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第62回 マンション防災を考えよう

災害時のマンション 水道について

皆様こんにちは。マンション防災研究所の城戸です。

このマンション防災を考えようのシリーズでは、マンションという集合住宅では戸建てとは違ったさまざまな設備や管理運営の仕組みがあることから、一般的な地域防災とは別の考え方が必要になる内容も多いため、「マンション防災」としての考え方をいろいろと考えています。

本年1月1日に発生した能登半島地震について、各方面でそれぞれの分野で報告会等が開催されるようになってきました。被災地ではまだまだ復旧・復興には程遠い状態であるところも多いのですが、地震そのものや支援活動の初動などについては検証が進んでいるのです。

さて、そんな中今回のマンション防災については、水の問題を取り上げたいと思います。
何度か書いたように、今回の能登半島地震では地域的にも俗に言うマンションが少なかったためにそれほど大きな問題としては取り上げられていません。
しかし、特に首都圏を中心とした地域のマンションにお住いの方から、断水についての質問をされる場合が増えていますので、少しそのことについて考えます。

能登半島地震でも、水道管の損傷による断水が発生しました。1月29日にやっと七尾市まで復旧したものの、本日現在まだ震源地である珠洲市での復旧はできていません。現地では給水車で水を運び、地元住民はそこから水を確保することになります。

マンションの場合はどうでしょうか。
これはマンションにお住まいの方も理解していない方が多いのですが、多くのマンションでは地域の水道管からマンションの受水槽(貯水槽)に一旦水を溜め、そこからポンプを使ってマンション屋上などに設置された高置水槽に水を送り、各住戸にはそこから自由落下で送水しています。
この場合、地域(マンション)が停電するとポンプで水を高置水槽に送ることができず、高置水槽の水が無くなった段階で断水することになります。
しかし、マンション敷地内の受水槽には水が残っているため、受水槽に緊急時用の蛇口を設置しておくことで多少は水の使用をすることができるので、マンションでは貴重な水源の一つとして考えられます。

ただしその場合でもいくつかの注意ポイントがあります。
まず、受水槽に蛇口を付けて緊急時に使用することについては管轄の水道局に相談が必要です。水道は使用量に応じた水道料金を納めなければいけませんが、住戸ごとの使用量はマンションの場合は各住戸に届く前に取り付けられたメーターによって計られているのです。受水槽に蛇口を付けてそこから水を取り出して使用する場合、どの住戸が水を使用したのかが判別できないため、料金の請求先が不明になってしまいます。
もちろん緊急時にそんなことは言ってはいられないという場面での使用ですが、平時の使用を完全には止められない、把握できないので、水道局によって蛇口の設置そのものや設置の条件などは判断が分かれている場合もあるようです。
また、受水槽の水は飲料水として使用可能ですが、地震の揺れによる受水槽自体の破損や、水道管の損傷によって不純物(土砂など)が混じった状態になる可能性もあるので、使用時には注意することが必要です。

マンションによっては地域の水道管から直結して給水をしている場合もあります。この場合は停電しても水道管から直接水が送られているので、断水はしません。
しかしながら、この直結給水の場合も注意が必要です。
一つは、地域の水道管そのものが損傷するなどして地域全体が断水した場合、マンション内ももちろん断水します。またある程度以上の階数があるマンションでは、水道管の圧力では高層の住戸に水を送ることができなくなるため、途中で増圧装置を設置して圧力を高めている場合があり、この場合だと下層階では水が出ますが、高層階では断水することになってしまいます。

お住いのマンションがどのようなしくみになっているかによってその対策、対応の仕方が変わりますので、良く把握して対策を検討してください。

今回はここまでです。
次回ですが、特別に時事的な話題が無ければ、マンションの災害対応における居住者の責任について考えたいと思います。

また次回以降も引き続きご覧いただければ幸いです。

マンション防災研究所 所長 城戸 学

マンションに限らず防災関連のセミナーや講演、コンサルティングなどのご依頼をお待ちしております。よろしくお願い申し上げます。

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