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「企業会計化家計簿」お客様目線で取り組む経理業務と複式簿記家計簿のススメ

 「常にお客様目線で仕事をすること」を心がけている。これまでに「営業」の経験はない。ずっと「経理」一筋であった僕だが、常にお客様目線で仕事を行ってきた。経理にとってのお客様とは、株主・社長・経営陣・他部門である。経理はいわゆる「サービス部門」である。単独では売上をあげることはできない。しかし、求められているニーズを理解した上で、数字によって分析を行い、資料という媒体で、(経営)判断に資する情報を提供すること。異常値を見い出し、危険があれば、アラームを出し報告する。いずれもお客様目線を意識することによって、有効に機能する経理の重要なミッションであると考えている。単なる数字の羅列ではなく、その数字に至った背景を分析し、その数字の裏にあるストーリーを紐解いていく。ただの集計だけならシステムに任せておけばいい時代。数字という情報に、分析という付加価値を乗せる仕事、それが今の時代の「経理」なのであると僕は考える。「お客様の視点」で経理の仕事を考えることができれば、その先には、間違いなく「大きな成長」が待っている。

 財務諸表を作成できるようになること。経理としての業務を行う上でのスタートラインである。貸借対照表(Balance Sheet = B/S)、損益計算書(Profit and Loss Statement = P/L)がどのようなプロセスでできあがるかを理解しておくことは、経理業務の基礎になる。複式簿記(Double-entry bookkeeping)により、借方(Debit = DR)と貸方(Credit = CR)にて仕訳を行うことができなければ、経理としてはニセモノである。企業価値の指標となる財務諸表がどのような手法によってできあがっているものなのかを、理解しておくこと。まずはそこからであると考える。いかなる素晴らしい応用問題の解答であっても、複式簿記の基礎基本を理解していなければ、本質的な理解には至らない。経理に限らず、財務諸表を扱うことのあるすべての職種で、この基本知識は身に着けておくべき教養であると僕は考える。

複式簿記(Double-entry bookkeeping)

 複式簿記における財務諸表作成の流れは以下のようなプロセスとなる。

①「仕訳帳(Journal Entry)」
②「総勘定元帳(General Ledger)」
③「合計残高試算表(Trial Balance)」
④「損益吸収前試算表」
⑤「損益計算書」
⑥「損益吸収後試算表」
⑦「貸借対照表」

 もっとも、今は伝票会計で、仕訳伝票をシステムへ入力すれば、仕訳帳・総勘定元帳・合計残高試算表・損益計算書・貸借対照表が自動的に作成されるようになっている。但し、上述のような「転記」の流れと仕組を理解しておくことが、財務諸表を読むための基礎教養になる。会計従事者であれば、一回は自分自身の手でハンド作成してみることを強くオススメする。

 複式簿記の仕組を理解した上で、オリジナル作成したのが、次に紹介する「企業会計化家計簿」である。

Excel版「企業会計化家計簿」

 僕がこのような形で「企業会計化家計簿」を作成し始めたのが2012年度から。目的は家計の見える化。巷では、老後資金2,000万円問題や、公的年金の受給開始年齢の引き上げ等のニュースや、不安をあおるような情報が行き交っていた。ただ、なぜ不安になるのか?という問題に目を向けたときに、「見えない」こと、「判らない」ことに不安の原因があるのではないかという結論に達した。そこで、経理という仕事柄から、企業会計を家計簿に応用することを思い立った。家計簿を複式簿記で管理しようという訳だ。
 幸い、業務上身につけた簿記の知識が、物凄く役に立った。ただ、企業会計化家計簿には、そこまで高度な簿記知識は要求されない。日商簿記2級から3級程度の知識と、業務上でよく使うExcel関数のスキルがあれば、そんなに難しいものではない。簿記についても、Excelについても、今後ますますニーズが高まるであろう知識・スキルであると見込まれるため、身につけておいて損はない。自信のない方は、このExcel版企業会計化家計簿のデータをテンプレートとして、知識とスキルの習得に活用していただければ幸いである。

