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第4回 バレエ講師 時川かほる

インタビューシリーズ「はたらく女性に聞いてみた」では、各業界で活躍する女性の方々に、労働経済学の観点も交えてインタビューを行なっております。

今回は、バレエ講師 時川かほる先生にお話を伺いました。


時川かほる先生のプロフィール

東京都にお生まれになり、5歳よりバレエを始められました。橘バレエ学校入学後、日本ジュニアバレエ、AMスチューデントにて、牧阿佐美氏、三谷恭三氏、挟間祥子氏に師事されました。橘バレエ学校時代には、子役として牧阿佐美バレエ団、新国立劇場バレエ団、日本バレエフェスティバル、青山バレエフェスティバル等に出演。また、アメリカンバレエシアター、カナダ国立バレエ団の日本来日公演にも出演されました。橘バレエ学校卒業、法政大学卒業と同時に牧阿佐美バレエ団に入団され、バレエ団の公演に10年間ほど出演されました。町田全国バレエコンクールではベスト町田賞を受賞されております。また、橘バレエ学校青山校、青山バレエハウス等のバレエスタジオにて講師を務められました。退団後、福岡へ移住され、バレエ講師として活動、2022年・2023年にはCKK主催の公演にダンサーとして参加されています。

動画の内容

  • 時川かほる先生のご紹介

  • バレエを始めたきっかけ

  • 牧阿佐美先生、三谷恭三先生、挾間祥子先生との思い出

  • プロのバレリーナの大変さ、スケジュール

  • 芸術家の地位に関する動向

  • 国内バレエ団における就労実態調査

  • チケットノルマについて

  • 子育てについて

  • 講師として復帰されてからのルーティーン

  • バレエ業界において女性は働きやすいか

  • 働く女性へのメッセージ

  • 時川かほる先生のバレエクラス情報

インタビュー後記

はじめに、インタビュー実施の経緯について、私自身の興味・関心との繋がりを記そうと思う。

経済学の研究者を志した理由

私が経済学の研究者を志したのは、芸術家の社会的・経済的地位を向上させたいと考えたためである。

私は、3歳の頃からバレエとピアノを習っていて、芸術全般が大好きである。高校生の頃までは、音楽大学や芸術大学への進学を考えていて、高校三年生の夏休みも芸術大学のオープンキャンパスに参加していた。ただ、卒業後、芸術家として生計を立てていくことがとても厳しい現実を考え、ギリギリまで迷った結果、進学を諦めた。

例えば、医学部に行けば、ほとんどの卒業生が医師免許を取得し、卒業後も医師として働くことができるが、芸術家が彼らの専門性を活かして卒業後も働くことはとても難しい。2歳や3歳の頃から専門的なトレーニングを積み、毎日何時間も練習して国内外の様々なコンクールに参加し、有名な先生にもついて、時間もお金も投資しているのに専門性を活かして職業とすることができる人はごくわずかである。確率で考えると、他の職業と比べても非常に低い。

芸術大学への進学を諦め、実用性が高そうと思って商学部に入学した後も、本来は芸術が好きなので、他学部で開講されている音楽史の授業や演劇学の授業などを受講したり、ピアノサークルに所属したり、大学がシェイクスピア劇を上演するプロジェクトに、文学部演劇学専攻の学生の皆さんに混じって参加したりしていた。

そんな日常を送る中で、たまたま商学部で開講されているミクロ経済学の授業を受けて、現実社会で起きている事象を論理的に解き明かしていることがとても面白いと感じた。

私が、芸術大学への進学を諦めた後も、「なぜ芸術家たちは凄まじい専門性を身につけながらもその専門性を活かすことができないのか」「社会でなんらかのミスマッチが起きているのではないか」とずっと考えていたため、経済学の枠組みを使えば論理的に研究できるのではないかと思って研究者を志した。

時川かほる先生との出会いと再会

18歳の頃に上京し、牧阿佐美バレヱ団 青山バレエハウスにレッスンに通うようになった。そこで時川かほる先生のレッスンを受講させていただいた。生徒一人一人に丁寧に向き合ってくださり、毎回のレッスンで確実に進歩が感じられるレッスンだった。

九州大学に就職が決まり福岡に引っ越したのち、なんと、時川かほる先生に再会することができた。実に10年以上の歳月を経て再び先生のレッスンを受けることができ、とても嬉しかった。

インタビューを通して

一生のライフワークとして芸術家の地位向上に取り組んでいきたいと考えており、インタビューシリーズ「はたらく女性に聞いてみた」開始当初から、芸術家へのインタビューは必ず行いたいと思っていた。今回、時川かほる先生にインタビューを行うことができ、大変光栄で幸せだった。

お話を伺って感じたのは、バレエを取り巻く環境の過酷さである。

プロのバレリーナになることは大変難しい。子供の頃から常に競争にさらされ、ヒエラルキーの上位に残ることができた人だけが、プロになることができる。しかし、プロになってからの待遇が恵まれているとは言えない。

大変な中でも、より良い芸術を私たちに届けるべく、日々努力を積み重ねていらっしゃるダンサーの皆様に対して、敬意と感謝の気持ちがより一層強くなった。

芸術家の社会的・経済的地位の向上のために私自身も尽力していきたいと思う。

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