vol.30_とある選考にいた人の話

   なんだかんだちょこちょこ就活をやっている。あんまり興味無いけど練習も兼ねてよく分からないとこの選考を受けた。1時間以上かけて東京の市まで受けに行った。


   会場に到着し、案内の人に誘導され席へ。グループワークというのは聞いていた。興味無いとはいえそれなりに真剣な雰囲気を醸し出し、志望度の高さを演出するため緊張感も発した。


   そんな中、前のテーブルのグループの一人の服装を見ると、自分がバカバカしく思えるような光景だった。
その人は、上下普通のスーツを纏い、ノースフェイスのダウンを羽織っていた。しかも黄色。そして着席しているその人の足元に視線を向けると赤の靴下ではないか。おまけにくるぶしソックスやし。校則破り中学生か。その企業よりもその彼に興味を持った私は、惰性で選考のワークをこなし、ずっとその彼を観察していた。
その結果、彼はとても真面目な人間だということが分かった。選考にそぐわない格好をしている割に、めちゃめちゃちゃんと話を聞いていたし、メモをとっていたし、ちょっと芯食った質問をしていた。グループのメンバーとも積極的にコミユニケーションをとっているように見えたし、休憩時間には社員に話しかけていた。このことから志望度はそれなりに高いのだろうと推測した。


   だとするならば、どうして彼は
「スーツでお越しください」と明記されていたにも関わらず、黄色ノースフェイスダウンを着て、赤くるぶしソックスを履いてきたのだろうか。


   グループワーク選考が終了し、その彼を帰り際に見かけた。座っていたため見えなかったが、よく見るとドクターマーチンの穴がないタイプのレザーシューズを履いていた。
私は彼の顔を見て爆笑してしまった。ごめんね

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