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【小説】1人目は神様だった【白砂での暮らしシリーズ】

「汝、人間に魔法を与えた罪により、永遠の流刑に処す。」
告げられた神、いや神だった男は、まだ幼さが残る笑みを浮かべ、黙ったままだった。

「うわー、ここが流刑地かぁ。ほんとに、なんもないとこじゃん。」
男は、きょろきょろとあたりを見回すも、見渡す限り白い砂ばかりだった。

手の中で魔力を込めて、放つ。色鮮やかな赤い道が、目の前に一本生まれた。
「魔法が使えるってのは、皆さまの優しさかな?」
男は満足そうに笑った。そして、魔力をさらに練り上げる。
「とりあえず、家だな。」

白い砂しかなかった、最果ての地に、かまくらのような家が出来上がった。男はすることもないので、部屋をひたすらに染め上げた。青色、赤色、緑色、黄色、紫色。思いつく限りの色で、家の中も外も塗りたくる。

「やっぱ、家は白じゃなきゃなんて伝統、つまんないもんな。」

男は、色鮮やかになった家を見て、とても満足した。そして、その顔を少し曇らせてつぶやく。

「僕が消滅するまでの間に、誰かと会話することはあるんだろうか。」

そんな陰りは、一瞬のことで、男は今までと変わらない笑顔を顔に張り付ける。そして、さらに明るい色を、あたりに散りばめた。

「ま、誰が来てもいいように、派手に飾らないと!こんな、つまらない場所で、つまらない家に住んでるなんて思われたくないもんね!」


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