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赤花フェス運営奮闘記②


<前章>

赤花フェス運営奮闘記①

今回の記事では、『赤花フェス2022』の寄付先を決めるまでのエピソードと寄付の中核を占めている配信でのスプーンとバスターへの考え方ついて振り返る。

本土復帰50周年にできるコト

『赤花フェス2022』は、1972年に沖縄県が日本に返還されてから50年を迎える記念すべき年に開催されることとなった。最近になって再び新型コロナが感染拡大を見せているので、昨年に開催された『赤花フェス2021』と同様に沖縄県の新型コロナ対策支援金に寄付をするという選択肢も検討していた。

しかし運営としては、沖縄県にとって節目となる年には、いまを切り抜けるための支援よりも、より良い選択ができないものだろうかと考えた。できることなら50年先の沖縄のために、より広い分野かつ未来志向な内容の支援ができれば理想ではある。

それを条件に探したところ、沖縄県庁が実施している美ら島ゆいまーる寄付金なるものがあることがわかった。美ら島ゆいまーる寄付金の詳細を見ると、沖縄の伝統や文化の継承や発展、沖縄の将来を担う児童や青少年の育成、離島の振興などに県が取り組むための予算に使われるとのことらしい。これはまとまりが良さそうだ。

ところが、ここで一つ問題が浮上する。美ら島ゆいまーる寄付金は、ふるさと納税制度によるものである。すなわち、『赤花フェス2022』という企画名(団体名)としての寄付ができない可能性があるのだ。「湊麒一郎」名義で寄付をすれば良いのではないかとお思いかも知れないが、そう単純な話ではない。

いくら本名ではないとはいえ、個人名義で寄付することで「赤花フェスの主催者は、企画で集めた寄付金でふるさと納税して還付金を受けようとしている」などという輩が、きっと出てくるに違いないのだ。

これまでの信頼と実績からして、僕がそんなことをするはずもないということは大多数の人には理解してもらえるだろう(ここ笑うとこです)。しかし、つまらぬことで赤花フェスに出演してくれる人の名前に傷をつけるわけにはいかない。そういう噂が立つ隙すら作らないことが主催者としての責務だと思っている。

沖縄県新型コロナ対策支援寄付金では、事前に『赤花フェス2021』名義で寄付する額の申請をすることで沖縄県から納入通知書が届き、それを指定の金融機関に持ち込んで支払いを行うことができた。もしかしたら同じことができるのではないか・・・?僕はすぐさま沖縄県総務部税務課に電話をかけた。

沖縄県庁をタライ回しにされる

きいちろの発言:
お世話になります。こちらで「美ら島ゆいまーる寄付金」を所管されているとのことで問い合わせました。こちらは、企画名とか団体名での寄付は受け付けていますでしょうか?
税務課職員の発言:
えーと、それはつまりあの、法人からの寄付ということでしょうか?
きいちろの発言:
いえ、法人ではありません。当方につきましては、ラジオ配信アプリ上で沖縄音楽のイベントを企画しております。そちらで募った寄付金について、ぜひとも沖縄県の事業にお役立て頂きたいので、願わくば企画名で寄付をしたいと思っております。もし可能であれば、納入通知書等での申請をしたいのですが、いかがでしょうか?
税務課職員の発言:
なるほど、そういうことでしたら企画の代表者様名義でふるさと納税して頂くというのはいかがでしょうか?そのほうが還付金も受けられますし。
きいちろの発言:
あっ・・・、いえ、その、還付金はいらないんです。むしろ還付金を受けたくないので、何としても企画名での寄付がしたいのです。
税務課職員の発言:
還付金を受けたくないッ!!??!?!?!!?

無理もないリアクションである。そもそもふるさと納税は、応援したい自治体へ納税して還付金を受けられる制度なのだから、僕の言ってることがいかに酔狂なことなのか想像すればするほど笑いを禁じ得ない。しかしこの男、湊麒一郎は己の信念のためなら他人からどう思われようと関係ないのだ。対応した税務課職員には申し訳ないが、そこは譲れない。

その時の税務課職員の様子

困り果てた税務課職員は明らかに動揺しながら「少々お待ちください」と通話を保留にした。おそらく上司に相談しているに違いない。それも、ふるさと納税をしたいけど還付金を受けたくないという前代未聞の相談である。対応にこまねいたのか、しばらくして上司と思しき人物が代わりに出てきた。

話をまとめると、美ら島ゆいまーる寄付金からの予算を充てられている各事業について、それぞれ所管している部署ごとに直接納付できないか聞いてほしいとのことだった。その数は何と6部署にも上るという。なるほど、役所お得意のタライ回しか。

ところがこの男、湊麒一郎は目的を達成するためなら役所にタライ回しにされようがどんなに泥臭いことでもしてみせるのだ。こちとら法律と福祉の専門家である。行政への対応など朝飯前だ。何も臆することなく6つの部署全てに電話をかけ、企画名での寄付ができないかを交渉した。

そして、文化振興課地域・離島課からは前向きな回答を得ることができたのだ。それが後に、『沖縄県文化振興会』『メッシュ・サポート』へと繋がっていくこととなる。

沖縄県文化振興会

文化振興課の職員は、企画そのものに興味を持ったようで親身に対応をしてくれた。そして、そういうことならと『沖縄県文化振興会』という公益財団法人の存在を教えてくれたのだ。

『沖縄県文化振興会』の詳しい説明はHPを見てもらうこととして、簡単に言うと沖縄の伝統や文化を、これから先の未来へと保全していく事業のために沖縄県が予算をつけて運営されている法人だ。

例を挙げるとすれば、コロナ禍で休止を余儀なくされている三線教室や琉球舞踊の講座などに補助金を支給したり、エイサーの世界大会を実行したり等の事業をしている。

沖縄の素晴らしい伝統芸能を後世の人たちへ伝えていくことに『赤花フェス』が少しでも役に立てるなら、主催としてこれほど嬉しいことはない。そして、担当者に確認したところ企画名での寄付も可能である。よし、まずは決まりだ!

