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MAZDA CX-30購入半年後レビュー

2021年6月に、車を買い替えました。デミオXDですっかりMAZDAファンになったので、今度はCX-30に(XD PROACTIVE T-Selection 6AT 4WD)。
CX-30の出来があまりに良かったので、長たらしいレビューを書きました。某掲示板のクチコミに投下したものですが、賛否両論でした。
こんなレビューもアリ。と存在を肯定してくださった方には、もう足を向けて寝られないほど感謝しております。その節は、ほんとうにありがとうございました。
某掲示板クチコミは投下後に文字化け修正もできなかったので、こちらに内容を保管しておきます。
車好きの方、よかったら読んでください。

■SUV嫌いを魅了するSUV■
最初は、SUVを買うつもりはなかった。大きさや価格も含め、自分にはオーバースペックだと思っていたから。
実車を見て、気が変わった。最低地上高が175mmある割には小さく見え、そこそこ取り回しが良さそうだった。
なにより、横から見た時のドアに映る陰翳が凝っている。MAZDA3では運転席のある前方に、CX−30は後部座席側にハイライトが来るようにデザインされているらしい。
後部を荷物置き場にしている自分は、最初MAZDA3がほしいと思った。あのデザインには、有無を言わさぬカッコよさが有る。
しかし、北海道の僻地民という住環境を無視して、車は買えない。FFデミオで、冬場は苦戦していた(よく走る可愛いヤツだが、大雪が降ると亀になる)。
熟考の末、実用性とデザイン性を高い水準で両立させたCX−30を購入した。
吹雪で雪が張り付くので、ヘッドランプとリアワイパーの氷を溶かす機構のある4WDを選択した。
Gベクタリングコントロールとの連携も、少し気になる。
ディーゼルにMT設定がなかったのは、無念である。アイスバーンでエンジンブレーキをじわっと効かせたかったのに、残念。
営業氏にあれこれ相談し、ATにパドルシフトを付けてみた。今年の冬は、さてどうなるか。

■鉄を鉄色に塗装する、遊び心■
車体色で迷った。新しくなったソウルレッドは以前にもまして輝かしく、魅力的だ。
チタニウムも渋くて、しみじみと良い。迷ったが、近年発売の新色が気になり実車を見た。
マシーングレーは、あるべき理想の鉄色をしていた。機械らしい重厚感をそなえ、黒に比して軽やかさもある。
七割がた鋼鉄の物体を、鉄色に塗装するというのは頓知が効いているというか、ずいぶん洒落ていると思った。
ポリメタルグレーは、火を入れた鉄に似ている。発想の元は樹脂パイプらしいのだが、メタリック色のせいか金属みがある。
マシーングレーより、やや青みに傾く。暗さの奥に得体のしれない艶を潜め、角度によって色を変える。…火入れをした鉄器の色が好きだ。数日かけて磨き立て、なめらかさを確かめるぐらいには。…よし、ポリメタルグレーに決めた。
所有してみると、光の少ない条件下では地味だが、日差しの下でぬめるような輝きを放っている。
周囲にも評判が良いが、なにより私自身が気に入っている。

■Gベクタリングコントロールの恩恵■
デミオXDと比較して挙動が落ち着いて感じられるのは、重量増の影響が大きいだろう。FF→4WDにしたので前後重量比の違いもある。
段差の衝撃はあるが、もろに人体に響かない気がする。
不要な横揺れが少なく、収束も早い。酔うこともなく、同乗者はスマホでゲームを楽しんでいる。
交差点やカーブで、ステアリングをサポートしてくれるのが地味に楽だ。
長時間運転すると、特に効いてくる。
Gベクタリングコントロールのない代車に乗ったとき、改めて恩恵を感じた。
今日初めて、降雪路面とそれほどブラックではないアイスバーンの坂道を走ってきた。
横滑りしそうな恐怖感はなく、楽に走れた。むろん速度は落としたのだが、車体は一貫して安定していた気がする。
氷の悪路はまだ走っていないので、冬本番の評価はまだ下せないが、今のところ好感触である。

