見出し画像

食物アレルギー:緊急時の対応

食物アレルギーのお子さんに、「強いアレルギー症状」が出た場合、どうしたら良いのでしょうか?今回は、その緊急時の対応について、書いていきます。


エピペンを打てるか?

エピペンをお持ちの方が最初に思い浮かぶのは、エピペンを打てるかどうか?かも知れません。いざという時のために、事前にエピペンの使い方をきちんと学習して、時々忘れないように復習しておけば、エピペンを打つことのやり方自体はそんなに難しいことではありません

ただ、もっと重要なのは「エピペンを打つまでの対応」「どうなったらエピペンを打つかの判断」です。「エピペン以外の対応方法」も重要です。

おおまかな流れは、このようになります。

画像1

https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/allergy/pdf/zenbun1.pdf

ここからは、エピペンを持っているお子さん、持ってないお子さん、いずれの方にも重要な緊急時の対応について、具体的に解説していきます。

アレルギー症状を発見する

まずはアレルギー症状を発見しないといけません。食物アレルギーのお子さんが、何かいつもと違う気がする、何らかの症状らしきものがある、などの場合は、まずはアレルギー症状を疑って、しっかり対応しないといけません。特に食事の最中、食後1-2時間以内に何らかの異常を訴えたら要注意です。

多分違うだろう、気のせいだろう、とせずに、また、まだ症状が軽そうだから大丈夫、前より軽いから大丈夫、と油断せずに、しっかりその後の経過を追って観察すべきです。可能であれば、1-2時間は観察したいところです。

緊急性が高いかどうか判断する

アレルギー症状を確認して、緊急性が高いかどうかを判断します。「緊急性が高い」と判断すれば、その場からむやみに移動せず、その場で対応、急いでその場に人を集めて、緊急対応をしないといけません

「緊急性が高い」=その場から移動しない、ショック体位、救急車を呼ぶ、あればエピペンを打つ、これらを同時進行で進めていく

アレルギー症状の確認のコツ

アレルギー症状を確認する際に、多くの方は、「大丈夫?」って聞くと思います。もちろん、「大丈夫?」って聞いても良いのですが、その後には、より具体的に聞かないと、お子さんは答えに困ります。「気持ち悪いけど大丈夫」、「少し苦しいけど大丈夫」も、「大丈夫」という答えになりますし、「なんとなく大丈夫」、「とりあえず大丈夫」も、「大丈夫」という答えになります。また、お子さんが自分から、自分の症状を全部訴えるのは非常に難しいことです。

積極的に、部位別に、症状がどうか、を確認!

例えば、こんな質問です。

・ふらふらしない?(全身症状)
・ここどこかわかる?(意識)
・かゆいところはない?(皮ふ)
・口の中は変?(粘膜)
・苦しくない?(呼吸器)
・お腹は痛くない?気持ち悪くない?(消化器)

症状が複数の内臓にわたっていないか、それらの症状が強くないか、要はアナフィラキシーかどうかの判断が重要となります。

もちろん、「エピペンの適応となる症状」がある場合は、お子さんを移動させてはいけませんし、緊急性はかなり高くなりますエピペンが無い場合は早急に救急要請する必要があります

「エピペンを使用すべき症状」

全身の症状:
唇や爪が青白い
脈を触れにくい・不規則
意識がもうろうとしている
ぐったりしている
尿や便を漏らす

呼吸器の症状:
のどや胸が締め付けられる
声がかすれる
犬が吠えるような咳
持続する強い咳込み
ゼーゼーする呼吸
息がしにくい

消化器の症状:
繰り返し吐き続ける
持続する強い(がまんできない)おなかの痛み

「エピペンを使用すべき症状」が一つでもある場合は、
・ショック体位として安静を保つ
・エピペンを打つ
・救急車を呼ぶ、を同時進行
で進めていきます。

ショック体位とは?

頭を心臓より高く上げず、仰向けに寝かせます。低い血圧でも頭の血流をなんとか保つように、「頭を胸より高く上げない」ように心がけます。足を少し上げると、足の血液が体の方に戻ってくるので、より多くの血液を頭に向かわせることが出来、有利となります(小さいお子さんの場合、足を高く上げ過ぎると体勢が窮屈となる可能性がありますので、可能であればで良いかと思います)

アナフィラキシーの場合だけではなく、なんとなくフラフラしていて、頭の血流を保ちたいような状態(=意識障害、熱中症、立ちくらみ、大出血、など)の時には、迷わずショック体位にしてください。

緊急性の高い症状が無くて、移動出来そうなら、ゆっくり一緒に歩いて、保健室や安静に出来たり観察出来たりする場所に移動します。走ったりすると血液の循環が良くなって症状が悪化する可能性があります。

移動出来そうな症状

軽い皮ふの症状
軽い粘膜の症状
軽い嘔気、腹痛、など

咳は要注意です。軽い咳の場合は移動可能な場合が多いですが、咳がひどいかどうか迷う場合、移動して良いか迷う場合は、移動せずにその場で対応しましょう。

緊急時を想定して対策

緊急時にパニックにならないように、しっかり事前に準備をしたり、どうすれば良いかを想定しておく必要があります。

学校や園であれば、可能であれば、教員同士でロールプレイしておくと良いでしょう。

『学校におけるアレルギー疾患対応資料:文部科学省』の動画も非常に参考になるかと思います↓


親御さんと学校とで相談しておく

学校の先生と親御さんとで、緊急時の対応について、事前に綿密に相談しておきましょう

誤食は起きて欲しくは無いのですが、人にはミスはつきもの、誤食が起こった時にどうするか?ということも事前に話し合っておく必要があります。

緊急時になって初めて相談となると、対応について1から10まで相談しないといけません。そもそも時間との戦いなのに、そんな時間はもったいないです。なおかつ、緊急時において、対応方法について両者の意見が異なると迅速に対処できないので非常に困ります。

普段から本人に話しておくこと

・わからないものは食べない、大人に聞くこと
・食べて変ならすぐに吐き出すこと
・体が変と思ったらすぐに言うこと
・出来るだけ症状を伝えること
・ひどい時は動かずに大人を呼ぶこと、近くの誰かに大人を呼びに行ってもらうこと
・エピペンは重要、打つ際は暴れずに頑張ろう

まとめ

まず症状を発見、確認
緊急性を判断=移動出来るかどうか判断
迷ったらエピペン、救急車、ショック体位

緊急時の目標は、「早く病院に着いて処置してもらうこと」、エピペンを打つことではありません。エピペンを打つことに手間取って、時間を費やして、病院に着くのが遅くなったら本末転倒です。お一人で対応していてエピペンを打てそうにない場合は早々に救急車を呼びましょう。救急車が来れば、救急隊と一緒にエピペンを打つことも可能です。

緊急時にどうするか、普段から想定して準備、対策しておきましょう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?