コマンドRPGにおける「上手さ」と、難易度調整のお話
コマンドRPGにおける「上手さ」とは?
オクトラが好きで、たくさんの方の動画を拝見しております。そこで思ったんですよ。
オクトラってコマンドRPGじゃないですか。キャラクターは、同じコマンドを押したら同じ行動をとるじゃないですか。アクションと明確に違う点がここじゃないですか。アウトプットがプレイヤーの能力に依存しない。
それなのに、ラスボス1ターンキルしている人もいれば、数十分かけてじっくり倒している人もいるわけですよ。
そこで思ったんです。「コマンドRPGの上手さって何で決まるの?」って。
さまざまな方のオクトラ動画を見た上での持論ですが、コマンドRPGにおける上手さとは「そのゲームにおいて、強いコマンドを見つける力が高いこと」だと思います。
ここからは市販ゲーム『オクトパストラベラー2』と、拙作『精神仕掛けの浪漫劇』をれいに説明していきたいと思います。どっちも知らない方はごめんなさい。オクトラ2をやりましょう。
強いコマンド発見検定、まずは初級です。
初級ですから「何も考えずに単体で使っても強いコマンド」を見つけることができれば合格です。
オクトラ2なら例えば「傭兵呼び」「みんなでけしかける」「先駆け」「風呼びのうた」「真・十文字斬り」「エベルの鉤爪」「聖火神エルフリック」「残影」などでしょうか。
拙作の場合は、これでしょうかね。
拙作を知らない方が圧倒的大多数だと思うのでオクトラに例えると、「敵のオーラ行動を封じることができる」ってスキルです。はい、チートですね。敵に必殺技を撃たせないようにするとか、誰が見たって強い。
一歩進んだ中級者になると、「一見強さが分からないコマンド」の強さを見破れるようになります。
オクトラ2なら、例えば「ねんちゃく糸」。初心者は「順番が最後になるだけで結局行動されるんだから、そんなに変わらなくない?」と考えます。しかし「敵が行動する前にブレイクすることが大きなアドバンテージになる」というオクトラの本質を理解していれば、ねんちゃく糸のチートぶりが分かるでしょう。
このように、プレイヤーの思考のワンクッションが挟まることで強さに気がつけるタイプが中級です。
拙作ならこれが代表例かな。
これは「次の自分のターンまで、敵のあらゆる行動を一身に受ける」スキルです。一見すると「そのキャラが集中砲火されちゃうから、そんなに強くなさそう」な気がします。
しかし、中級者以上の方なら、このスキルのヤバさがお分かりでしょう。盾役にだけ守備リソースを割けば、アタッカーや補助役はいっさい守備面を気にする必要がないんですよ。だって盾役が守ってくれるもん。攻撃力全振り、補助能力全振りできるんです。「HPが少ないほど威力が上がるスキル」も遠慮なく使えます。だって盾役が守ってくれるもん。
しかもこのスキル、物理も魔法もデバフもぜーんぶ引き受けるんですよ。そこそこコマンドRPG慣れした人からは「バランス壊れちゃーう」って字幕つけられます。
さらに進んで上級です。
「一見すると強そうに見えない要素を組み合わせて、初めて凶悪な強さになるコマンド」を発見できたら免許皆伝。
要素というのは何もスキルに限りません。キャラだったり装備だったりも含みます。
オクトラ2なら「断罪」と「属性の乱れ」の組み合わせが代表例ですね。単体相手なら破格のブレイク性能を誇ります。属性の乱れを単なる攻撃技と見るなら、もっと強いコマンドはたくさんあります。そこで「断罪」と組み合わせて「ブレイク用スキルに変化させよう」という「発想の転換」ができたら上級者のあかし。
初代オクトラならルンマストレサが代表例でしょう。
拙作だと、そうですねー…私自身がゲームへたへたマッチョマンなので、オクトラみたいに巧妙な手口じゃないですが。
これとか。一見デメリットがデカすぎて使えそうにないですが、
このリプリス(パッシブスキル)と組み合わせると、ノーリスクで全能力強化できます。
あとは中級で出てきたかばうスキル。あれを特定のキャラに覚えさせて、特定の装備とパッシブスキルを組み合わせることで、100%回避盾にできます。ラスボスの攻撃を全部避ける盾ですよヤバすぎでしょ。バランス壊れちゃーうってレベルじゃねえぞ!
でも、この回答に辿り着くにはキャラ+スキル+装備+パッシブという4つの要素を組み合わせる必要があるので、このくらいヤバくていいんです。しかも「デメリット付きの装備」が必要なんですよ、この回答には。それをラスボス戦で装備できるくらいの猛者にだったら無双されてもいいよ。むしろ清々しいよ。ひとおもいにやってくれぇい!