可視化の鍵を握るのは「バランスシート」

 企業会計化家計簿作成の最大のメリットは、自分の貸借対照表=バランスシートができあがること、にあると僕は考えている。小難しい名前であるが、要するに「財布の中身」である。左側が「資産」で、右側が「負債」と「純資産」。資産は、現預金や現金同等物、在庫や貸付金など、お金がカタチを変えたもの。負債はカード支払いによる未払金や借入金。純資産は「資産」から「負債」を差し引いた、剰余金。企業会計化家計簿であれば、これくらいの定義で十分であると考える。

 鍵を握るのはバランスシートである。これができあがると自分の現在の財政状況が一目で判るようになる。「うわ~、リアル……(笑)」という感想が持てれば、企業会計化家計簿としては成功である。あとは、この企業会計化家計簿におけるバランスシートを徹底的に「磨き上げていく」ことだけに専念すればいい。減価償却や未払金、剰余金の概念を、この企業会計化家計簿によって理解できれば、あなたの財務知識や金融知識は飛躍的に向上するに違いない。

企業会計化家計簿の活用

 自分のバランスシートが理解できるようになったら、注目したいのは、現預金から未払金を差し引いた「余剰資金」と、資産から負債を指し引いた「剰余金」。余剰資金が判ることで、そのお金を投資や趣味に回すことができる。また、剰余金が把握できるようになるので、自分の純資産額が一目で判るようになる。言い換えれば、「今自分がどのくらいの資産を構築できているのか」がリアルタイムで把握できるようになる。これがあなたの「御守り」となる理由だ。

 次に、自分の損益計算書を確認する。企業会計化家計簿では、バランスシートが連動しているため、費用は現金主義ではなく、発生主義で計上することになる。前年度対比や月次推移を確認し、正味でいくらの損益になったのかを目で見て確認することができる。家計簿における損益計算書は、実際の企業のものとはメッシュが異なると考えている。
しかし、その本質は全く同じである。実際の「お金の流れⒶ(貸借対照表の残高の増減)」と「損益計算書の収支Ⓑ(計算上の利益)」とは、「別のものであること」つまりⒶ≠Ⓑ(ⒶとⒷとは一致しない)であるということだ。お金のブロックを解放することが真の目的なので、これでもか!?というくらい「くどい」説明を敢えて行っている。どうかご容赦いただきたい。

 僕の場合、以下の分類で、実際に企業会計化家計簿を作成している。

①「管理可能経常費」
②「管理可能非経常費」
③「管理不能経常費」
④「贈与・臨時損失等」

 企業とは違い、上の4項目のどれかに費用の科目を分類することで、利益を計算している。その費用が管理可能なのか、管理不能なのか。次に経常的に発生するのか、経常的には発生しないのか。このような視点で自分の経費を管理すれば、見直すべき項目が浮かび上がってくる。また、日ごろから「仕訳」を意識することにより、不必要な支出が自然と削減できるようになっていく。これはもう、活用しない手はない。

まずは「継続すること」から

 基本は、一日の終わりに、その日の「仕訳」を入力すること。その積み重ねが、自分の財務諸表を作り上げることになる。日々の仕訳を継続的に記録していくことで、はじめて効果が得られる。目的は前述の通り。企業会計化家計簿に限ったことではないかもしれないが、まずは「続けてみる」ことが大事。継続なくして効果の収穫はあり得ない。個の時代が到来した現代において、「自分の財政状態の把握の仕方」は必要不可欠な「知識」と「スキル」になる。「企業会計化家計簿」、あなたもぜひ始めてみよう。

B/S推移表(2021年度)
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純資産推移棒グラフ(2019年度)
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収益推移棒グラフ(2019年度)
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費用推移棒グラフ(2019年度)
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収支推移グラフ(2019年度)

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 サークル内では企業会計化家計簿の実績解説などを予定しています。


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