宮城のかっぱ神社巡り
「かっぱ」と聞くと、柳田國男の『遠野物語』を思い浮かべる方が多いかと思う。実際、『遠野物語』の故郷・岩手県遠野市には、「かっぱ淵」や「かっぱ狛犬」など、かっぱに由来する伝説や場所が数多く残されている。
今回は、かっぱで著名な遠野ではなく、岩手県のお隣、宮城県にあるかっぱにゆかりのある神社を2社紹介したい。
磯良神社(おかっぱさま)
宮城県加美郡色麻町にある磯良神社(いそらじんじゃ)は、全国でもただ一つ、木彫りのかっぱをご神体とする神社である。
神社は「おかっぱさま」という名前で呼ばれ、水難よけ・縁結び・懐妊・安産・足腰の病にご神徳があるといわれている。
創建の歴史は古く、延暦22(803)年に坂上田村麻呂が常陸国鹿島郡から磯良明神を勧請して祀ったのがはじまりと伝わる。これについては後述する。
鳥居横に駐車場がある(上の写真で車が止まっているあたり)。
鳥居をくぐり参道へ。参道脇にはいろいろな石碑がある。
境内はそれほど広くないので参拝しやすい。
拝殿前には台車に載せられた愛くるしい表情のかっぱ像があった。
また、拝殿にはかっぱの絵馬が奉納されており、絵馬には楽しそうに宴会をしているかっぱが描かれている。
拝殿横には境内社が並ぶ。
かっぱとゆかりの深い磯良神社には、かっぱ伝説が伝わっている。
かっぱ可哀そう・・・
他にも、坂上田村麻呂の蝦夷征伐の際、先導をつとめた河童東右衛門(かっぱとうえもん)という男が町内の一の関に永住し、子孫は「川童」姓を名乗り、磯良神社の神職になったという。東右衛門の家には、神社の後ろを流れる河童川からかっぱが挨拶に来たと伝わる。
そうした伝説が残る神社の境内には、「伝河童棲息之地」という石碑が建っている。
特筆すべきは境内のあちこちにひしめくかっぱの石像だ。
オオサンショウウオと一緒だったり、相撲をとっていたりとなかなかユニークなかっぱがたくさんいる。
この地域では、かっぱ様にあげないうちはキュウリを食べてはいけないといって、初物キュウリは必ず川に流す風習が現在も続けられているという。
余談だが、磯良神社のある色麻町のゆるキャラも「活平くん」というかっぱ伝説にちなんだゆるキャラである。
また、町内には「かっぱの湯」や「かっぱ茶屋」など、かっぱにちなんだ施設が多数あり、町を挙げてかっぱを推しているのが伝わってくる。
【住所】宮城県加美郡色麻町大字一ノ関字東苗代28
【祭神】息長帯比売命、底筒男命、中筒男命、表筒男命
【御朱印】なし
【駐車場】あり
磯良神社(カッパ明神)
色麻町から車で北上すること約40分、大崎市岩出山にも通称「カッパ明神」と呼ばれるかっぱを祀る神社がある。
案内板によると、この磯良神社は、虎吉というかっぱを祀ったものと伝わっているという。
以下、案内板の説明文。
うーん、突っ込みどころ満載の案内板。藤原秀郷と奥州藤原氏がごちゃごちゃになっている。伝説なので仕方ないか。
ともあれ、藤原秀郷か奥州藤原三代の誰かに仕えたカッパの虎吉が、正体がばれて紆余曲折を経て、終の棲家にしたのがこの場所であるという。
神社は、田んぼの先にある池のほとりに佇む。
神社の前まで車で行けそうだったが、鳥居があったので、鳥居の前に車を停める。鳥居前には、昔の街道の入口を示す道しるべがあった。
鳥居の先を進むと、すぐに赤い橋とお社が見えてくる。
周囲は田んぼと山なので、クマが出てこないか緊張しながら進む。社の近くには、ステキな標語が書かれた標柱がある。
橋の手前には庚申塔がいくつかあるが、それほど古いものはない。
こちらが虎吉を祀っているお社。
狛犬の代わりにカッパがいた。かわいい。
虎吉が永住の地に定めた池。
思ったより広く、現在田んぼになっているところもかつては池の一部だったのだろうかと、想像が膨らむ。
この日参拝したのは早朝5時。周囲は静寂に包まれており、気持ちよく参拝できた。
残念ながら虎吉に会うことはできなかった。次は初もぎのきゅうりを持ってこよう。
【所在地】宮城県大崎市岩出山赤新田日向
【駐車場】なし
【御朱印】なし
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