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第68回 マンション防災を考えよう

マンション防災の基本的考え方 前提条件

皆様こんにちは。マンション防災研究所の城戸です。
このマンション防災を考えようのシリーズでは、マンションという集合住宅では戸建てとは違ったさまざまな設備や管理運営の仕組みがあることから、一般的な地域防災とは別の考え方が必要になる内容も多いため、「マンション防災」としての考え方をいろいろと考えています。

マンションの管理組合、防災委員会などに防災に関するアドバイスをさせていただく際に、「マンション防災を考えるときの基本的な考え方、前提条件はあるのですか?」というご質問をよくいただきます。このシリーズでは最初に書いたのですが、改めて少し考えていきたいと思います。

前提条件1
分譲マンションというのは、それぞれのお部屋だけでなく、その建物が建っている土地も含めたすべての資産を共同で持っている「区分所有者」の団体「管理組合」が運営管理をします。したがって、例えば災害などにより破損してしまったところの修理や、万一住めないほどに損壊してしまった場合のマンションの処分(取り壊し)や建て替えなどの判断は個人や一部の所有者だけでは決められません。すべては管理組合での合議、総会での決議により決定され実行されるのです。つまり、共有の資産を持っている者同士の協力により、その資産価値を維持(保全)向上させなければならないという環境であることが大前提です。

前提条件2
その中で、防災活動を考える際に前提となるのは、公助は期待できないということです。大規模災害の発生時には消防、警察、救急、自衛隊、行政職員などの支援、対応などの公助と言われるものには期待できません。火災も含め災害が一部エリアに限定的である場合などはその場所に集中して支援や対応をすることができますが、大規模な災害などの場合は、「このマンション」には来てくれません。圧倒的な人員不足、資器材不足、道路事情、その他の要因で対応できない、また優先順位として病院や学校、役所などの支援を先に行うので、一般の住宅など市街地への対応は遅くなるため、特に人命救助など災害発生後に支給の対応が必要な場合でも、来ないと思っていただいたほうがいいでしょう。

前提条件3
同様に、分譲マンションの多くがその管理運営を委託している「マンション管理会社」も対応ができないということです。平時の管理運営に関することでしたら、相談に乗ってもらうことや支援してもらうことは委託契約の葉に内でしていただけます。ところが、その委託契約の内容には災害時の対応は入っていないのが一般的です。万一その対応が入っていたとしても、大規模災害発生時には管理会社も同様に被災するので、対応できない状態になります。フロント担当者を含めた社員は交通機関の麻痺、道路の通行止め(幹線道路は緊急車両のため強制的に通行止めになります)などの影響でマンションの現場には来ることができません。管理員がマンションにいる勤務時間帯だったとしても、管理員家族の安否確認や生活を守るためにできるだけ早く帰宅する必要があります。(管理員はマンションに自転車などで通勤できる距離に居住している場合が比較的多いのですが、もちろんすべての方がそうではありません。)したがって、管理会社の協力を得ず、マンション居住者、災害が発生したときにマンション内にいた居住者だけで互いに助け合い(共助)、対応をすることが求められます。

今回はここまでです。
まだ前提となる条件が残っていますので、次回以降も引き続きご覧いただければ幸いです。

マンション防災研究所 所長
防災士 福祉住環境コーディネーター
城戸 学

マンションに限らず防災関連のセミナーや講演、コンサルティングなどのご依頼をお待ちしております。よろしくお願い申し上げます。

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