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【おすすめマンガ紹介】檻ノ中のソリスト

「檻ノ中のソリスト」はジャンプ+で連載されていた漫画なのですが、
既に完結しており、全3巻と短めなのですが、3巻でしっかり物語が完結しており、読み終わると濃厚な映画を2時間みっちりと見たような満足感を得られる作品です。

葬送のフリーレンの「言葉には出さないが、キャラクターの何気ない表情や空気から伝わるセリフ」の表現が好きな人には
無茶苦茶刺さる作品だと思うので、ぜひ読んで欲しいです。

 ※作品の設定上、割と流血表現があります。苦手な人は気を付けてください。



■どんな話?

犯罪者が閉じ込められた高い壁に囲まれた街、監獄街で生まれ育った少女クロエが、生き別れになった弟を探す話です。

監獄街、という名前の通り、
主人公クロエの住む街は犯罪者を収容することが目的の街で、街には国内で捕まったありとあらゆる犯罪者と、その街で生まれた人間が閉じ込められています。

クロエと弟は後者のこの街に生まれてしまっただけの普通の子供なのですが(両親が犯罪者なのかどうかは不明)、この街では犯罪者か、そうでないかは関係なく誰一人街の外に出ることは許されません。

弱者は外を歩くだけで殺されてしまうぐらいの治安最悪な監獄街で生まれ育ったクロエは、生まれてからずっと、家から出ないで暮らし続けていました。
家と、窓の外に見える景色の中だけで暮らしていたクロエの唯一の生きがいは赤ん坊の弟の世話でした。

クロエは隣に住む、ロス大佐達から貰った食料で食いつなぎながら、弟と二人つつましい生活を続けていました。

クロエの隣に住むロス大佐達も勿論犯罪者として監獄街に入れられていましたが、その罪とは、敵国の兵士でした。
戦争で兵士を殺した罪で監獄街に入れられたロス大佐達は表向き従順なふりをしながら脱出の機会をうかがっていました。
大雪が降った日、ロス大佐達に脱獄の千載一遇のチャンスがやってきます。
雪に紛れて壁を乗り越える計画を立てたロス大佐達は、その直前に隣に住むクロエ達の親が半年前に蒸発しており、自分達が時折渡していた食料だけを頼りに二人が生きていたことを知ります。

子供、ましてや赤ん坊を連れて脱獄を成功させることは不可能。
そう考えたロス大佐達は迷いながらも、クロエ達を見捨てて町から出ることを決めます。

迷うロス大佐達の会話を聞いていたクロエもまた、部屋から一歩も出たことがない自分がついて行くことなんて不可能だろうと、思います。
 
ロス大佐達をこのまま見送ってしまえば、自分達がそう遠くない未来に餓死してしまうだろうことをクロエはわかっていました。
それでも、臆病な彼女にとって、恐怖でしかない外の世界に飛び出すより、最後まで弟の側で穏やかな生活を付づける方がずっとずっと、幸せだったのです。

しかし、死の恐怖すら受け入れた臆病な彼女の気持ちを変えたものが一つだけありました。

弟は生きたいと思っている。
そう感じたクロエは弟を抱えて、ロス大佐達を追いかけました。
すでに壁を越えようとしていた大佐達に自力で追いついたクロエですが、その時に音を出して看守たちに見つかってしまいます。
銃で撃たれながらもなお、壁の反対側に飛び降りることに成功したクロエとロス大佐達でしたが、撃たれた衝撃で、クロエは弟を放してしまいます。

クロエは壁の外へ、弟は監獄街の中に。
それぞれ落ちてしまったことで、クロエは弟と生き別れることになります。

クロエはすぐに壁の中に戻ろうとしましたが、脱獄者である彼らがその場に留まることは出来ませんでした。

いつか監獄街の中に弟を探しに行けるように、クロエを自分達が育てる。

ロス大佐にそう説得されたクロエは、断腸の思いでその場から離れ、ロス大佐達についていくことにします。

それから十一年後、ロス大佐達に戦闘の技術を叩きこまれたクロエは一人で監獄街の中に戻ってきます。
街の中に入ったクロエは、赤ん坊だった弟が生きて、この街で大きくなってくれていることを信じて、何も手がかりのない弟を探すことになります。

※以降は2巻以降の若干のネタバレを含みます。


■一人の”姉”の話

弟を探すことを目的に始まったこの物語ですが、実は弟は物語の中盤前には見つかります。
ただ、見つかってめでたし、めでたしでは終われません。

クロエが弟を探しに来たのは、歩いているだけで殺されても文句が言えないぐらい治安最悪の監獄街。
弟を見つけるためにロス大佐達から戦闘と殺しの技術を叩きこまれていたクロエは
 弟を見つけた時には既に何人もの命を奪った殺人者になってしまっていました。

幸い、監獄街に残ったにもかかわらず、弟はクロエとは違い犯罪を犯さなくても生きて行けるような生活を送っていました。
友達も家族と呼べるような存在もいます。

殺人者となってしまった自分と、弟が既に別の世界の人間になってしまったことに気付いたクロエは、弟に自分が姉だということを打ち明けてもいいものか迷い……、打ち明けられなくなります。

姉だと打ち明けられなくても、弟を守ることが出来たらいい。
一度はそう思ったクロエが最終的にどのような結末にたどり着けるのかは、是非漫画を読んで欲しいです。

■セリフがないシーンこそ目が離せなくなる。

この漫画の特徴として、見せ場のシーンであえてセリフをなくしてクロエや弟の表情を全面に見せるという表現を使っているのですが、
これがとてもいいです。

とあるシーンで、クロエが待ち合わせ場所に来てくれていたこと確認した弟が一瞬見せた表情や、最後の戦闘でふっと振り返ったクロエが弟に見せた優しい覚悟の表情等、クロエも弟も何も言ってないのに、セリフ以上に二人の気持ちが伝わってくるような場面になっていました。

緻密に書き込んである絵柄の魅力も合わさって、そのシーン以外でもこの漫画、見せ場のシーンがどれも一瞬息をのんで魅入ってしまうようなシーンばかりになっています。

文字だとその一部も説明出来ないのが本当にもどかしいのですが……。
1話~2話はジャンプ+で無料で読めますので、ぜひ、雰囲気だけでも見てみてください。


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