見出し画像

転校初日の子どもの気持ち。

子どもにとっての「転校」は一大イベントだ。学校が変わるということはつまり所属していたコミュニティを抜けるということで、一度構築したコミュニティから移ってまたゼロからすべてをやり直す必要がある。

私が最初に通った小学校は札幌市の東区なのだが、田舎の小学校に転校することになったのは1年生の9月ごろだったと記憶している。転校先の学校には通学初日の前日のお昼に行き、職員室へ。新たに担任になる先生のところにお母さんといっしょにあいさつに行ったのだ。それが不安だったかどうかについての記憶はない。

新天地での初日。片道1.6キロの慣れない通学路。子どもの足で30分歩く。札幌の小学校に通っていたときは学校は家のまどなりにあり片道5分だった。引越したばかりで近所に友だちはおらず1人で歩く。すごくさみしかった。

初めての朝。先生といっしょに1年2組の教室に入る。同じクラスには30人の同級生。あいさつをする。どんなあいさつをしたかも忘れたが、やっぱりさみしかったことだけは覚えている。先生にうながされ、緊張しながら席に座る。こんなの6歳の男の子に酷だ。

朝の会が終わり、次の授業までの休み時間は5分。私の席にはだれも寄ってこなかった。よそ者が来たわけだからだーれも話しかけてくれない。トイレに行きたくなったので逃げるように席を立つ。すると背後から同じクラスの男の子が笑顔で話しかけてきた。


「好きな食べ物なーに?」


はじめてそうやって話しかけてくれたのはトシヤだ。私はぎこちない笑顔で「ブドウだよ」と答えた。トシヤは「ブドウなんだ。きみ、今からトイレ行くの?」と言うので「うん」と答える。「じゃあいっしょに行こう」と言うので小学校1年生で連れションをした。そうやって話しかけてくれた直後の私がどんな心境だったかは覚えていない。家に帰ってお母さんに今日の出来事を話したかも覚えていない。

でも初日で「好きな食べ物なーに?」と話しかけてくれたことはよく覚えているから、33歳になった今も、初対面で緊張しているだれかを前にすると「好きな食べ物はなんですか?」と話しかけることがある。

子どもってすごいよね。


<あとがき>
それからすぐに学芸発表会が始まり、私は練習不十分のまま「大きなカブ」の劇にでることになりました。「それでもカブは抜けません」と大きな声で言ったことだけは覚えていますが、親となって我が子がそういう状況にある姿を見たならば、おそらく大粒の涙を流すことと思います。子どもって本当にすごいですよね。今日も最後までありがとうございました。

【関連】小学校のころの思い出はこちら


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?