいかげんに済ませられないこと

これらのことを踏まえ、
私が「文法」の授業を行う時には、次のA~Cの3点に留意して授業づくりをしていました。

A  指導者として、学習のまとまりを次の2つとしてとらえること
  ① 「文節」に区切ることをスタートにして、文が確かな組み立て・構成を持つものであるかを確かめる学習
  ② 「単語」に区切ることをスタートにして、10の品詞の性質と働きを確かめる学習

B 「文法」の授業のルーティーンとして、「教師による説明」→「練習」→「反復」の流れを定着させること
「説明」は、指導者から的確に、そして短く。「練習」は、教室全体で。「反復」は、個人のペースで。

C 視覚的な配慮によって理解がより進むよう、学習材やその提示に工夫をすること

特にここでは、
上記のAの①と②の学習の違いを、次のシートでお見せしましょう。

どうですか。
そもそも、その取扱い方が違うのがおわかりでしょう。
そして、「体系」立った学習を必要とするのは、②の方の学習です。
おのずと、時間のかけ方も違ってきます。
よくありがちな授業は、「文節」に区切ることと、「単語」に分けることを、一緒にやってしまう授業です。子らを混乱させます。とりわけ、「単語」に正確に分けることを学習の初期段階にやらせることは、子らの「?」や「できない…」を招きます。「体系」的な理解をしていないのですから、分けろと言うほうが無理なのです。
なぜ「文節」に区切るのか、なぜ「単語」に分けるのかがもっと意識されれば、学習者の戸惑いやごちゃまぜ感を軽減させることができるのではないでしょうか。

「言葉のきまり」という「体系」づいたものの学習。
おそらく、子らも、すべて学び終わってはじめてその「体系」をようやく実感し、その体系の中にこれまでの学びを再確認し、位置付けることとなるでしょう。

やっぱり、難儀ですね、「文法」の学習。
子らも、同じです。

授業者の「腕」の見せどころですね。

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