■引き算の法則が生み出す空間は、心を開放する秘密の書斎■
車内で聴く音に、多く期待はしていなかった。夏は高速走行ゆえの風切り音、冬はスタッドレスタイヤのロードノイズに年中干渉を受けている。
MAZDAはドアにスピーカーを埋め込むのをやめ、防音性を高めたと聞いた。雑音を減らす、引き算の法則だ。これは良いかも、と期待してしまった。
そして、予想以上に良かったのである。
前車と同じ環境で同じ曲をかけても、細かい音までクリアに聞こえる。これは嬉しい!
郊外を向かって車を走らせると、疲れが水彩絵の具のように溶けだし、音楽とともに流れ去ってゆく。自分にとってはもう、動く書斎である(笑)。
巷には、もっと良い車もあるのだろうれど。自分は軽自動車と小型車しか所有したことがないから、購入自体が冒険だった。勇気をだして、買ってよかった。
こだわり派の方や耳の良い方は、BOSEにしたらはっきり違いがわかるのかもしれない。
自分にはそこまで判定できる能力がないので、標準スピーカーで良しとした。

■がっしりと頼もしく、温もりに包まれるシート■体を包むこむシートは、がっしり頼もしい。ただ分厚いのと違い、人体の凹凸にうまくフィットしてくれる。
シートの前端を上げるとペダル操作がしやすいと聞いたが、本当だった。膝上から踏み降ろす力が働き、脛や足首が凝りにくい。
マニュアルと首っ引きでシートを微調整すると、自分専用のカプセルに入ったような包まれ感がある。
片道二時間くらいでは、体のどこも痛くならなかった。
この頃すっかり寒くなってきたので、シートヒーターとステアリングヒーターを愛用している。
ボタン一つですぐ温かくなり、三段階に調節可能だ。
腰から膝まで、背中から包まれるように温かいのが嬉しい。座席が温かければ、車全体の空気が温まりきっていなくても耐えられる。
去年は氷のようなシートに体温を奪われ、震えながら運転していたので、嘘のように快適だ。
夏のエアコンと同じく燃費が若干悪くなるのだろうけれど、心地よさには代えられない。
かじかむ指も、ステアリングを握っているだけで動かしやすくなる。
今年はきっと、霜焼けにならないだろう。私的には、とても満足だ。

■エクステリアと安全装備■
ピラーが太くフロントガラスの傾きが強いため、見通しはあまり良くない。Y字やX字に交差する道路では、慎重に安全確認を行う必要がある。
道路に面した駐車場から出るときは、360度モニターがる。
車の鼻先、ヘッドライトのそばに小さなカメラが付いている。座席から身を乗りだすよりずっと早く、歩行者に気づくことができるのだ。ほんとうに心臓に優しくて、安全である。
但しこれらの安全装備は、気温がマイナス10度に近づくと機能しない時間帯が存在する(ちゃんと警告してくれる)。
凍結したカメラが解けるまで、10〜15分ほどの我慢である。寒冷地ゆえの試練と思い、その間は周囲をよく見て走ることにしている。

■使えるナビ■
起動の遅さ等、我が子を見つめるがごとく不出来さを諦めていたマツコネが、進化していた。
起動が早い(これは普通か)。ナビも使える(これも普通か)。
有線ではあるが、スマホと繋げてナビも使える。
なかなか使い勝手のいいジョグダイヤルだが、ナビの五十音入力はさすがに大変だ。

My MAZDA(スマホアプリ)で検索結果を車に送信、ほぼこれ一択になった。
車での受信がやや遅れることはあるが、だいたい使える。マツコネ登録外の新しい店や郊外過ぎるスポットも、手順を踏めばちゃんとナビしてくれる。

マップで検索した場所を共有→My MAZDAを選択→お気に入りに登録→My MAZDAに戻って目的地送信

これでほぼ、どこへでも行ける。

GPSの掴みが悪かったのか、一度だけ道なき道に案内されたことがある(TCSが働いて、脱出できた)。
しかしこれは例外で、基本はよく働いてくれる愛いヤツである。

■思索と開放のインテリア■
シート色に白い革やグレージュといった明るめ色の選択肢があり、斬新でオシャレだと感心した。
自分は車内が暗いほうが集中できるので、黒にした。したがって、室内はブルーグレー&黒である。
この組み合わせも、ありそうでいて無い。
夜に深く吸いこまれてゆくようなリラックス感があり、思索的かつ開放的である。
全体を黒に沈め、光る計器のみを見つめる仕様が自然と運転に集中させてくれ、疲れにくい。
細かいことだが、銀の加飾が控えめなのも効いている。視線が散らされない上に、品が良い。機能と実用を考え抜いて造られているのがわかる。
ドアの鍵穴を隠した造りもそうだが、実用と美とのせめぎ合いでできたような車だ。

