赤花フェス運営奮闘記③
<前章>
今回の記事では、赤花フェスにおけるキーアイテムとなっているアイコンリングについて、その成り立ちやデザインにおいて重視したところ、カラーバリエーションの重要性、企画におけるアイコンリングの考え方について振り返っていく。
アイコンリングのデザイン
『赤花フェス2021』の企画段階において、アイコンリングのデザイン担当スタッフに注文したコンセプトは、「企画の基本情報がわかりやすくコンパクトにまとまっていること」と、「どんなアイコンにも似合う、シンプルで万人受けするデザインであること」の2点だ。
SpoonやTwitterのアイコンとは、ユーザー相互を識別するための視覚的なツールであり、ユーザーにとって最も目に触れるものである。すなわち、アイコンリングとは、それだけ多くの人が視認するため、企画において基本となる情報ーーー例えば企画名や日時のような、一番伝えたい情報を宣伝するのに最適な広告資源となるわけだ。そのためには、パッと一目見ただけで、どんなリレーなのかが伝わることがアイコンリングに求められる最も重要なデザインコンセプトである。
そしてアイコンリングは、より多くの人につけて宣伝することが良しとされるわけだが、あまりに派手すぎたり奇抜なデザインにしたりすると、かえって敬遠されてしまう。アイコンは、その人の顔と言ってもよく、ユーザーによって千差万別だ。より多くの人からつけてもらうには、その人の個別性を損ねないようなデザインにすることが至上命題である。
カラバリの重要性
前述した通り、アイコンリングとは企画にとって最も有効な宣伝ツールである以上、より多くの人につけてもらえるようなデザインにしなければならない。それは、カラーバリエーションにおいても同様のことが言える。アイコンによって似合う色、似合わない色というのが必ず存在するからだ。
『赤花フェス2021』では、ステージのテーマカラーに対応させた2種類の出演者用のリングから作成に取りかかった。そして、リスナー用のサポーターリングを「レッド」と「グリーン」の2種類から用意したのだが、リングデザイン担当スタッフと色んなカラバリを試作するうちに段々と楽しくなってしまい、最終的には8種類ものカラバリに増えていった。
Spoonでは様々なリレー企画が行われてきたが、リスナー側がアイコンリングの色をこれだけの種類から選べるというのは、当時において革新的なことであったと言えるだろう。そして実際に『赤花フェス2021』の開催以降、アイコンリングに複数のカラバリを用意する企画が爆発的に増えていった。それでも、8種類というバリエーションは現在に至るまで他には存在しないはずである。それが実現できるのも、リングそのもののデザインがシンプルなことによる自由度の高さであろう。
そして、そのアイコンリングは『赤花フェス2022』で更なる進化を遂げることとなる。サポーターリングだけでも18種類、パフォーマーリングは各出演者ごとに個別でオーダーメイド対応という充実ぶりである。赤花フェスが、いかにアイコンリングというツールに注力しているかがわかるであろう。「オリジナルを超えられるのはオリジナルだけ」なのだ。
昨年に実施した『サポーターリング総選挙』の集計結果と、サポーターリング装着依頼の注文データをもとに人気カラーの傾向を分析し、今年の新作カラーを検討していった。そして例によって、リング作成スタッフと色んなカラバリを試作するうちに段々と楽しくなってしまい、最終的には18種類ものカラバリに増えていったのである。おそらくこれから先にも、Spoonの企画においてこの記録が破られることはないだろう。
アイコンリングの考え方
あれは、『赤花フェス2022』のサポーターリングの基本カラー8種類が発表されたくらいの時期であっただろうかーーー僕がいつものように自枠をしながら、赤花フェスのアイコンリングを宣伝していた時に、ほとんどのリスナーが「かわいい!」という率直な感想や、「どの色にするか悩む」というような話題で盛り上がっている中、とある一人のリスナーがふと口にした。
僕はこれに対して、「みんなが企画に参加している一体感がある」以上の答えを導き出すことができなかった。彼はきっと軽口のつもりで言ったのだろうが、僕にとってはアイコンリングへの考え方を見直すほどの重たい一言となっていた。
