もしも2分間だけ大谷翔平になれるとしたら、どの2分間を選ぶか?
昨日の夜、心から思ったのである。
「あー2分でいいから、大谷翔平になりてぇ」
私は凡人。スーパースターから程遠い。
ほんとどうしようもない人間なのだ。夜更かしはするし朝は起きられないし、コーラは飲むしポテチは食べるし、誰も見てない車通りのない信号なら平気で無視するし、道端に落ちているタバコの吸い殻のゴミだって見てみぬフリしてスタスタ歩くんだ。
毎日大した努力もしないで、少しだけ人より得意っぽい領域だけで勝負して、現実空間でも仮想空間でも狭い池の中でいい気になって、押しつぶされそうなプレッシャーを回避しながらヒラヒラと生きてるんです。
はぁ。
そんな私ですから、ある日突然神様が現れて「ビッグチャーンス、YOU、大谷翔平くんになっちゃう?」といわれても「ええ!? いいんですか!?」と言いつつ、高望みしないような教育を受けてきましたから多くは望みません。2分間だけでいいです。神様お願いします。2分だけ私を大谷翔平にしてください。
2分がポイント。刹那の時間。
好きなタイミングで2分だけ大谷くんになれる。そういう謎の道具があったとする。もしも私が大谷くんになったなら。
まず第一に小手調べ。朝の2分間だけでいい。彼のような完璧なアスリートとしての身体能力を体感してみたい。朝起きて鏡を見たら、そこに映るのは身長193センチの筋骨隆々の自分。
「おお、これが大谷翔平か!」なんて叫ぶと思う。そして、そのままダッシュでリビングに向かう。軽々とソファを飛び越える。「あ、これがプロの動きですか」と一人でニヤニヤする。
そもそも起きたらたぶん愛犬のデコピンがいる。デコピンも「あれ? なんか今日様子ちげーな」とフルフルすると思う。そんなの関係ない。外に出たらたぶん、ロサンゼルスのいい天気で「っかー、天気がいいと心も晴れるわぁ。札幌と大違いやんけぇ」ってな具合。これで2分が終了。ピンポンパン。
また別日に2分だけ大谷くんになる。
次の2分は大谷くんがピッチャーとして復帰した直後の第1戦、6回表2アウト、ランナーは1、3塁、ここまで無失点に抑えてきたが連打を浴びてピンチの場面。打席に迎え撃つ相手は絶賛バトル中のオズナ選手。ホームランバッターだ。
「神様、いまです!」とばかりに、このタイミングで2分間入れ替わる。
オズナに向かって「あらよっと!」と163キロの高めのストレートを放り込み、空振り三振に打ち取って「うぇーい!」と雄叫びを上げる。
超満員のドジャースタジアムの観客からは「MVPコール」が鳴り止まない。「俺ってエグないかぁ?」って心で思いながら表情を変えずにベンチに戻る。ここまでの2分間がほしい。ピンポンパン。
ずっと何言ってんだろ。
まだある。
ホームランを打ちたい。バッターボックスに入ると周囲の観客の声援が聞こえる。「翔平、頼むぞ!」と聞こえてくると、自然と背筋が伸びる。「打てるかなぁ」と心配だけど、ピッチャーの投げるボールが迫ってくる瞬間、身体能力だけは大谷くんのそれだから全身の筋肉が弛緩し、バットが「バゴン」と振り抜かれる。
そしたら月まで届くんじゃないかっていう、アームストロング船長もびっくりするような見事なホームランが飛び出す。
地鳴りのような観客の大歓声。「俺って本当に大谷翔平なのか? あーこの瞬間〜、永遠に続いてくれ〜」とわがまま言っちゃう。ピンポンパン。
こう書いて自分ってとことんダメだなあと思うのは、2分だけという縛りにより、それ以外の時間、それはつまり、辛い辛いトレーニング、食事制限、欲との戦いみたいなものと向き合う時間は、本家大谷翔平に丸投げしているという点である。大谷くん、あとはよろしく〜。
世間で脚光を浴びる素晴らしい瞬間の影には、人には見せない積み重ねがあるはずなのに、私はそれをホップステップジャンプで飛ばそうとしている。
私ってなんて煩悩にまみれたダメ人間なんだろう。
はあ。
それでもいっか(よくない)。
神様、2分でいいから、大谷翔平になりたい。たった2分で世界が変わる。そんな夢のような瞬間を味わってみたいっすわぁ(味わえない)。
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