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議決権のない株式は存在する!?

イークラウドではスタートアップ企業の資金調達のサポートにあたり、資金調達の際に必要となる株主総会やその後の登記の手続きのサポートも積極的に行っています。

いままで多くの企業をサポートしてきた中で、多くの方が誤解されている議決権のない株式、通称「無議決権株式」について解説します。


最初に・・


「無議決権株式」という言葉は日本の会社法上では存在しません!!


無議決権株式や完全無議決権株式などと多くのコンテンツ上で解説されているものが散見されますが、説明されている株式は議決権を制限した、議決権制限株式と呼ばれる種類株式を指しています。

議決権“制限”株式なので、決議を要しない(制限される)決議事項、決議が必要な(制限されない)決議事項が存在しており、完全に議決権を持たない株式ではありません。

つまり「株主総会」での決議に議決権がない場合でも、「種類株主総会」で決議を行わないと効力が発生しない決議事項が存在するため、結論的には完全に議決権のない株式は存在しないのです。(う~~ん書いていて自分でもややこしい。。)

誤解を生じる要因は無議決権株式という言葉かもしれません。

種類株主総会決議事項で決議を制限できる事項・制限できない事項


前述の種類株式である「議決権制限株式」ですが、定款により、種類株主総会の決議事項で議決権行使が制限できる事項を定めることができます。
一方、会社法等で議決権行使を制限できない事項(=種類株主総会決議を実施しないと効力が発生させられない事項)も定められています。

<制限できる主な決議事項>

<制限できない主な決議事項>(種類株主総会での決議を要する事項)

制限できない決議事項として、
・発行可能株式総数の増加
・発行可能種類株式総数の増加
があり、新たに種類株式を用いて資金調達をする際には種類株主総会決議が必要となるケースが想定されます。
そのため資金調達を行いながら事業成長に挑むスタートアップ企業においては、株主総会とは別に種類株主総会での決議が必要となることが考えられます。

「議決権制限株式」で資金調達する際の留意点


繰り返しとなりますが、議決権の全くない株式は存在しません。
議決権制限株式の活用事例には事業継承などの際に用いられるケースが多く、資金調達を繰り返すスタートアップ企業での活用事例はあまり見たことはありません。

とはいえ、定款に定めることにより一定の決議事項を制限できるため、議決権制限株式を用いた種類株式での資金調達を望むケースもあるかとは思います。

種類株主総会において、決議事項を成立させる要件として、出席者の過半数の賛成が必要な決議事項、3分の2以上の賛成が必要な決議事項が存在します。(細かくは本記事では割愛します)

そのため、種類株主総会をスムーズに運営するために、議決権制限株式の種類株式を外部株主だけで構成するのではなく、

経営者等の株式を同種の種類株式に転換し、種類株式の3分の2以上を保有しておくこと(※)
発行する種類株式について、一定の条件で会社側の決定により普通株式に転換できるように取得条項を設定しておくこと
などが考えられます。
※株式の転換時には税務リスクが伴う可能性があるのでご留意ください。

イークラウドでは株式投資型クラウドファンディングにおいて、種類株式で募集するスキームも提案しており、細かい内容は代表波多江のnoteで解説しております。

株式投資型クラウドファンディングにおける議決権制限株式による募集実例

当社でご支援したアグリゲート社において、議決権制限株式での募集を実施しました。

同社の募集を議決権制限株式とした背景としては、同社は株主であるオイシックス・ラ・大地株式会社の関連会社(持株比率20%超)となっており、今後事業の相互連携の加速を進める過程で連結子会社化(持株比率50%超)をする可能性があり、募集により関連会社ではなくなることを避けるため種類株式での募集となりました。

ただし、同社は株主とも合意の上、IPOを志向している企業となり、株主の権利を制限したいことが主目的ではないため、個人株主からの意見を募る専用フォームを設けるなど真摯に株主と向きあう姿勢を表明しています。

さらに詳しく聞きたいという方はご連絡ください。

最後に

今回はまれにご相談をいただく、無議決権株式の本来の内容を簡単に解説しました。
企業運営を考慮すると、株主総会決議の運営を簡素化することで、一定のメリットがあることは理解できますが、個人的には社長の意思決定、会社の方向性などをしっかりと株主にも理解いただきながら事業を進めていく意志を持たれた方が、外部株主から資金調達することを志してほしいと考えています。

今後もスタートアップの運営に役立つ気づきを発信していきたいと思いますので、よければtwitter(@kicrowdfunding ) かnoteをフォローいただけると嬉しいです。


イークラウドでは個人の方を応援団としてスタートアップ企業に繋ぐ株式投資型クラウドファンディングで資金調達のサポートをしています。
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