そしておそらくですが、戦闘バランスに定評のあるフリゲ制作者様には、この戦法に辿り着かれてます。感想をいただいた時から熟練者のオーラを感じていましたが、優れた戦闘バランスのゲームを作る方には、チート戦法お見通しってことですね。
オクトラプレイ動画を拝見しまくって感じた「上手い人の法則」は、これですね。複数の要素を組み合わせた時の凶悪さを発見できている。
コマンドRPGで「難易度調整」という項目を作らずに難易度調整させるには
ここからは自分の備忘録。コマンドRPGにおける難易度の作り方について。
早い話、強さがハッキリ分かるコマンドと、組み合わせによって凶悪になるコマンドを作るってことですね。
初心者さんには、単体でハッキリと強さの分かる要素をガンガン使ってもらう。
ハッキリと強い要素に当たった時、熟練のRPGプレイヤーは察するでしょう。「あ、これって初心者救済コマンドだな?」って。
もちろん、選ばれしサド熟練者は、初心者救済コマンドを用いて無双プレイをお楽しみになります。
そして選ばれしマゾ熟練者は、救済コマンドを封じた神々の遊びを楽しむようになります。誰が見ても強いと分かるコマンドを封じて「縛りプレイ動画」とかあげちゃうんですよ。すると初心者は「え!? 傭兵呼び、みんなでけしかける、底力、上級職禁止でガルデラ討伐!? どうやんの!?」って食いつくわけです。そこで鮮やかな凶悪コンボを見せつけ、視聴者を唸らせるわけですよ。これが「上級者には高難易度で遊んでもらう」ってやつです。セルフ調整させるんですよ。
まとめると、このようにコマンドを分解するわけです。
単体で誰が見ても強力な初心者コマンド
一見すると強さが分からないが、活用法を思いつけばとても強い中級者コマンド
一見すると強さが分からないが、他の要素と組み合わせることで凶悪になる上級者コマンド
そして、救済コマンドは、あたかも特別なもののように演出します。苦労したことへの対価として出してあげるといいですね。もちろん苦労とは「ゲームを上手にプレイする」ことではありません。キャラのシナリオをクリアするとか、お金を貯めるとか、ポイントを稼ぐとか、素材を集めるとか、要するに「上手い下手関係なく、頑張れば誰でも達成できる苦労」です。
オーシュット編のクリアボーナスとして「みんなでけしかける」を入手する。「シナリオクリアボーナスの固有技だから、強いのは当然」として、気持ちよく救済コマンドを使ってもらえるわけです。「救済コマンドとバレることなく」。苦労の対価として得た強いコマンドですよ。それを使ってクリアしたところで、それは「苦労した甲斐があったなあ」としか思われない。救済コマンドを救済コマンドと認知できるのは熟練者だけ。真・十文字斬りが弱かったらヒカリくん涙目じゃないですか。むしろ強くなきゃダメなんですよ。強いことに説得力を持たせてあげれば、ライトプレイヤーは気持ちよく使ってくれるの。雑に強いものを使ったら物足りないマゾプレイヤーは封印すりゃいいんですよ。
え? 究極魔法は涙目じゃないのかって?
それだって私みたいな初心者には充分強力なの! 私のオクトラ2初見プレイ主人公はオズバルドさんなの! オズバルドさんをウェポンマスターにして属性強化装備を三つ積んでガルデラに挑んだデータが残ってるの! 魔法義賊オズバルドの放送を正座で待ってるの!
話がそれた。
拙作もそうです。例にあげた雑に強いコマンドたちは、習得に最もお金がかかるスキルです。一番高いスキルを大金叩いて覚えたんだから、強くなかったらむしろ詐欺ですよ。そのスキルが雑に強い理由を「初心者救済のため」と見破らせず、「苦労してお金貯めて買わせたスキルだから」と思わせたら勝ちです。
ポイントは「敵の強さは変えない」ことです。
だって嫌じゃないですか。全滅回数を記録されて、それに合わせて裏でコッソリ弱体化させてあげましたよーとか。そんな工作をされていたと分かった時点で萎える。「あ……下手でごめんね……」ってなっちゃうの。
いかに「初心者には救済とバレず、かつ、上級者には救済と分かる要素を仕込むか」。コマンドRPGの難易度調整の肝はここにあると思います。
今作っているフリゲは、初心者を気持ちよさで騙し、熟練者をコマンド構築で楽しませるバランスにしたいですね。
え? 普通に「難易度調整オプション」を入れろ?
私みたいに「下手くそなくせに一番下の難易度を選んだら負けた気がして拗ねるプレイヤー」だっているんですよ! 一番下の難易度名をイージーじゃなくてノーマルにすればいいって話じゃないんですよ! 結局それってノーマルモードが一番優しい接待プレイってことでしょうが! やだやだ! ラスボスに接待されてるとか考えたら萎え萎え萎えの萎え子さんだもん! クリアした気がしないもん! とあるゲームでラスボスに10回負けたら「イージーモードが開放されました!」とか言われて傷ついたもん! 「やーい! お前のデータ、雑魚の象徴であるイージーモードが出てやんの! m9(^Д^)プギャー!」って言われるもん! 全滅回数とかいう負の要素を記録されるのやだやだやだやだ(駄々っ子)
……こういう面倒くさいプレイヤーのために、救済を救済と思わせない工夫をしようってお話でした。
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