ドライビングディスプレイは、さすがの進化を遂げていた。
透明なプラ板に情報を投影するギミックが、直接フロントガラスに投影する仕様に変わった。
運転中必ず目がゆく自然な場所に表示されるし、上下左右に位置調整できる。なにより、ものすごく見やすいのだ。
以前は薄い緑の文字だったのが高精細フルカラーになり、隅々までくっきりよく見える。
自車の速度の隣に、速度制限や一時停止等の交通標識を明快表示してくれる。うっかりミスの交通違反が減りそうだ。

■生き物のように光る。■
ハイビーム走行時、対向車が来ると右側だけ減光してくれるのが良い。
街灯の少ない田舎道は、ロービームに切り替わった瞬間、真の闇が訪れる(笑)。
心細い上に、一寸先しか見えなくて怖かった。半分だけの減光だとやや明るいので、走りやすくて本当に助かっている。
拍動するように光るディミングターンシグナルは、パッと光ってジワ…ッと消える。
独特な光り方が面白いのだが、運転していると見る機会が少ないのが少し残念だ(笑)。
ウィンカーを出すと、コクッ、コクッという独特の音が柔らかく聞こえる。音と音の間隔が、自分の鼓動よりゆっくり目なのである。
ウィンカー音を聞いているうちに、不思議と少し落ち着いてくる。…大丈夫、大丈夫…と、車になだめられているような感覚がある。
なにか生き物に乗っているような感じがあって、だんだん可愛くなってきた。
乗る前はMAZDA3が素敵だと思っていたのに、今はCX−30のほうに愛着を感じている。

■燃費はカタログ値以上…田舎だからサ。
CX−30 XD AT 4WDの燃費は、カタログ値で18km/Lだった。
SUVの4WDとしては、驚異的な数値だと思う。
良きSUVとしてSUBARUも視野に入ったが、燃費維持費の試算をすると本命が定まった。
ペダルの位置がまっすぐで、自然に操作できるのもMAZDA車の良いところだ。

現在の燃費は渋滞なし、信号の少ない片道10km通勤メインで、平均19.1km/L程度である。
エンジン保守のために、たまに遠乗りする。小高速道路を含む100kmほど走った時は、20km/Lをやや超えた。
ストップ&ゴーの連続で9〜14km/Lぐらいに悪化するから、やはり長距離向きではある。
ガソリン高騰のご時世、軽油でほんとうに助かっている。ディーゼルって馬力がすごいんでしょう? と聞かれることがあるが、すごいのは2.2Lエンジンではないだろうか。
CX−30の1.8Lは良くも悪くもマイルドで、この車格と雰囲気によく合っていると思う。
個人的な印象だが、無闇に飛ばすのは似合わない気がする。落ち着いた、品の良い運転を心がけたくなる。
デミオXDと比較すると、フロントがアンバランスに重い感じはなく、バランスが良くなった。
最小回転半径が大きくなったせいもあり、全体に挙動がゆったりしている。元気な雀から、白鳥になったような感じだろうか。
高速道路では苦もなく加速し、すっと流れに乗ってゆける。過不足のないエンジン、といった印象だ。
接地面になにか粘りがあるというか、安定性が増した分、もっと速度を上げてもいけそうな気はしているのだが。勇気がなく、そこまで踏み込めていないのが現状である(笑)。

■総評■
エンジン起動時と停止時に、…ヒューンというような未来的な音がする。
じわっと光りながらモニターが表示されるギミックは、生き物が目覚めたような感じがする。
オーナーを、宇宙にでも連れていってくれるのだろうか。

…宇宙は爆発と膨張を繰り返し、最後に鉄という元素を生んだ。
地球の組成のうち、重量比の七割は鉄だという。車の組成も、ほぼ等しく。
人体のうちにも、鉄が含まれる。

大量の酸素を乗せて運ぶ鉄を血液の成分とすることで、生物は飛躍的な移動距離と活動時間を得た。

進化した製鉄技術は、歪まないレールと緻密な自動車部品を生みだし、大量輸送の世紀を人類にもたらした。
…鉄というマテリアルの不思議に思いを馳せるとき、未来と過去がすぐそばで息づくのを感じる。
機械が生き物に近づくとき――それは、それほど遠い将来ではないのかもしれない。
CX−30は、機械仕掛けの馬である。
それも、実によくできた鋼鉄の馬だ。
金は失ったが、悔いはない。


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