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益田ミリさん「一度だけ」を読んで

ここのところ目にする機会が何度もあって気になっていた益田ミリさん。初めて手にした小説。

日常の忘れたいことを帳消しに出来るようなキラキラした何かを、誰かをあてにしながら追い求めている姉妹の物語。

毎日を生きることに必死にもがいていた時期、私も来るはずのない何かを、手に入るはずのない何かを、どこかの誰かをあてにしながら過ごしていたことがあるので、読みながら自分の胸が「いたたたた…」という気持ち。

毎日もがいていたけれど、うまくいかなくて、どうしていいのかわからなくて、じゃあ自分でどうにかしよう!ではなくて、何かが起こるのではないかと期待してしまっていたことが。

自分の中の小さな目標を少しずつ時間をかけてクリアしたり、人の言葉や支えに助けられたりして少しずつ出来ることが増えていって、いつのまにか誰かをあてにする気持ちは小さくなった。

とはいっても誰かの支えや助けがあったり、支えたり支えられたりしながら毎日を過ごしてはいるし、それは必要なことで、誰かの何かに支えられて(たとえば推し活とかそういうことでも)、それがあるから生きていけるのではないかなぁと思う。だけど、すっかり全部よりかかってしまうとこわいなぁと思う。

あてにしていた何かがなくなってしまった時、崩れてしまった時に、また立ち上がることが出来なくなるんじゃないかとこわくなる。

誰かと支え合いながらも、自分の気持ちは自分で責任をとるというか。自分の機嫌を自分でとるというか。

と今の私が思うことで、時が過ぎていろいろな経験を重ねた時に、またどう思うかは変わるのかもしれない。

目の前で鳥が飛び立つ光景を見ても、その時の状況や自分の気持ちで見え方は違ってくる。悲しく見える時もあれば、楽しそうに見える時もある。
飛び立つ光景から勝手に背中をそっと押してもらえるような気持ちになる時もあるし、自分の気持ち次第かもなぁと読み終えて思った。

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