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友だち関係が変わる時

今回の相談は、4歳児クラス15名の担任からです。年度の途中でA君が家庭の都合により退園しました。退園したA君と仲の良かったB君は、A君がいなくなってから落ち着きがあまりなく、保育士に注意されている場面が多くなってきました。「どうしたら落ち着くのでしょうか…。」という相談です。
【保育士編】事例10

◆年度途中の退園は小学校の転校より多い

保育園は3歳児から保育料が無料になり、有識者の中では、
「実質、義務教育は幼児期(3歳)以降から始まっている。」という見解を示している方もいるように、就学前に児童福祉施設に通うこどもが殆どです。

そして、就学前に子どもが通う施設は幼稚園や保育園、認定こども園、インターナショナルキンダーガーデン等、小学校に比べると様々な形態があり、家庭のニーズによって選択されています。

家庭のニーズの中には、小学校からは子どもを通わせたい学区に住民票を移したり、子どもの教育環境選びとして、幼稚園や保育園の時期に引っ越し等を行う家庭も少なくありません。
更に保育園は認可、認証、子ども園、企業主導型、保育室等といろいろあり、保護者は家庭の収入や仕事との両立、保育内容や環境などを鑑みて通わせたい保育園を選定しています。

このような背景から、幼稚園や保育園在園中に子どもが退園することはよくあります。特に認可外保育施設に通わせている家庭は認可保育所に通わせたいと考える保護者も多く、保育園在園中に認可保育園の途中入園をさせる手続きをしている家庭も少なくありません。

◆仲の良かった友だちがいなくなる

今回のケースでは、保育園の退園が分かった段階で、保育士はクラスの子どもたちへ、A君がいつから保育園に来なくなるのか、いつまでA君と遊ぶことができるのか伝えます。そして、A君とお別れの日まで楽しい思い出をたくさん作り過ごします。

一方で、もうA君とあと1ケ月でお別れと聞いた子どもたちの心境はどうでしょうか。今回のように4歳くらいであれば、「寂しい」という気持ちが徐々に芽生えてくる頃です。子どもの中には、気持ちが落ち込む子どももいるので、A君だけでなく、他の子どもたちの気持ちに寄り添いながら”寂しい”という気持ちを大切にし、お別れの日を迎えていきます。

◆さよならした翌日から落ち着きがなくなる

我々大人が仕事や生活の連続性を持っているのと同じように、子どもたちにも遊びや保育園生活が連続しています。
特に幼児期になると、遊びの中で仲良しの子、お気に入りの子、あまり遊ばない子と、子どもの中でカテゴリーができてきます。

これを城本は、

「友だちの構成比率」

と呼んでいます。

A君と仲が良かったB君は、A君がいなくなった翌日から遊ぶ相手の優先順位が変わってきます。
ここで、A君がいた時のB君の友だちの構成比率を見てみます。
1日の内で、
・約70%程⇒A君との関わり合い。
・約30%程⇒クラス全体による活動や複数人の友だちとの関わり合い。

この構成比率からB君の気持ちを推察すると、お別れした翌日のB君の気持ちは、これから誰と遊んでいこうか…と不安な気持ちとぽっかりとあいた約70%分の寂しさを感じ取ることができます。

そして、今までA君と友だち関係で築いてきた「阿吽の呼吸」や「力加減」は他の友だちには殆ど通用することもなく、新たにどう関わっていけばよいのか上手く表現できなくなり、今までA君にしてきたのと同じ力で友だちを押してしまったり、会話を途切れさせてしまう、他の友だちが嫌だなと感じることをしてしまうのです。

挙句の果てに、保育士には落ち着きがなくなった、他の友だちが嫌がることを行うようになった⇒「困った子ども」へ一時的に位置付けられるのです。

◆保育士がやるべきこと

今回のケースでは、1日も早くB君の友だちの構成比率が安定したものになるよう援助や配慮が必要です。
例えば、
・B君とA君が他の友だちを呼んで遊んでいたE君やG君と継続して遊べるよう、遊びの仲立ちを行い見守っていく。
・B君の力加減について叱ったりするのではなく、丁寧に遊び方や友達との関わり方を伝えていく。等々。

また、同時に、B君の友だちの構成比率が変化するという事は、他の13名の友だちの構成比率も変化します。

たった1名退園しただけと侮ってはいけません。
今までは15名でクラスの子どもたちの関係性はバランスを保っていました。
しかし、1名減ったことにより、子どもたちの気持ちのよりどころや発散の方向は変わってきます。

新たな構成比率が生まれるよう、クラスで新しい遊びを取り入れてみる、席替えやロッカー替えをしてみる等、普段の生活の中で自然な流れで今まであまり接することがなかった子どもたち同士が接する機会を持つことができる環境を考えていきましょう。

◆まとめ

我々保育士は、日頃から子どもたちの一人ひとりの、友だちの構成比率をよく観察しておく必要があります。

子どもは大人と違って、友だち選びは相性や性格、本能的な波長から選んでいます。そこに利害関係は存在しません。
だからこそ、構成比率が変わる時は丁寧に対応する必要があるのです。

皆さんの園で子どもが退園する際は、残った子どもたちをよく観察し、自然な流れで、新たな子どもたち同士のバランスを整えて行くようにしましょう。

保育士の皆さん応援しています!!



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