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乳幼児突然死症候群(SIDS)予防のためうつぶせ寝を仰向けに戻すのが大変です。

今回の事例は、保育園のお昼寝中に起きる可能性があるSIDSについて、うつぶせ寝の子どもを仰向けにする業務負担を軽くしたいという保育士からの相談です。【保育士編】事例7

◆結論

解説前に伝えますが、
「うつぶせ寝の子どもを仰向けにする業務負担を軽くしたい」事について、

「子どもの生命保持に伴い、仰向けにする必要があるため、本件について業務負担を軽くすることはできません。」

◆乳幼児突然死症候群(SIDS)とは

今までの健康状態や既往歴から死亡することを予測できず、原因が特定されない、原則として1歳未満の子どもに突然の死をもたらすと厚生労働省では定義付けられています。窒息などの事故とは違います。

【疾患内容】
主として睡眠中に発症し、日本での発症頻度はおおよそ出生6,000~7,000人に1人と推定され、生後2ヵ月から6ヵ月に多く、稀には1歳以上で発症することがあります。

◆保育園での午睡チェック

保育園では子どものお昼寝中に子どもの生命の保持のため睡眠チェックを行っています。睡眠チェックの間隔は各歳児によって変わってきます。
・0歳児…5分おきに1回
・1~2歳児…10分おきに1回
・3~5歳児…15分おきに1回
※東京都福祉保健局より睡眠チェックが望ましいとされている間隔

また、時間における確認のほかに、寝ている姿(仰向け、横向き、うつ伏せ)の確認も行います。これらの確認は、保育士が一人ひとりの子どもを目視だけでなく子どもに直接触れるなどして呼吸が止まっていないかなどを確認しています。うつ伏せになっている子どもは保育士がそーっと仰向けに戻しています。

もし、うつぶせ寝している子どもを仰向けに戻した際に起きてしまったとしても、再入眠へ促すようにします。せっかく寝かしつけたのに、体勢を変えたことによって子どもが起きてしまっても危険な状態になるより命の安全が優先です。

◆子どもの寝ている時の姿勢

保育園ではSIDSを予防するために、子どものうつ伏せ寝は最も危険な姿勢として位置付けられています。
また、最近では横向き姿勢についても子どもの生命の維持について、安全の担保を図ることができない可能性があると、各自治体より注意喚起が出ており、横向き姿勢の際も仰向けにするよう指導事項として上がっています。

◆午睡チェック中の職員配置

保育士は1日の業務の中で、子どものお昼寝中に休憩時間を過ごす園が殆どです。そのため、職員は交代で保育から離れるため、各クラス適切な職員配置を確保するために、フリー職員や子育て支援員、みなし保育士等、子どもが寝ている時でも安全配慮義務を怠ることなく配置する必要があります。

最近、保育士不足が問題となっていますが、子どもの生命の維持を担保するためにも、保育士で頑張っている職員のスキルアップや労働環境の担保のためにも、保育園を経営している事業主等は、保育士が働きたいと前向きに思えるような処遇改善とキャリアアップ制度などの導入を行い、採用に最大限注力しなければなりません。

◆万が一事故が起きた際は

起きてはならないことですが、万が一、呼吸停止の子どもを発見した際は、各園に備えられている緊急時対応フローに沿って適切な処置を行う必要があります。
特にSIDSによる事故は入園して半年以内に起きているケースが多く、新入園児や新規職員の入職、環境の変化など、子どもや保育士は十分なコミュニケーションが取れていない状況です。

そのため、各園では緊急時対応フローの研修や勉強会などを行い、万が一に備えておかなければなりません。

◆まとめ

過去にSIDSで亡くなったとされる事故がニュースでありました。また、保育園での死亡事故はSIDS以外でも起きています。
今回の相談では冒頭に結論として、子どもの仰向けにすることに対する業務負担軽減はないと記載しました。

この件のみならず、子どもの命の保持と業務負担軽減を天秤にかけることは絶対にできません。
厳しいようですが、業務負担軽減できるところは他の保育業務の中で工夫していきましょう。また、これらの負担軽減は各園の園長・主任が率先して実施し、保育士を守らなければなりません。

これまでに何千人もの保育士と仕事をしてきました。
時として、子どもの怪我や事故の現場にいた保育士は自責の念に駆られ、保育士として立ち直れなくなり、現場から去っていくことがありました。子どもや保護者のために全力で頑張っていた保育士には、自信だけでなく笑顔すらありませんでした。

怪我や事故を恐れる必要はありませんが、我々ができる最大限の危険予測と予防や防止策を実施し、子どもの命を守っていきましょう。

保育士は大変な職業ですが、素晴らしい職業であることを自信を持ってください。
保育士の皆さん、応援しています!!










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