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【詩】解放宣言


否が応でもストレスを受けるこの社会で
自分の機嫌は自分で取れ、と
誰かが高らかに宣誓する

その声に縛りつけられる少しばかりの人間が
まるでなってないとでも言いたげで
そのたび私はきちんと落ち込み絶望するのだ

限りなく正論に近い、この世の中に。

幾多の言葉も刃も心の声も
ただ滔々と受け入れてほしいだけなのに
過去に執着すべきでない、と
名もなき偉人から叱咤を受ける

そのたび私は
決して忘れてなどやるものかと
一縷の望みに腹をくくるのだ

誰のことも恨まず、過去を受け入れ
恥を思い出すこともなく、落ち込まず
ただいつも前向きに
生きていける人間がいるのだとすれば

社会がこれほど複雑なものになり得ようか
その声に耳を傾けずして
本物の困難がどこにあるのか
突き止めることが出来ようか

今、誰かが高らかに宣言している
その名言は誰のものなのだ
本当の言葉はどこにあるのだ

私は私の傷を受け入れて
そのたびきちんと落ち込み、絶望しよう

この絶望から逃げずに、立ち向かってみせよう

幾多に蔓延る限りなく正しい武器に。

私という名の剥き出しの心臓で。

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