見出し画像

ただそこに。

頑張り過ぎてしまったとき、
疲れてしまったとき、
私は神様と地球に挨拶をしにいく。

電車に取り付けてあるタッチ決済の機械にスマホをかざして、人の流れとは反対方向へ進んだ。

歩いているだけでは暇なので、いつも周りを見渡したり聞き耳を立てながらその場所へ向かう。
今日の天気は曇り。雨は降りそうにないが、どうもパッとしない。

門をくぐったとき、ぴりっと空気が変わる。
そこにあるもの全てが、ただ在るものへ変わるのだ。

雲の隙間から覗く光も、水の流れる音や木々の揺れる音も、静かに光を映して、ただ力強くそこに在るだけ。
この瞬間が、なんとも居心地が良い。

神様の通り道の邪魔をしないように、すこしだけ左側へ寄って、拝殿へ向かう。
狛犬と目が合ったら、立ち止まって暫く見つめてまた歩く。
記念碑があったら、少しだけ読んでみてまた歩く。

あっという間に、お賽銭箱が目の前になる。
財布の中から10円玉を取り出して、小さく会釈をしてから手を離した。
2回強く拍手をして目を閉じれば、世界との境界線が姿を消す。


神社はいい。1人だけど、独りじゃない気がする。
山の中を歩くとき、大きな岩に触れるとき、水飛沫跳ねる滝に足をつけるときも同じように、
今の私を、何も言わずに確立させてくれている。

ただそこに在るだけで、美しくて、清らかで、どこか暖かい。
そんな生き方がしたいと思う。

帰り際、ふと空を見ると、雲が青を飾っていた。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?