ニンジャの基本はアゴニィさんに教わろう
「ニンジャスレイヤー」は「ニンジャ」と呼ばれる超人的存在が闘うアクション小説です。この記事では第1部に登場する悪役「アゴニィ」さんに注目して、物語の中心となる「ニンジャ」とはどういうヤツなのかを紹介したいと思います。
ネタバレなどは心配しないでください。アゴニィさんは実際のところ脇役、それも1話こっきりの通りすがりです。この記事はアゴニィさんの記事であり、アゴニィさん以外の部分にはほとんど触れません。
1.アゴニィさんとは?
「ニンジャスレイヤー」第1部のエピソード「キックアウト・ザ・ニンジャ・マザーファッカー」に登場する悪役で、大盛況のライブハウスに現れて客を惨殺したのち、主人公・ニンジャスレイヤーさんに倒されます。
2.アゴニィさんはなぜライブハウスに現れたのか?
物語は男子高校生のギンイチ君が、かわいい女子のイチジクさん(すごくかわいい!)にライブハウスへ誘われるところから始まります。実はこのライブハウス、地上げに抵抗している真っ最中。脅しに来たヤクザを返り討ちにするほどタフなお店なのですが…。
困り果てたヤクザは上位組織に助けを求めます。ここで登場するのが「ニンジャ」です。
このシーンでわかること:
・ニンジャはヤクザの上位組織から派遣される。ヤクザにとっては最終手段。
・上位組織(SOUKAI)に相談窓口のアカウント(SOUDAN)があることから、ニンジャを擁する組織は多くのヤクザと頻繁にやり取りしていると想像される。
この通信により、いよいよアゴニィさんが登場します。
3.アゴニィさんはどういう立場なのか?
「近くにいたので来ました」と無線タクシーみたいに現れたのは全身針だらけの怪人でした。この人がアゴニィさんです。
「お名刺出しましょうか…」。記憶に残るセリフです。事務所の入り口にいた人物をどうしたのか? 依頼人のタメジマさんはアゴニィさんの様子に震えあがっています。
このシーンでわかること:
・この小説におけるニンジャは、常識から外れた怪人である。
・ニンジャのほうがヤクザより立場が上である。変な格好でビジネスの場に来て、訪問先の人にひどいことをしても怒られない。
・ニンジャをつかった暴力ビジネスが確立しており、アゴニィは「ソウカイ」に所属してそれに従事している。名刺もある。
ライブハウスをめぐり危険な気配が満ちていきます。アゴニィさんが出ていないシーンの街や学校の描写と合わせると、小説「ニンジャスレイヤー」の舞台となる街、社会の構造、街を暴力で支配しようとしているもののすがたが何となく見えてきます。
4.アゴニィさんのお仕事とは?
高校生のギンイチ君とイチジクさんがライブを楽しんでいるところに、アゴニィさんがビジネスを遂行しにやってきます。
(余談ですが、ギンイチ君がパンクバンドの演奏を聴くシーンはほんとうに素晴らしいシーンなので、未読のかたは是非とも本編を読んでください)
アゴニィさんはモクギョコアDJと4人のパンクスをあっという間に殺害し、フロアを恐怖によって掌握します。
アゴニィさんは依頼人のタメジマさんをも殺害しました。自分の所属する組織で直接地上げを行う方針のようです。アゴニィさんはこの場にいる人間を次々とタタミ針のオブジェにしていきます。
このシーンでわかること:
・ニンジャには普通の人間ではかなわない。圧倒的に強い。
・ニンジャを派遣する組織(ソウカイ)は、依頼人を殺して利益を横取りしても特に問題がない。一般人をヤクザが、ヤクザをソウカイが食う構造になってる。
・こんな事が仕事として日常的に行われているとすると、警察はニンジャの犯罪に対してまったく役に立ってなさそう。
ニンジャの危険さと傍若無人ぶりがわかってきたところで、主人公・ニンジャスレイヤーさんの登場です。
5.アゴニィさんはどうなったか?
アゴニィさんによる趣味と実益の殺戮タイムは主人公・ニンジャスレイヤーさんの乱入によって終わりを告げます。戦いのなかでアゴニィさんの強さの秘密は暴かれ、ニンジャスレイヤーさんの前で死を待つばかりとなります。
はじめて「ニンジャスレイヤー」を読む人は、主人公がべつにライブハウスの人々を助けるつもりで来たのではなかったこと、アゴニィさんを痛めつけるのに喜びを感じていることに驚くかもしれません。ニンジャスレイヤーさんもまた恐ろしいニンジャだったのです。
アゴニィさんとニンジャスレイヤーさんの激しい戦いの様子、ギンイチ君の気概、ニンジャスレイヤーさんの内にある苦しみについては本編を読んでください。ここが「キックアウト・ザ・ニンジャ・マザーファッカー」のいちばん面白いシーンですが、アゴニィさんの話ではないのでこの記事では書きません。
このシーンでわかること:
・ニンジャにはニンジャ筋力のほかにも特殊な力があり、それが強さの秘密。
・ニンジャスレイヤーはニンジャを殺すために生きているニンジャである。
このエピソードは別のエピソード「バック・イン・ブラック」で列挙される、ニンジャスレイヤーさんがニンジャになった直後に行ったニンジャ連続殺戮のひとつです。これを皮切りに、ニンジャスレイヤーさんとニンジャ組織「ソウカイヤ」との戦いが始まります。
6.ソウカイヤから来たアゴニィさんがニンジャの基本を教えてくれる
「キックアウト・ザ・ニンジャ・マザーファッカー」は「ニンジャスレイヤー」のなかでも特に人気が高く、初めて読む人にもおすすめのエピソードと言われています。
男子高校生ギンイチ君の青春、あるいはギンイチ君の目から見たネオサイタマの社会、パンクバンド・アベ一休の風刺のきいた歌詞、危険なニンジャ同士の戦い。様々な魅力がこのエピソードには詰まっています。
同時に、このエピソードは「ニンジャスレイヤー」の基本が詰まったお話でもあります。これから物語のメインキャラクターとして星の数ほど登場する「ニンジャ」とはどんな連中か? アゴニィさんの様子を振り返ってみましょう。
・「ソウカイヤ」という組織を作り、ヤクザをつぶしながら暴力で儲け、犯罪食物連鎖の上位にいる。
・強い力と特殊能力を持ち、人では到底敵わない存在である。
・他者を殺すことを躊躇しない、楽しみを覚える。
・ニンジャ同士の戦いは常識を超えた苛烈なものになる。
・ニンジャスレイヤーもまた、恐ろしいニンジャである。
残念ながらアゴニィさんはこのエピソードで死んでしまいますが、ニンジャスレイヤーさんはここから長い長いニンジャ殺しの旅を始めます。
ニンジャスレイヤーさんとソウカイヤとの戦いは、一方で、ニンジャスレイヤーさんが自身の内にある恐ろしいものに向き合い、制し、あるいは受け入れるための戦いにもなっていきます。
さらには、アゴニィさん以上に強烈な敵ニンジャたちや、ニンジャの激しい戦いに巻き込まれる一般の人たちのドラマ、ゲンドーソー=センセイやナンシーさんといった協力者たちとの出会いが物語を豊かに彩ります。
「ニンジャスレイヤー」未読のかたでここまで記事を読んでくれたかたにはぜひ、ニンジャスレイヤーさんの戦いを追いかけて欲しいものです。
《終》
(※この記事はニンジャスレイヤー公式企画「ニンジャ・プレゼンコン」に参加するために書いたものです)