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初の小説読み切り「青色ダンサー」上

小1のころの夢なんて馬鹿げている。
「けっこんしよぉー!」とか、「おれぜったいダンサーになるぅ!」とか、こんなこと、今更になって真面目な話に感じてきた。
ふわふわ低学年サイコータイム(低学年の時のこと)を過ぎた小学6年生の3学期。その時の私は、中学生ダンサーを目指し、ペアの斈(まなぶ)とともに、日々日々努力を重ねていた。
「1,2,3,4!」「1,2,3,4!」
「おい咲(さき)、そこの動作、遅いと思うぜ。」
「そう?ちょっと動画取ってみて。」
「あ、ごめん、もうそろそろ帰らねぇと。」
「そっか・・・じゃあ明日、またここで4時に集合ね!」
もうそろそろ6時になる。これは母に怒られるな。
私は薄暗い普段の道を大急ぎで走り、家に戻った。
帰ると、母は玄関にいた。
「さっ。上がりなさい。晩御飯、できてるわよ。」
だいたい母は何か伝えたいことがあると、玄関で待っている。
「何か・・・伝えたいことでも?」
「そうよ。咲が喜ぶと思って、ずっと首を長くして待っていたわ。」
母は照れくさそうに言う。
「実はね。2月13日に、オーディションがあるみたいよ。場所は東京の渋谷。小学生以上が参加OKだから、咲と斈くんで、2人で行ってくれば?」
私と、斈で・・・・2人で・・ダンサーに?
思ってもいなかった。夢にも思わなかった。こんなチャンス、二度とない。私はその場で「行きたい」とは言えなかった。なぜなら、
「この土地での、最後の思い出になるでしょ?」
「・・・・・うん。」
そう、私は小学生の卒業と同時に、この土地を離れ、海外のばあばの家に引っ越すのだ。それも、二度と日本に戻ってくることはない。なぜなら、両親が海外の仕事に専念をするためだ。両親は、日本の仕事と、海外の仕事を両立して行っているが、そろそろ限界と判断し、家族で話し合った結果がこれだ。
どうしよう。例えダンサーのオーディションに受かったとしても、斈とダンサーの道を進むことはできない。なら、私の夢はどうなるの?こんなチャンスはもうないんだ。だから、今やらなきゃ。でも・・・・。
「じゃあ、一応申し込んでおくけれど、いやなら言ってね。」
「うん」
これで上は終了です。これ以上は長くなりすぎるので、下は次の投稿にします。

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