企画名での寄付が出来ると知った時の筆者の様子

ドクターヘリとメッシュ・サポート

美ら島ゆいまーる寄付金で僕が一番興味を持ったのは「離島への支援」、さらにその中でも、「ドクターヘリ離着陸用ヘリポートの拡充」というものだった。

沖縄の伝統や文化を未来の人たちへ伝えていくためには、現代に生きる人々の生命を紡いでいく必要がある。なぜなら、文化とは人から人へと伝わっていくものだからだ。

地域・離島課の職員にそのことを相談すると、県のドクターヘリ事業を司っている医療政策課の担当者へ、そこからさらにドクターヘリの運行を管理している浦添総合病院の担当者にまで話をすることができた。

ところが、浦添総合病院としては、企業等から大口の寄付を受け付けたことはあるとの回答であった。つまり、「数百万円単位の寄付なら受け付けてやってもいいぞ」ということだろう。いくら『赤花フェス』でも、そこまでの寄付を集めることは不可能である。

なんとか他の手段でドクターヘリへの支援ができないものかと沖縄県の救急医療について調べていると、沖縄県には全国で唯一の民間の手で運行しているドクターヘリがあるということがわかった。それが『メッシュ•サポート』というNPO法人だ。

『メッシュ・サポート』のHPから、出動要請の実績やドキュメンタリーの動画でその活動内容を知ることができた。沖縄県は陸地の面積こそ小さいものの、奄美や八重山方面の離島まで含めた場合、ドクターヘリがカバーしないといけない範囲は、なんと北海道の倍以上にもなるという。ドクターヘリは各都道府県に最低でも1機は配備されるように法令で定められているが、こと沖縄県においてはとても1機で賄いきれる広さではないのだ。

そして沖縄県下には三次救急に対応できる指定病院が3箇所しかない。すなわち沖縄県の救急医療において、ドクターヘリが担う役割は他県とは比べ物にならないほど重要なものとなっているのだ。

『メッシュ・サポート』は、沖縄県のそういう救急医療の現状を踏まえて、県とは別に独自でドクターヘリを運行しているというわけだ。ドクターヘリの維持には莫大な費用がかかる。県のドクターヘリとは違って税金からの予算もつかない中では、一般からの寄付は非常に大きな意味を持つ。

沖縄県の人々の生命を未来へ紡いでいくために『赤花フェス』として支援をしていく団体は、この『メッシュ・サポート』を置いて他にあるだろうか?いや、ないーーー!早速メッシュの事務局に問い合わせたところ、企画名での寄付も受け付けているとのことであった。

これは大げさな話ではなく、みんなからの寄付金が沖縄にドクターヘリを飛ばすチカラになるのだ。そんなスケールのリレー企画が今までSpoonに存在したであろうか?きっと後にも先にも『赤花フェス』だけである。

沖縄のために、みんなでドクターヘリ飛ばそうぜ!!

ハートに寄付を設定した意味

昨年の『赤花フェス2021』では、2日間のうち僕の出番である2枠それぞれで投げられたスプーンの収益の全額を寄付するという内容であった。今年は寄付先が『沖縄県文化振興会』、そして『メッシュ・サポート』の2箇所になる。昨年ベースで考えると約3万円を等しく分けることになるのだが、せっかくなのだから昨年以上に寄付を集めたいものだ。そのためには新たな仕掛けを考える必要があった。

そこで注目したのが配信中に投げられるハートである。スプーンでは課金のハードルがあるが、ハートは誰でも無料で10分おきに投げることができる。つまり各30分のステージで誰でも2〜3個は投げることができるのだ。そしてハートが多ければ多いほどSpoonでのLIVEランキングが上がって注目されやすくなり、さらにリスナーがやってくるというわけだ。もし仮にハート1個につき1円を設定すれば、アクティブ50人が3個ずつハートを投げれば150円となる。

そしてバスターは課金アイテムではあるが、リスナーが今この配信を応援したいという気持ちの意思表示だ。せっかく『赤花フェス』を応援してもらっているのにも関わらず、ただSpoonの運営の懐に全額入るだけというだけでは忍びない。もし、100ハートのバスターを投げて出演者を応援すれば100円の寄付になるとしたら、リスナーにとっても応援のしがいがあるし、バスターも大きな意味を持つことになる。

『赤花フェス』には合計16枠ものステージがある。『赤花フェス』を盛り上げてくれるリスナーの皆さんの想いに、主催者として何とか応えたい・・・そうだ!出演者を応援してくれることへの感謝の気持ちとして、1ハートにつき1円を皆さんの代わりに主催者から寄付をするというのはどうだろうか?ハートを投げて応援するだけで寄付になるならみんなが参加しやすいし、これなら確実に去年よりも寄付が集まりそうだ。

それに、主催者なのだから、みんなからのスプーンに甘えるだけではダメだ。やはりそこは背中で見せるべきだろう。むしろ、こんな自分の企画を応援してくれるのだ、喜んで出資させて頂こうじゃないか。そう、この時は、まさかあんなに寄付が集まるとは思いもしなかったのであるーーー

こうして寄付金の柱となる部分が決まったのであった。さて、次回は『赤花フェス』の要石とも言うべき存在のアレについて触れていこうと思う。

<次章>

赤花フェス運営奮闘記③

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