よくよく考えてみれば、企画に無関係のユーザーにとって、アイコンリングほど押し付けがましいものはない。どれだけ優れたデザインにしようがカラバリを増やそうが、アイコンリングを“付けさせている”事実には変わりない。Spoonの全リレーの主催者は、“自分の企画は応援されて当たり前”という前提に立っているだろう。まずはそういう考えを根本的に改めなくてはならない。アイコンリングを“付けてもらう”立場なのだとーーー
デザインやカラバリ以外にも、ユーザーがアイコンリングをつけたくなるような、“何らかの価値”を感じてもらうようにしなければならなかった。繰り返し述べた通り、アイコンリングは宣伝ツールである。アイコンリングをつけることとは、その人が企画の広告塔を担ってくれていることに他ならない。
それなら、然るべき“広告料”という対価を支払いたいところだが、金銭的なリターンでは買収しているのと同じである。そうならないためにあれこれ考えた結果、『赤花フェス』の原点にその答えはあった。それは、サポーターリングにも“三方よし”を取り入れることだった。
サポーターリングをつけてくれた人に対する“広告料”を支払う代わりに沖縄に寄付するということにすれば、その人に直接リターンを支払っているわけではないから買収していることにはならない。それに、「沖縄のためになるなら」とサポーターリングをつけてもらいやすくなるし、「みんなが企画に参加している一体感」としては何よりも説得力のある手段である。
それは『サポーターリング総選挙』にも波及していった。ここまでお読みの方であればもうお気づきだろうが、『サポーターリング総選挙』とは、単なるアイコンリングの人気投票というだけのイベントではない。運営からすれば、れっきとした“データ収集”の一環である。しかし、せっかく貴重なフィードバックをくれた人たちに対して、何の対価もないというのは忍びない。それなら、投票という名目のアンケートに回答してくれたお礼として更に10円を寄付しても良いのではないかと考えたのだ。これもアイコンリングのカラバリが豊富だからこそできる取り組みと言えるだろう。
そしてアイコンリングそのものが寄付になるという取り組みは、Spoonにおいても前例がないはずだ。自分で言うのも何だが、まさに画期的とも言えるアイディアだったと思う。その結果『赤花フェス2022』では、8月6日のニライstageで70名、8月7日のカナイstageで90名と、総勢160名ものリスナーがサポーターリングをつけて来場してくれた。じつに1600円もの寄付である。それだけ多くの人に応援してもらうことができたのだ。それもこれも僕の枠で“貴重な意見”をくれた、かのリスナーのおかげである。本当に感謝している。
こうして赤花フェスのキーアイテムとなるアイコンリングは、これまでのSpoonの企画におけるアイコンリングとは一味も二味も違う、「新たなスタンダード」として独自の発展を遂げていったのである。
そして、それを具現化させてくれた、去年のリングデザイン担当スタッフのやんやん坊。氏、今年のリングデザイン担当スタッフのなまず氏は、出演者と同等かそれ以上に重要な役割を担ってくれたと言っても過言では無い。思い返せば両氏には相当大変な注文をしたと思う。それでも応えてくれたことには感謝しかありません。この場を借りてお礼を言わせてください。本当にどうもありがとう!
これからSpoonで企画を主催する人たちには、企画をさらに飛躍させるヒントは、(それこそ枠でのリスナーの軽口のような)思いもよらないところにあるものだということ、主催者にとってアイコンリングとは、常に“つけてもらう”立場であるということを忘れないで頂きたい。そして、いつの日か『赤花フェス』を超えるようなアイコンリングというツールを絡めた取り組みを見せてもらえることを期待している。
さて、次回は『CAST for 赤花フェス』と『TALK for 赤花フェス』、ラジオ番組とのタイアップや公式グッズ制作の経緯について触れていこうと思う。
<次章>
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