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【悪人】

人と人の感情の摩擦が強くて凄く生々しい。重厚感のある、そして全キャストの圧倒的な演技力を感じました。

「ねえ悪人は誰だったの?」と問わせたところで、私は〝悪人〟は存在しなかったのではないかと思う。大切な人を大切にし、灯台から美しい夕日を見せてくれた指名手配犯だった。

祐一は幾度とあった孤独から【飢える】ことと【埋める】ことしかわからなくなってしまったんだ。正常な愛を知らなかったから。だから、祐一は悪人ではない。そんな見解も許してくれないかと伝えたい。

光代を熱く抱いたのは佳乃への罪悪感と不安から始まったが故、すっかり愛情は歪んだものになってしまった。それでも光代にとって祐一との関係は一本の細い希望だったのではないか。

樹木希林がとんでもない存在感を発揮している…。
そして永山絢斗の演技、迫力あったなぁ。(役名忘れるくらいフォーカスかかってなくて…)
きっと彼は早い時から気付いていた。増尾への嫌悪感、事の異常さも全て。だから無力に振りかざされたレンチはコイツの身体も心も粉砕した。

吉田修一×李監督は怒り以降2作品目の鑑賞だがどのシーンも人物の背景や感情、そして存在感が強い。音楽も基本淡白だけどストーリーの流れと波動していくのが特徴的。結構重いけど、表出されない内に煮えたぎるようなものを伝えてくる印象です。

最後に本作のMVPは、おばあちゃんを乗せたバスの運ちゃんに贈りたいと思います。

#映画 #映画レビュー #悪人

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