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ポニーさんは全てを解決してくれる。

このご時世にオネェと書くのは、ややはばかられる。時代錯誤である気がするんだけど、これ以上の親しみを込めた表現が浮かばない私の語彙力が情けない。


札幌市内に、とあるバーがある。

その名もBar Ponnyバー ポニー(仮名)。

運営しているのは1人の男性かつ女性。
名前をポニーさん(仮名)という。

ポニーさんの見た目は完全に男性のそれで、年代は50代。黒髪に大きなメガネをかけていて、カウンター内をピコピコ歩く。しかし、ひとたび口をひらけば口調が完全に女性のそれで、とにかく元気がいい。

ポニーさんのバーは完全紹介制だ。店内はカウンター席が6つとボックス席が1つ。雑居ビルに入っているこじんまりとしたバーである。

このお店に行ったきっかけは私の友人からの紹介である。彼が会社の先輩に連れていかれたらしい。

3年前のある日「あ、そうだ、ポニーさんの店に行こう」と当たり前かのように言うから「ポ、ポニーさん?」と思いながらついていった。


以前、お店の常連になるカンタンな方法を書いた。結論から言えば「3日連続で通うこと」である。3日連続というのがミソだ。いちいち説明するまでもない。


てなわけで、ポニーさんのお店に3日連続で行った。1日目は友だちと、2日目と3日目は1人で。当時はコロナ真っただ中で、ポニーさんはめちゃくちゃ喜んでくれた。

「え~! ダーキちゃん! 
 また来てくれたのぉ!?」


えへへ、と言いながら当時はお酒を注文する。
ポニーさんと会話していると、

「昨日、隣のお店のマスターが亡くなったのぉ。コロナでお店に人が来ないでしょ~? もうダメだと思ったんじゃないかしらぁ~。生きてれば何とかなるのにねぇ~」

ポニーさんはとにかくポジティブである。



生命保険業界で働くようになって、最もつらかったのは旧友に断られることである。ひょんなことから久しぶりに電話連絡した友人に、こんなことを言われた。


「久しぶりに連絡してきて何かと思ったらそんなくだらないことか。それはお前が得をすることだから俺に連絡してきたんだろう?」


気持ちは痛いほどわかる。こういう返事をするのは、損得で物事を考える人に多い気がする。当時の私はナゾの使命感に燃えていたから、損得なしにとにかく彼の役に立ちたかった。が、あえなく電話で断られた。

よくあること。

こういう経験は、正直この1回だけなんだけど、
でも、私はつらかった。


う~ん、つらいなぁ。


Bar Ponnyバー ポニーに行った。

ポニーさんに癒してもらおう。

とにかくポジティブなポニーさんに。


ポニーさんのお店に行った。
お客さんは誰もいなくて私だけ。

「あ! ダーキちゃ~ん! 
 また来てくれたの~!?」


ポニーさんにはその日起きたことは話さなかった。とにかくポニーさんと話して、あたたかなお湯を注いでもらおうとだけ考えて、くだらない話をずっとした。

途中、お手洗いに行きたくなった。


「ポニーさん、お手洗いってどこですか?」

「え~! トイレはお店を出て右~!」

「ポニーさん、あざす!」

「あたしもついてく~!!」

「え、ポニーさんもトイレしたいんすか?」

「ちがう~! 確認、確認~!

「か、確認……?」

お手洗いについてくるポニーさん。

便器に向かう私を見つめるポニーさん。

じ~っと見ている。

じ〜っと覗き込んでくる。

そしてポニーさんは言った。


「確認完了~~~~~!!!!」



また、ポニーさんに会いに行こう。



〈あとがき〉
やはりポジティブな人のもとに人は集まるものです。ただ会話するだけで、不思議と元気をくれる人というのがたしかに存在します。ポニーさんのお店には、しばらく行けていませんが、また少ししたら行こうと思います。もちろんウーロン茶で。今日もありがとうございました。

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