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第97回 マンション防災を考えよう

マンションの防災マニュアル

皆様こんにちは。マンション防災研究所の城戸です。
このマンション防災を考えようのシリーズでは、マンションという集合住宅では戸建てとは違ったさまざまな設備や管理運営の仕組みがあることから、一般的な地域防災とは別の考え方が必要になる内容も多いため、「マンション防災」としての考え方をいろいろと考えています。

前回、マンションの防災組織と災害対策本部の違いや役割を考えました。今回は、そのマンション防災組織で作成する「防災マニュアル」について考えたいと思います。

マンションの「防災マニュアル」とは、何を指すのでしょうか。
言葉通りで取るならば防災マニュアルは、防災のマニュアルです。防災とは、事前の準備を含む、災害に対するすべての活動マニュアルということになります。当然そうなると防災組織の活動計画なども入ってしまうのかということになりますが、そうではありません。
これも前回の防災組織と災害対策本部の関係と一緒で、言葉の定義、意味を整理して考えるべきだと思います。防災組織が行う活動(防災マニュアル作成を含む)は、「防災組織活動計画」に近いと思います。組織の成り立ちにもよりますが、年間計画、規約、活動方針、そのような言葉で考えた方がいいと思います。

そして「防災マニュアル」ですが、これも防災活動の指針、指南書に近い意味合いと、「災害対策本部行動マニュアル」に近い意味合いとが混同していると思わしき発言などが見受けられます。
「防災マニュアル」とは、その団体が災害対策のために考えた「災害発生時の行動マニュアル」です。
災害発生時にしなくてはならない事、発災直後から被災生活まで、組織的な行動をとるための指針であり、考え方と行動を示したものです。
特にマンションでは、その付帯事項として、「事前の各住戸における準備」や、「災害対策本部の結成・組織と役割・各係の仕事」などがついてくるという形です。したがって、戸建ての居住者の場合は、ある意味組織としての活動がないので、災害発生時の行動だけになるのです。これが自治会。町会などの「組織」になると、マンションと同様の組織行動マニュアルになるという考え方です。

さて、ではこの防災マニュアルには、どのような項目が入ってくるのでしょうか。マンションごとに立地や環境、設備の違いなどがあるので、ここでは基本の形だけを示したいと思います。

<災害想定>これは自マンションにどのような災害がどの程度の規模で起こるのかをまとめ、リスクを整理して対策を取るための根拠とするものです。自治体などのハザードマップや地域防災計画の災害想定などを参考にしてまとめます。もちろんそこにはマンションで被害が生じた際の状況も入れることで、居住者に危機意識をもってもらうことも考慮します。

<事前対策>各住戸での備えや組織での備えを書き、組織での準備の状態や対策を周知し、各住戸での備えの指針として備えを進めてもらうための参考になるようにします。ここでは、マンションの各設備の対策なども書きますが、災害時の対応については後述の対策本部などのところでも書きます。

<災害時行動>各住民が発災時から被災生活まで各住戸ですることや、組織活動に協力することなどをまとめ、自分で在宅避難生活を守ることと組織への協力を依頼します。

<災害対策本部>災害発生時に立ち上げる災害対策本部についてです。結成条件、参集仕組み、組織構成、役職の決定、各部門の仕事と連携、各仕事の方法論まで網羅します。まさに防災マニュアルの中心部分です。この考え方と組織構成については、次回以降で考えます。

<参考資料>ここでは、例えば以下のような内容が資料として添付されます。備蓄資機材、地位の公助施設など、地域避難所などの防災マップ、マンション内施設の取扱い方法、管理規約や使用細則などです。

こう考えると、意外と項目が多岐にわたり、決めることが多いということに気づくと思います。集合住宅であるマンションでは、多数の人が行動する、共有の資産を維持管理することが必要なので、集団生活・活動が必要であるために、いろいろ決めておくことがあるのです。しかしながら、大枠は大体決まっている(どのマンションでも共通の考え方ができる)部分があるので、専門家の指導を受けながらであれば、思ったよりは進むと思います。それでもマンションごとに条件や決め事が変わる部分もあるので、ある程度の時間は必要ですが。

皆さんも自マンションの仲間を集めて、組織を創り、このマニュアルの作成を目指してまずは進めてみましょう。

今日はここまでです。次回はマニュアルの内容に出てきた災害対策本部について振り返りを含めて考えていきます。

マンション防災研究所 所長
防災士 福祉住環境コーディネーター
城戸 学

マンションに限らず防災関連のセミナーや講演、コンサルティングなどのご依頼をお待ちしております。よろしくお願い申し上げます。

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